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第79話:ゾンビと一緒

 初仕事(山賊ごっこ)から、4日。順調に旅を続けていた俺だったが、その日、事件が起きた。


 夜の間に一仕事したあと移動し、【岩練成】(ストーンクラフト)で作った洞穴の中で身を隠しつつ瞑想を行っていた時のことだ。


『う、ファア、ゲ、オグゥ』

 洞穴の隅にあおむけの姿勢でおいておいた生首ゾンビがうめき声をあげ始めたので、魔力を与えて静かにさせようと近づいた。


『いま、魔力分けてやるから、そう騒ぐなよ。』

 ここ数日で、この独り言じみた語り掛けもやや増えた。なんか、すごい寂しい人みたいな感じだから控えようとは思っているのだが、他に話し相手もなく気が付けば声をかけてしまっている。


 言葉を理解するほど知能が残っていないのか。生首ゾンビはまだブツブツ言っている。

『ン、なぇ…おナか、へッた。』

『うわぁあああああああ、しゃべったああああ!!』


 俺、絶叫。

 え、え?喋ったよね。今、喋ったよな。

 あれ、偶然?たまたまそう聞こえただけか。

 そうか。そうだよな。喋るわけないよな。だってゾンビだし。うめき声がたまたま言葉に聞こえただけだよな。


『はヤ、グ、チョー、ダい』

『あ、はい』

 あ~、これは喋ってますね。完全ですわ。

 なんだろ、ここ数日魔力を与えていたせいだろうか。それともなにか他の要因があるのか。

 原因についてグルグルと考えながら、ともかく魔力を分けてやる。


『ア、りが、トォ』

『はい、どういたしまして』

 朗報。生首ゾンビ、意外と礼儀正しい。


 いや、待て。そうじゃない。

『おい、お前。話せるのか。っていうか、いまの状況とか分かってるのか。』

 質問をぶつけてみると、考え考えするような長い間を置きながら答えが返ってきた。


『コ、とばぁ、スご、シ。じ、ジョー、キョー。ジョッきょ?』

 えーと、「言葉は少し」と言いたいのだろうか。状況は意味が通じてない感じがする。


 表情が分からないので、仮面を取ってみる。

 以前は腐ったり傷んだりして部分的にベタベタしていたが、なんだか乾いている。少し表面にツヤが出てきたような気も。

 とはいえ、所詮ゾンビで表情もへったくれもなかったので仮面を再装着。


『なにか、覚えてることとかないか。名前とか』

 気を取り直して、さらに質問する。

 前半部分はスルーされたが、後半部分には何か引っかかったのか。

 ウンウンと唸り声をあげはじめる。


『ナ、まえ…、なマ、えぇ?なぁ……、』

 そのまま、考え込むそぶりでこちらの問いかけには反応しなくなってしまう。

 仕方ないので、俺も瞑想に戻った。

 まあ、今すぐどうという話にはならないだろうと思ったからだ。


『そレ、どぉ、や、ル』

 1~2時間たったころ。唐突に、今度は生首ゾンビから質問が飛んできた。

 そのこと自体にビックリして、内容の理解が遅れてしまう。

『ソ、れ、ド、ウゃ、る』


『それって、瞑想の事か?』

 状況的にそれしか思いつかず、聞き返してみる。

『ソゥ、』

 そうらしい。


 ふむ、どうするか。と3秒考えて、まあいいだろう。と結論を出す。

 どうせ首だけで大したことなど出来ないのだ。魔力をくれてやる手間が省ければ俺も楽になる。

 十年以上前にドリさんに教わったことを思い出しながら、俺は説明を開始した。


『えーと、まずは自分の魔力に集中しろ。』

 仮面の奥の表情までは分からないが、真剣に耳を澄ましている気配が伝わってくる。

『で、その後はその魔力を少しずつ地面へと広げていくつもりで……、』


 結局、その日はかなりきっちり瞑想の仕方を教えてやることになった。

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