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主人公は金髪  作者: 静間
第1章
8/48

[8]

 車輪のない車が細い路地を走り抜けた。

 ネクスト社製品。

 民間向けに自動車や精密機器を販売し、軍事レディエスの開発にも貢献している国営企業です。シンプルで、シャープなデザイン。A-GISを組み込んだエンジンを積極的に搭載! 次世代を担う乗用車として、従来の四輪駆動ではなく、A-GISによるホバリングを可能にした新型軽自動車!

 豊かな毎日と、新しい未来へ。ネクスト!

 街の大型モニターにネクスト社のCMが映る。流行りのアイドルが満面の笑みを浮かべながら、いかにも楽しげに車を運転する姿があった。


 俺はそれを横目に小道を抜け、騒がしい街の中心から遠ざかっていった。

 目的地は、昼の廃公園で、一人で絵を描く彼女のもと。


「よぉ」


「…………」


 風が彼女の黒髪をさらう。


「てか、今までスルーしてたけどよ。その黒髪、」


「?」


「染めてんの?」


「ちがう」


「かつら?」


 つい、ミサキ相手の調子で冗談を織り交ぜてしまった。


「…………」


 案の定、彼女の絵筆が俺を襲う。


「うわっ、ごめんっ今のはっ、今のは俺が悪かったっ」


 必死に懇願すると彼女も渋々といった感じで腕を下ろした。


「ふぅ、…じゃあ地毛なんだな」


「…………」


「めずらしいなー」


「…………」


「世間の皆様の視線とか気にならないのか?」


「…………」


 相変わらず返事は返ってこなかった。

 でも不思議と、隣にいるだけで心地よい気がした。

 まだ少し、彼女の真っ黒な瞳や黒い髪には慣れなかったが。


「ま、世間の皆様がどう感じるかは抜きにして、俺は悪くないと思うな、黒髪」


 今の時代、黒髪なんてロックンロールだ。ちょっと抵抗感はあるけど、嫌いじゃない。

 正直な気持ちを打ち明けてあげると、彼女の絵筆が止まった。どうしたんだろうかと、顔を覗き込もうとするや否や再び絵筆が俺を襲ってきた。


「うわっ、な、なんだっ? なんで筆攻めっ?なんか怒るような事したかっ?むしろ俺は褒めたんだぜっ?」


「………っ」


 彼女が真っ赤になって怒っている。

 何がそんなに気に食わないんだろうか。

 いや、むしろ怒ってる訳じゃないとか? アレか。褒められ慣れてないから照れてるんだろうか。


「……ばかっ」


「え、なんだって? って、おわぁっ!」


 真相を確かめるまでもなく絵筆で突かれた。

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