【野次馬の正しいマナー】01
キーワード【ファンタジー、魔法、コメディ、恋愛要素は未定、王侯貴族、学園もの】
噂好きのルーナは、噂で友達を助けたり逃げたりと気楽に学園で過ごしていたけど。
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【野次馬】
1 自分に関係のないことに、興味本位で騒ぎ立て、見物すること。
また、人のしりについて騒ぎ回ること。また、その人々。
2 父馬。老いた牡馬。また、気性の強い馬。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 参照;goo辞書
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1)アンテナはいつも張り巡らせろ
2)人より2、3歩後ろに控えよう。
3)些細な会話、雰囲気を見逃すな
4)1人で行動する時は気配は消していけ
5)グループは複数持て
6)真の友人は吟味せよ
7)話した内容は全て広まると思え。
それが私、ルーナの信条だ。
特にこのロイヤルウエスト学園で平穏無事楽しく過ごすにはね。
人生暇は天敵だわ、それにこんな楽しい学園で面白い事を無視する方が損、そんなのが大好きな私はまさしく野次馬。
だからって、人に迷惑はかけちゃいけないと思うし関係ない人は巻き込まないわ、参加するのは大歓迎だけど。
王侯貴族から平民までお金があれば入れる開かれた学園、それがロイヤルウエスト学園だ、そうお金があればね。お金が!特例もちゃんとあるけどね。
中身は、王侯貴族は大体次男坊とか分家のちょっと頭が足りない人達が多く来ているし、平民はガチで頭が良くて特待生入り、後は金持ちが結婚相手を探しに来る社交場と言った所か。もちろんちゃんと頭が無ければ、お金を払って補講を受けて免除か退学の2択のみだ。
とても分かりやすい仕組みだ。その仕組みが分かっていない生徒が大半なのが驚きだが。
「いや、普通気付かないって」
そう言ったのは由緒正しい伯爵家のご令嬢、ミーナちゃんエメラルドの瞳に、フワフワ金髪をお洒落に纏めて流行のアクセサリーを適度に着けてる可愛い私のお友達だ。
ちなみにココは、ピアノの自習室。つまり防音が万全な個室なのだ。もちろん悪さ出来ないように、教員室にある個室の数だけ用意された共通鍵を借りないと使えないし(個室の鍵穴は共通)、装飾が施された柱に壁は全面硝子張りで全ての個室が見えるようになっている、硝子にも模様が入っているが視界の邪魔にならない程度、そう丸見え状態。
私の手は忙しなく鍵盤の上を踊りながらも小さくため息を着いた。
「そうかなー。だいたい、ガエレアの家はブルフエス商家は、今商品が売れに売れてるんだからお金はいっぱいあるじゃない?例え0点叩き出したって親が金払うのは見え見えじゃん?あそこの成金家族見てれば分かると思うだけどなー」
ブツクサ良いながら弾いていたら音を外してしまった、すかさずミーナちゃんが扇子で私の頭をはたいた。
「テンポ早くなってる。そもそも、ガエレアがブルフエス商家って事自体周りに知られてないでしょ?元々ブルフエス商家は貴族の分家が起こしたはずよ。あいつ平民じゃない。私、貴女から聞くまで知らなかったわ。」
「マジで?結構言ってたよ自分で。ブルフエス商家は悪どい方法でどこぞの成金が金で買取ったって言うのは街で聞いてたしね。」
あ、因みに今話題になってるのは我が学年の問題児の1人ガエレアという男子生徒で、ミーナちゃんのクラスメイトなんですよ。
ミーナちゃんを狙っているんだけどことごとく粉砕!!玉砕!!でも諦めないウザい男!!これでイケメン、頭が良いとかだったら、少女小説みたいで良いんだけど現実は、お察しの通りブサメンアホ!乱暴者!嫌な奴!てなわけなんですよ。
私は別のクラスなんで被害がないんだけどね。
まぁーそいつの今回のテストが酷かったのに退学にならなかったので周りの生徒の不満が彼方此方でぷすぷすと煙が起き始めているのだ。で、ミーナちゃんも退学になって鬱陶しいのから解放されると思ったのに、外れたので私のピアノの指導という名目で拉致の事情聴取中な感じになっている。
私が呼び出される理由?それは私もよく分からないだけど、フラフラ構内を散策すると色々聞こえちゃうんだよね〜、で野次馬根性というかちょっと探っちゃう癖もあって色々知っているのだ。で、頭のいいミーナちゃんとちょっとあって、色々知っている事にも気付かれてから情報屋って言われて、ちょいちょい話を聞かれている。ただの野次馬なだけなんだけどなー
で、上の会話に戻るのだ。
「なるほどね。って、じゃー私の地獄はまだ終わらないって事?!」
ミーナちゃんがおもいっきし扇子で私の頭を叩いた。マジで痛いですけど。八つ当たりまじ勘弁っす。見た目に反して中身は腹黒いお姫様なんだから、それを含めて好きだけど、友達的な意味でね。因みに普段はめっちゃ猫被ってて、周りの取り巻き達が彼女の事を守っている。ガチで!
私は密かにカリスマって彼女のことを呼んでいる。だって上級生から下級生にも人気なんだよ。
そんな彼女と2人きりのなれるのは、私が無害認定され、しかも面倒見が良いミーナちゃんがなんか上手くやっている。うん。私がどういう評価されてるかはご想像にお任せって感じだ。中身知ってる私としては笑いそうになるけどね!
「ガーディアン達がいるじゃん。」
ぷーっと頬を膨らませながらもお手ては止めない。何故ならこの部屋の仕組みが関係しているのだけど。
「居るけど!!私だって1人になりたい時もあるのよ!!」
「そうだねー四六時中猫被るの大変だもんねー」
「そうそうって、貴女に気付かれなければ我慢出来てたのよ!それにあれも素よ!」
「あはははは、一回ガス抜き出来ちゃうと。また抜きたくなるもんね〜」
ちょうど曲も終わって鍵盤から手を外せば途端に外の音が入り混んで来る。そう、この部屋はピアノのを弾いていないと防音にならないのだ。変な事させないようにね。
チラリと外を見れば、ちょうど貴族の青年が話しながら入ってきた。ミーナちゃんに目配せすれば、はっとなってお淑やかな顔になった。
「ミーナちゃん、やっぱりお父様に言った方が良いと思うの!何かあってからだと遅いわ!」
力強く、ちょっと子供っぽく言えば、入ってきた貴族の男子が興味を示した。なんで分かるかって?ピアノのと硝子に反射して薄っすらと見えるからだよ!
ミーナちゃんは困ったように頬に手をあてながら緩く首を振った。
「はぁ、ダメよ。大事になってしまうわ。それに学園内の事は学園内で解決しなさいと言われてるでしょ?」
「そうだけど!先生方には頼めないわよ!立場も弱いし!お金で解決されちゃう!だって相手はブルフエス商家を乗っ取った家なんだよ!息子の不始末なんて揉み消しの圧力だよ!」
身振りを入れて言えば、ミーナちゃんが愕然とした顔で、扇子を落とした。男子生徒は斜め向かいの個室に入ったのが見える。しかも扉が少し空いてるうえに、ピアノのを引く様子が無い。よしよしと心の中で言えば、ミーナちゃんは戸惑った声色で言った。
「ブルフエス商家?あそこは元とはいえ貴族よ?彼は貴族じゃないわ。平民の家系よ?」
「ミーナちゃんは市井に出ないからご存知無いのよ。悪どい手口でブルフエス商家は買われちゃったって有名なんだよ?!」
「そんな!!どうしよう!!!私とっても怖いわ。今は周りの皆さんが助けていただいてるけど!」
「とりあえず、暗くなる前には帰りましょう!暗い場所は危ないっていうし!」
「そ、そうね。」
そう言って私はミーナちゃんの手を取って立ち上がり部屋から出た。
後ろは振り返らず、部屋の鍵を握って。
「あ、でもピアノの練習は私の家でするわよ!また先生にネチネチ言われたくないんでしょ?」
「うぐっ・・・」
立ち止まった私にミーナちゃんはため息をついて、今度は私の腕を引っ張っていった。
「すぐ集中力が無くなるのが行けませんわ。ちゃんと楽譜通りに、テンポを守らないと!」
「だってー曲長いだも〜ん。」
そう言って私達はピアノの練習室から出て行った。鍵を教員室に返し、ミーナちゃんの馬車に乗るとやっと一息ついた。
「これで良かったかしら?」
唐突にミーナちゃんが言えば、私はうなづいて言った。
「えぇ。バッチリよ。そうね、2週間くらいには決着がつくんじゃないかしら?」
ダメだったら別の手を考えればいいし、とは心の中で呟いておく。
私達が去ったピアノの練習室の事を思い浮かべながら微笑んだ。
「本当、よくあのピアノの練習室にムコダイン公爵が来るって分かったわね。」
私が顔を見なかったのは誰が来るか分かっていたからだし、顔を覚えられたくはなかったというのもある。
それに何故あの場所に来るか知っているかというと。
「ん?今日使うって言う話をきいたからだよ?」
「だから何処でよ!!彼の方は、女子生徒に人気なのよ?!常に周りに女子生徒が囲ってるほど人気なのよ!正義感溢れる、爽やかな公爵家の次男!次の編入試験であのロイヤルイーストに編入の可能性があるほど成績優秀なのよ?お婿さん候補No,1!それに一緒にいたアストン伯爵家の方も!!あのお二人って友人だったの?!」
「おぉ!!よく気づいたね」
そうなのだ、あの二人は不正が大っ嫌いな正義感あふれる御仁。アストン伯爵は生徒指導委員に入っているし、ムコダイン公爵のお父様は市の警備保全を管轄する役所に今所属しているのだ。
「ルーナ知ってたの?!」
ガッツリ両肩を握りしめられながら笑顔でうなづいた。
「うん」
「だから・・・って口を割らないわよね」
「これは、別料金になりまーす。」
そう言って指でお金マークをつければ、ミーナちゃんは諦めた。
情報ゲットする場所はそうそうに教えられないよ、だって女子生徒が殺到しちゃうじゃない?人に聞かれない静かな場所で話してるわけだしね。
あ、因みにこの情報も、もちろんタダじゃ上げませんよ。ミーナちゃんの馬車に乗せてもらって、貴族専用のカフェで奢ってもらい、ピアノのスパルタ指導を受けて帰宅した。これが私の情報量の報酬。ミーナちゃんはこんな安上がりでいいの?面倒だけどって毎回言ってくるけど、お金や物だけじゃ腹は膨れないのよ。それに物は痕跡が残るけど食べものは胃の中ってね。しかも優秀な家庭教師のもとで習ってるミーナちゃんに教えてもらえば、次のピアノの小テストもバッチり!
意気揚々と帰れば、可愛い姪っ子と甥っ子がお出迎えだ。
「「ルー!!」」
「ただいま〜!私の天使達!!」
飛びかかって来る二人をキャッチしてキャーキャー騒いでると、姉のお怒りの声が。
「うるさい!!!毎日毎日!同じ事言わせないの!」
「「「はーい」」」
エントランスは訪問者が来たのが分かるようにめっちゃ響きやすくなっている。分かってはいるんだけどね、最近苛立ってる姉は早々に戻って行くのを確認すると、固まってた私達だったがそそくさと移動した誰かが笑うと伝染していく。
「ママね。パパにまだ外出めーなの」
「パパね!まだプンプンなの」
両腕に抱えた甥っ子達が現状報告してくれる。どうやらまだ外出禁止令が解けないらしい姉はストレスが溜まっているようだ。まぁ、常に人に囲われてチヤホヤして貰わないと落ち着かない姉にとっては今の状況はかなり苦痛だ。
まぁ、姉は自分がとてつもなくモテることと、人よりちょっと病弱な体を理解していないのが原因なんだけどね。
お買い物の最中に倒れるわ、男達が我先にと介抱しようと家に連れ込もうとするわとなればねー。姉にぞっこんの旦那さんはお怒りになるわー。
「姉はもうちょっと自分の体力を理解しないとだめよねー」
まー、旦那さんの言うことを守っているのは感心だ。流石私が見込んだ男だちゃんと手綱を握ってくれてる。姉の旦那さんは、実は私が見つけて来て家族総出で、不自然にならない出会いの場を作り恋愛結婚させたのだが、その話は別の機会にしとく。
ちょっと大変だったが努力は報われたわーと両腕に抱きしめる天使に頬ずりする。
「ばあばね〜今日は夕食いらないって」
「あら、何処かのパーティ?」
「ママがお外出れないからだって!ばあば、キラキラいっぱいつけてた」
甥っ子達の発言を頭の中で噛み砕き、我が家の予定を思い出して理解した。
「あー姉が出るはずだった。王家主催の舞踏会か。あーなるほどなるほどー」
そう言えば王族で姉狙いの男が居たことを思い出した、姉の外出禁止令が長いのはこのためかーと思いながら、うちの母親はまた義理息子の自慢話をして、着々と土台固めに精を出してくれる事だろう。うちは貴族と言っても分家だし、入り婿の姉の旦那は平民出身。と言っても成績優秀、かつ王侯貴族の跡取りがメインに通えるロイヤルイーストに編入した実力の持ち主なのだ。
そして、報告が終わった甥っ子達はご褒美と言わんばかりに足をばたばたさせて言った。
「ルー!!遊ぼ!!」
「あそぼー!!」
全力でお礼を混めてお遊びをした。家族とのコミニュケーション大事、家族内の状況を知るには家を徘徊してる甥っ子達が一番詳しいのだから。情報対価をしっかり払うのだ。体がくったくたになるけどね!!
寝る前には今日の出来事を思い出し細く微笑む。さてさて、暫くは学校が楽しくなりそうだ蒔いた種の成長が楽しみ楽しみ。