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逢魔ヶ時のオレンジ  作者: 木葉
岬朱里
7/26

strawberry candy

2-2


朱里はうかれていた。

昨日の放課後は珍しく全員そろったから、お祭りにいく約束をしたのだ。


「なんだか朱里ちゃん楽しそうね。もうすぐ夏休みだから?」


聞いてきたのは楓。今ここに集まっているのは、朱里と楓、心太の3人だけ。ちなみに心太は寝ている。昨日は起きてたから今日は寝ているのか、さすが心太。


「夏休みっていっても前半は補習だらけじゃん、違うよーほら、お祭り!」

「あぁお祭り。私りんご飴食べたい」

「朱里はいちご飴派だ」

「私も実はりんご飴よりぶどう飴が好き。 あ、朱里ちゃんこれ食べる?」


どうでもいい話をしつつ、楓の差し出した飴を受けとる。いちご味だった。


「確かにいちご飴だ」

「でしょ?ほら、私はぶどう飴」

「でも違ーう」

「あっちの飴はお祭りの時にね」


お祭り。朱里は楓の顔を見た。楓は、なーに?と首をかしげる。

楓子。

8割方にこにこしている。ハルの幼馴染みで、お祭りが嫌いらしい。怒らないし、なんというか、女子!って感じの雰囲気をしてて。

なぜだか、とてもミステリアスに感じる。


「楓ってさぁ…」

「なに?」

「童顔だよね」


笑顔で距離を詰めてくる楓は、とても怖かった。


「楓は怒ると手が出るんだ…覚えとこーっ…」

「ごめん、つい」


でも表情も声のトーンも変わらないのが更に怖かった。怒らないし、は撤回しよう。


「童顔って言われるの嫌なんだ?」

「嫌だよ、泥沼を泳げって言われるくらいには嫌だよ」

「すごく嫌じゃん」

「わかってもらえた?」

「めっちゃ嫌だってわかった」


わかってもらえたならよかった、とうなずく楓。その後ろのドアが開いて、悠希と莉音が入ってきた。


「あ、今日も結構居るね、あとハルだけ?」

「僕は覗いただけですぐ部活行くけど。ハルは来るのか?」


悠希にきかれるけど、朱里は首を捻った。


「うーん、わかんない。気が付いたら居なかったから1人できた」

「心太起きなかったら3人…やっぱり、あんまり揃わないか」


ハルはなんとなく来る気がするけど、それまでは女子3人になる(寝ている心太はカウントしない)。

なかなか珍しいかもしれない。


「じゃ、僕部活行く」

「本当覗いただけだね、いってらっしゃい」

「あ、これあげるよ悠くん、りんご飴」

「これはりんご飴じゃない、りんご味の飴だ」


悠希の言いたいことはよくわかる。それはりんごの飴であって、りんご飴じゃない。


「莉音ちゃんはなに飴が好き?」

「ん~桃かメロンかな」

「そんなん屋台にないだろ」

「そういう飴の話じゃないでしょー!?」


楓は莉音に、桃味の飴を渡して、寝ている心太の前にオレンジの飴を置く。


「じゃ、また」

「部活がんばってー」

「ん」


そういって悠希が部活に向かい、女子3人になったところで、もちろんする話は決まってくる。


「莉音さ、悠希のどこが好きなの?」

「な、ななな、なんなの唐突に!」

「莉音ちゃん動揺しすぎだよー」


一昨日抱いた疑問を質問してみる。莉音は面白いほどに狼狽えていた。さすが莉音。


「朱里はぶっちゃけハルの顔がとても好み」

「ぶっちゃけたね」

「莉音と楓は?」


莉音は悠希のことが好きだということは知ってるけど、楓の好きな人は知らない。楓をじーっと見つめると、莉音もそれに気がついたらしい。


「そうだよ、楓の好きな人ってだれ?」

「ん?悠くんでも晴樹でもないから安心して」


にこにこして言う楓。確かに安心はする。だって、ハルと楓は幼馴染みだからか、距離近いし。2人とも大体の人をちゃん付けくん付けで呼ぶのに、お互いは呼び捨てだし。


「でも、悠希は楓が好きだと思う」


真剣な顔で莉音が言った。

うーん、それは朱里も、1年生のときからなんとなく思っていたせいで、フォローできない。


「で、楓好きな人はだれなの?」

「ハルも悠希も違うなら楓のクラスの人?…いや、心太?」


自分でそういって、なんとなくしっくりきた。それが1番いい気がする。朱里はハルが好き、莉音は悠希が好き、楓は心太が好き…ってなると!


「完璧じゃん!」

「何が完璧なのー?!違うよ違うよ!空くんじゃないよー!」


予想外なことに、楓が焦っている。これはビンゴかもしれない。…よね?


「楓、顔赤いよ」

「ええっ」


莉音の言葉で、楓は顔を手で覆って机に突っ伏した。 莉音は納得したかのようにうなずいていた。さっきまで自分も顔を真っ赤にしていたのに、今はにやりとしている。


「そっかぁ心太かー おーい心太ー」

「違う!なんで!なんでいま起こそうとするの!」


心太はちょっとだけ身動ぎをするも、やっぱり起きなかった。


「私のことはいいから、莉音ちゃんちょっと告白してきなよー…」

「はっ、なに急に!?しないけど!」

「なら朱里ちゃん」

「やっぱりタイミングはお祭りだと思うんだよね~」


朱里が言うと、2人とも固まった。びっくりしたかな、朱里は近々ハルに言うつもりではあった。

確かに、今のこの関係は好き。でも、今のままじゃ、 ハルが悲しい顔をする理由を突き止められない気がするから。


「お祭りと言わず、今でもいいと思うよ」


楓はにっこりと笑って言う。


「お祭りの日が絶対来るとは限らないもん」


いつも通りのトーン言って、いつも通りにっこりと笑っている。その笑顔に違和感を覚えるのは、朱里だけ?

どこか影があるように思えてしまう。それは朱里が、ハルと楓の過去に何かあると感じているからだろうか。


「そうだね、ハルは朱里が好きだし。お祭りより前でもいいんじゃない?」

「え、なにそれどこ情報!?」


急激にテンションが上がる。これで勘だとか言われたら、朱里は莉音に頭突きすると決めた。


「それは言えないけど。ね、楓」

「うん、間違いないね。まぁ朱里ちゃんが言わなくても晴樹が言うでしょ」

「それ信憑性ある?!うわーにやけるー」

「朱里のそういうとこ好きだわ、純粋に喜ぶとこ」


莉音はあきれたような顔で、楓はほほえましそうにあたしをみる。

にやける頬を押さえて、楓にもらった飴を口に入れて伸びをする。ハルはいまどこでなにをしてるのかな。そう考えていると、あまずっぱいいちご味が広がった。

もう少ししたら、伝えよう。ハルが好きだよって。


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