コメディ風味②
夏休み、久しぶりに田舎の爺さんとばあさんを訪ねる事にした。最近腰が痛くて、療養のために環境のいい場所に行きたかったからだ。
爺さんは会社を退職した後、田舎で農村生活を楽しんでいる。都会の喧騒から離れてすごしたいとか言いだしたのだ。気持ちは分からなくもないし、こうやってたまに訪ねる程度でいい関係というのは俺にも都合がいい。田舎生活ってほんの数日ならいいけど、毎日だと不便だからな。
今回は嫁と二歳の娘を連れて爺さん達の所に行った。
嫁と娘はこれが初めての田舎で、少しテンションがおかしい。緑の匂いが濃いし、そこらじゅうに虫がいるなんて、向こうじゃ考えられないからな。驚くのも当然だろう。俺は腰が痛いのであまり動かずにいたけど。
はしゃぐ二人を、爺さん達は笑顔で受け入れてくれた。
普段は飼っている猫で寂しさを紛らわせているんだろうけど、ひ孫の可愛さにノックアウトされたらしい。飼い猫よりも娘を連れ回して幸せそうにしている。動けない俺は猫を構っている。娘を取られて寂しいのだから、俺は爺さん達の猫と遊ぶのだ。猫は人懐っこいのかすぐに俺に懐き、甘える様にすり寄って来るから可愛い。
夜になってしまえばみんな疲れて深い眠りについている。爺さん達や娘ははしゃぎ過ぎて、嫁は慣れない田舎での家事に戸惑って、普段よりも疲れたみたいだ。
俺はというと、そこまで疲れた訳でもないし、目を閉じてはいるけど眠気とはまだ縁が無い。猫と遊んでただけだしな。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
ん?
どこかから、何かをなめるような音が聞こえる。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
意外と近いな。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
っていうか、すぐ隣じゃないのか?
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
そっちにいるのは娘のはず……
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
目を開けて、横を見る。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
え?
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
娘の方から、音がする。
ぴちゃ、ぴちゃ…………
不意に、音が止まった。
娘のいたところから、何か黒い影が近寄ってくる。
そして鼻には、知っているけど今は理解したくない、あの臭いが。
黒い何かは、俺にすり寄った。そしてその動きで、黒いものがなんなのか理解してしまった。
待て、
待ってくれ、
甘える前にその身体を……!!!!
アッーーーーーー(゜д゜)ーーーーーーーーー!!!!
その後、何故か着替えていた俺と娘に妻は不思議そうな顔をしていたが、俺は笑って誤魔化した。
あの晩何があったのか。
それは俺と猫だけが知っていればいいのだから。




