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プロローグ

むかしむかし、あるところに………それぞれ春夏秋冬を1つずつ司り、自分の季節の間塔に入ることでその季節が訪れるという、不思議な国がありました。

ですがある年の冬、冬担当の女王様が塔に引きこもって出てこなくなったのです。

それにより冬がエンドレス化。

いくらこの国が何かと貯蓄して食料にもそこそこの余裕があったとはいえ、このまま延々と冬が続いてはいずれ底をつくこと間違いなしです。

それを危うく思った王様は、こんなお触れを出しました。


『冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。

ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。

季節を廻らせることを妨げてはならない。』


つまり、国民にアイディアを募ることにしたのです………が、当然ですよね、冬の女王が次にっ回ってこられなくなる方法は認めない、ということは物理で無理やり連れだすことも、脅迫で連れ出すことも出来ないのです。何せ自殺されてしまっては次の冬が回ってこれなくなるのですから。

それゆえにアイディアを出せる国民は数人しか居らず、しかも出されたアイディアもよくよく検証してみると『あれ?これ冬の女王様自殺しかねなくない?』みたいなアイディアばかり。

だから、いつの間にかアイディアを出すものは消え、このままでは滅亡を待つばかり………と言った状況になってしまいました。

でもどんな時代にも頭がおかしいレベルの天才というものは居るものです。

例えば、ほら。国の中でもちょっとだけお金持ちで、ちょっとだけ地位の高いこの男。

一応は位が低いながらも貴族だけど、大してマナーも身に着けていないし体力も無ければ、頭が良いわけでもない彼ですが、1つだけ長所があるのです。

それは異性を口説いて自分の虜にしてしまうこと。つまりはナンパのテクニックです。

何を隠そう、彼はこの国でも随一にして最強のナンパ男なのでした。

口説いた女は数知れず、何十人もの女性を相手にして常勝無敗、彼に言い寄られてその魔手から逃げられるものは居らず、いつしか『常勝不敗の女好き(レディ・キラー)』と。


そしてそんな彼が、寒いのが苦手なので冬が消えるまで自分の館に引きこもっていようと画策していた時の事。

不意に、強風で飛ばされてきたのかお触れ書きの看板が飛ばされてきたのです。

しかも偶然にも彼が雪かきのため乗っていた屋根に。

「ふべぁっ!?」

まぁ、当然ながらそんなところに大きなものが飛ばされてきたら転ぶわけですが、偶然にも持っていた喋るが屋根に引っかかり、転落は阻止しました。

さてどうしましょう、屋根で雪かきをしていたところに飛んできた看板に、彼はどう思ったのでしょうか。

いくらそこには彼にとってすごくありがたい条件のお触れが書いてあるとはいえ、危うく転落させられそうになった看板をどう扱うのでしょう………


答えは1つ。イラッとしつつも無駄に冷静に看板を読む。でした。

何か感じたのでしょうか、とにかく彼は冷静に、看板を読みました。

そこに書いてあったのは、冬の女王様を塔から出して、なおかつ次の冬が来れるようにしてくれれば好きな褒美を取らせる、とのお触れ。

女好きの彼が反応しないはずがありませんでした。

だって、この条件ならば………


口説き落として、言いなりにしてしまっても構わないのですから。

つまり彼の計画はこうです。

まず冬の女王様を説得するという名目で塔に一人で入る。そしてそこで少しずつ自分を信用させ、距離を縮めていく。これは早い方が良いが急ぎ過ぎても良くは無いだろう。

最後に、冬の女王を口説き落として自分の言うこと………たとえば『私の家に来てみませんか?』などを信じさせて誘いだし、その間に入れ替わる。

実に彼らしい計画です。いや、計画というか策略です。もっと言えば謀略です。


彼自身そこまで権力が欲しいわけではないですがこの計画が成功すれば自分も晴れて王族の仲間入り、しかも王様の褒美を使って一生働かなくていい権利を手に入れさえすれば王族としてのメリットだけを享受して、デメリットのほとんどを跳ね除ける事が出来ますから。

実にいい。彼はそう考えました。

一応嫌いな訳じゃないし住み心地もいいこの国を救えて、美人な女王様を国を救う大義名分で口説けて、王族になるチャンスや安泰な暮らしも手に入る。しかもたとえ失敗しようとそれほど困らないというのですから、彼の喜びも大きいでしょう。


ただ1つ誇れるナンパのテクニックで女王を口説いて、国を救って、安泰な暮らしを手に入れる。

そんな明確な行動指針を手に入れ、彼は動き出しました。

ただ、女王様を口説くために。


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