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番外:ドリさんの魔法講座

時系列的には、ミラと出会う前の2年間のうちのどこかです。

読まなくても、本編の理解の妨げにはなりません。

『さて、魔法を教えてほしいとのことじゃが。ロク、お前魔法のことはどの程度知っておるんじゃ。』


『えーと、呪文を唱えると、すごいことが起きる。みたいな。』

『なるほど、つまりはほとんど何も知らんのじゃな。まあ、いいわい。下手に間違えた知識を持っておるより教えやすい。』


 そう言って、ドリさんは肯いた。今日は魔法を教えてもらうことにしたのだ。


『まず初歩の初歩じゃが、魔法と一口に言っても大きく3つの種類がある。1つ目が固有魔法、2つ目が精霊魔法、そして最後に理術魔法じゃ。この中でお前が普段見ているのは固有魔法と精霊魔法じゃな。』


『みんな結構魔法を使ってるけど、理術魔法ってのはそんな珍しいのか?』

 俺が質問すると、ドリさんは慌てるなとばかりに手を振った。


『まあ、落ち着け。順番に説明してやるわい。まず、固有魔法じゃが。これは魔物の種族や個体に固有の能力のことじゃ。たとえばリヨンが羽根から様々な音色を発するのは、ハルピュイアの固有魔法【歌舞の宴(メリーリサイタル)】じゃな。

 特徴としては魔力の消費が少ないこと。呪文を必要としないこと。教わらずとも使えるが、教えても使えるものではないこと、があるの。』


『ふーん、ゴーレム(おれ)には固有魔法ってないの?』


 俺からすれば、好奇心から出た当然の質問だった。しかし、それを聞いたドリさんはアングリと口を開け、ため息をついた。


『ゴーレムにも固有魔法はある。あるが、自分の固有魔法を知らないなど、本来ありえんことじゃぞ。』


 聞けば、固有魔法とは生まれた時には習得しており、物心ついたときには自然と使えるようになっているものらしい。

 俺の発言にあきれながらも、ドリさんはゴーレムの固有魔法を教えてくれる。


 【硬化(リジット)】、全身を硬化させる攻防一体の魔法。

 他にもあるかも知れないが、さすがにすべては知らないとのこと。

 今度、試してみよう。


『さて、気を取り直して続けるが、次は精霊魔法じゃ。これは呪文などを使って精霊の力を借りるもので、お前がさっき言っておった「呪文を唱えて」うんぬんはコレのことじゃな。

 特徴としては固有魔法と比べて魔力消費が多いこと。状況の制約と使用者の属性がかなり影響することがある。どれ、ちょっとやってみせようか。』


【いと静けき緑の精霊よ。我が声に耳を傾け、若き命に格別の慈悲を。伸びゆく若木(サープリング)


 ドリさんが傍らに立っていた若木に呪文を唱えると、瞬く間に若木が成長しはじめた。

 高さ1メートルくらいだったのに、めきめきと伸びて、今や3メートル近くあるように見える。


『おー、すごい。これはやっぱり森の中で樹木精(ドリさん)が唱えてるから効きがいいのか?』

『その通りじゃ、緑の要素の少ない砂漠などではほとんど効果はないし。魔物はそれぞれ属性があるからの。それ以外を使うのは難しい。樹木精(ワシ)は緑、ハルピュイアは風、ゴーレム(おまえ)は土じゃ。』


 土か。分ってはいたが、土か。ゲームや漫画ではかなりの確率でかませ犬ポジションだな。

 ちょっとテンションのさがった俺の様子を気にするでもなくドリさんは説明をつづける。


『それで最後に理術魔法じゃが。これは一言で言えば「ヒトの魔法」じゃ。人は元々が魔力に乏しく、そのまま魔法を使うのは困難極める。それを補うために魔石などのアイテムや魔法陣、呪文などを使用して魔力の底上げを行うのが特徴じゃ。

 さらに細かく分ければ、底上げしたうえで精霊の力を借りる「理術精霊魔法」と底上げした力をそのまま行使する「純粋理術魔法」がある。』


『人に固有魔法はないのか。』

『ないな。固有魔法は魔物に共通した力じゃが、同時に魔物に限定された力でもある。人には宿らん。』


 そんなものか。納得した俺はまた別の質問を投げかけた。

『逆に、魔物が理術魔法を覚えることはできないのか。』


『自身の属性の魔法に限れば理論上は可能じゃ。しかし、その技術は人によって秘匿されておるし、精霊魔法で十分じゃから、わざわざ覚えようというもの好きもおらんというのが実際のところじゃな。』


 なるほど、森の皆が使っているのは固有魔法と精霊魔法。それで最初に理術魔法は普段見ないと言っていたのか。


 しかし、ちょっともったいない気がする。ただでさえ人間より魔力の多い魔物の身で理術魔法とやらを使えば、魔力がさらに多くなって、すごいことになりそうな気もするのだが。


 まあ、ないものねだりをしてもしょうがない。そもそも、俺は初心者なのだから基礎から教わった方がいいだろう。


『よし、ドリさん。精霊魔法について、もっと詳しく教えてくれ。』

『無論じゃ。まずは、呪文の法則性についてじゃが……』


 こんな感じにドリさんの授業は続く。


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