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「それがどうして、府の外で山賊をすることになったんだい」

「それを聞いて、山賊をやめて移り住もうという腹か」

 そうだと蕪雑が首を動かす。

「さっきアンタが言っただろう。移住すりゃあ、いいってよぉ。そういうアテがあって、言ったんじゃあねぇのか」

 期待を放つ蕪雑の顔をながめつつ、烏有は杯に口をつけた。

「不思議だな」

「何がだ」

「いやいや山賊をしている、というところがだよ。この山を通る荷駄を襲って、いろいろなものを手に入れるほうが、楽だと思ったりはしないのかい」

「しねぇよ。誰かがあくせく働いて手に入れたモンを、ちょろまかして威張(いば)るなんざ、格好悪いじゃねぇか」

「クッ……」

 烏有が口元に手を当てる。クックと喉を鳴らす烏有の姿に、蕪雑はてれくさそうに頭を()いた。

「まあ、その……なんだ。できるなら、山賊から足を洗いてぇのよ。けど、どうすりゃいいのか、さっぱりわからねぇんだ。わけのわかんねぇうちに頭目になっちまったから、どっかで落ち着けるまでは、俺はあいつらの面倒を見なきゃならねぇだろう」

「はじめから、蕪雑が首魁(しゅかい)と決まっていたわけじゃないのかい」

「違ぇよ。なんかしんねぇけど、いつの間にか俺が兄貴分になってたんだ。たぶん、ここに一番、長く住んでいるからじゃねぇかな」

「いったい、どういう集まりなのか、教えてもらえるかな」

 烏有の問いに、蕪雑は首をかしげた。

「どういうって。俺はそこの府、甲柄(こうえ)の隅っこで、貧乏やってるガキどもと、日銭働きをしていたんだよ」

「それがどうして、府の外で山賊をすることになったんだい」

「商売人が山越えをするってんで、その護衛に雇われたんだよ。そんで襲われて、無我夢中で戦っていたら、雇い主は荷物を置いて逃げちまうし、気づいたら襲ってきた連中は全滅してるしで、そっからどうすりゃいいか、わかんなくなっちまった」

 興味深そうに、烏有はわずかに前にのめって、杯をかたむけた。

「しばらく待ってみたんだが、雇い主は帰ってこねぇ。どうしようかって悩んでいたら、府に引きかえそうって言った奴がいてな。そうするしかねぇかって戻ったら、そいつがいきなり、俺に縄をかけて山賊の仲間をつかまえたとか、ほざきやがった。ちょっと調べりゃあ、そうじゃねぇってわかっただろうに、俺ぁそのまま牢にぶち込まれたんだよ。アイツぁ、よっぽど報奨金が欲しかったんだろうなぁ」

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