知らないはずの言葉
桜も散り、それぞれの学級にも皆慣れてくる頃の学校からの帰り道。いつも二人で歩くその道に、私は言いようもない違和感を覚えた。
そして
「真友梨、アタシは―あなたに、安らぎを与えられるような人間じゃないんだ。でも、ふりくらいならできるよ―どうする?」
私はこの時思案した。彼女を手に入れる方法を、彼女に受け入れてもらう方法を。
それと同時に、何故その言葉を知っているのか…その事に強く憤りを感じた。
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美しい桜が青く晴れた空に映える。花びらで桃色に染まった道を歩くのは、真新しい制服に身を包む同級生。
ふと周りの様子を窺うと……
「なぁ。お前どこのクラス?俺C」「おっ久しぶりじゃねーか内田。俺は……Cか。お前と同じだな。教室行こうぜ!」
と、廊下を駆ける音が二人分。
「あ、さくら~良かったぁ~周りに友達が誰も居なくてさぁ……どうしようか困ってたんだよ~……因みに同じクラス!」
「ふぇっ!?って美朔?おはよう。驚かせないでよ…でも、教えてくれてありがとう。探す手間が省けたよ。他の人の邪魔になるし、行こうか」
初めて見る人の間から、聞き覚えのある声の会話が聞こえてくる。
ああ、みんなクラスに友達が居ていいな…
先程自分も確認したが、何度見ても私のクラスに仲のいい友達の名はなかった。あったのは、数年前に私の物を隠していた男連中の名ばかり……
仕方がないと割り切って、教室の戸を開ける。
担任教師がいないせいか、席に座っている者は目立つ。
全体を見回してもやはり、同性は知らない顔ばかりだ。
ワックスをかけたのか、滑る床に足を取られないように焦らず足を動かす。
自分の席は、廊下側の最後列にあった。
これなら、後ろの戸から入ればよかった…そうすれば他人の机の間を通らずに席に着けたのに。
そう考えながらも、少し進めばこれからしばらくは自分が使っていくであろう机の前に辿り着いた。
肩掛けにしていた未だ教科書の入っていないスクールバッグを出席番号順に振り分けられた小さな木のロッカーに入れる。
だが、それ程大きくないバッグの端がかなりはみ出てしまっていた。
他のロッカーを見てみるが、みな似たようなものだった。