ホラー風味
夏休み、久しぶりに田舎の爺さんとばあさんを訪ねる事にした。
爺さんは会社を退職した後、田舎で農村生活を楽しんでいる。都会の喧騒から離れてすごしたいとか言いだしたのだ。気持ちは分からなくもないし、こうやってたまに訪ねる程度でいい関係というのは俺にも都合がいい。田舎生活ってほんの数日ならいいけど、毎日だと不便だからな。
今回は嫁と二歳の娘を連れて爺さん達の所に行った。
嫁と娘はこれが初めての田舎で、少しテンションがおかしい。緑の匂いが濃いし、そこらじゅうに虫がいるなんて、向こうじゃ考えられないからな。驚くのも当然だろう。
はしゃぐ二人を、爺さん達は笑顔で受け入れてくれた。
普段は飼っている猫で寂しさを紛らわせているんだろうけど、ひ孫の可愛さにノックアウトされたらしい。飼い猫よりも娘を連れ回して幸せそうにしている。
夜になってしまえばみんな疲れて深い眠りについている。爺さん達や娘ははしゃぎ過ぎて、嫁は慣れない田舎での家事に戸惑って、普段よりも疲れたみたいだ。
俺はというと、そこまで疲れた訳でもないし、目を閉じてはいるけど眠気とはまだ縁が無い。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
ん?
どこかから、何かをなめるような音が聞こえる。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
意外と近いな。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
っていうか、すぐ隣じゃないのか?
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
そっちにいるのは娘のはず……
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
お漏らしってわけでもないよな?
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
目を開けて、横を見る。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
え?
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
猫が、娘の腹を舐めている。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
布団や毛布はなく、服もめくれ上がったそのお腹は。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
ナニカ、ミエテハイケナイモノガ
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
「アァーーーーーーーー!!!!!!」
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
あれから数カ月。
田舎から帰った俺は思ったよりも疲れたのか、家に戻るなりダウンしてしまった。
嫁と娘は珍しい田舎体験だったからか、帰ってきてもテンションがおかしかった。楽しかったようだし、別にいいけど。
爺さん達は別れ際、本当にさみしそうだった。俺達が帰ったら、あの家に二人っきりだもんな。また今度行くって約束をしたし、田舎とはいえネットぐらいは出来る。たまに写真やメールでも送ってあげよう。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ
休みを消化したら仕事だし、愛する家族の為に頑張りますかね。
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ




