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主人公は金髪  作者: 静間
第1章
4/48

[4]

 廃公園。

 最近はめっきり暖かくなった。

 春の木漏れ日が、木陰に金色のコインのような陽光を落としている。遠くで川が流れているのか、水のせせらぎが聞こえる。今は有象無象になっているが、管理されていた頃は綺麗な景観だったに違いない。


 カーキ色のパーカーにユルユルの作業着のような格好で、彼女は絵を描いていた。しばしその姿に見とれてしまう。こうして遠くから眺めている分には、別に怖いとは感じない。普通の女の子だ。

 彼女の隣に座る。


「よぉ」


「…………」


 返事はない。

 代わりに、彼女がチラリとこちらを見やった。


「またあんたかよ…、みたいな顔しないでよ」


「…………」


 キーンッと鋭い音が鳴り響く。続けて突風が吹き抜ける。ザワリザワリと枝葉達が騒がしくなる。軍事用レディエスだ。


 ちなみにパイロットテストは補欠で通過した。ミサキが、またもや遅刻してきた俺を見て「馬鹿じゃないの!?」と何度も怒鳴り散らしていたが。結局ミサキも合格していて、まぁそれで有耶無耶になった。


 一週間後に、別の適性テストがあるそうだ。最終合格まで幾つもテストがあり、それをクリアしなければ晴れてLDSのパイロットになることは出来ない。一回目で補欠とか、俺は大丈夫だろうか。心配になる。



 絵を描く彼女は、突風にさらわれた髪を必死に抑えていて、ちょっと笑ってしまった。笑ったら睨まれた。それにしても、黒髪なんて珍しい。


「絵、見してよ?」


「ヤダ」


「即答かよ」


「……」


「じゃあ、なまe」


「ヤダ」


「はえーよ」


「……ヤダ」


「フライングだよ」


「………」


 キッと彼女が俺を睨む。絵筆が取り出された。


「うおっ、落ち着けっっ、分かったからっ、筆は駄目だっ、ワイシャツのクリーニング代がっ!」


「………」


「ふっふ、危ない危ない。これだけ距離を取れば…」


「………」


「ま、ちょっ、おまっ、落ち着けっ! パレットを投げるなぁ! うわっ、ぐはあっ!」


 その日の夜、パレットがブーメランのように飛んでくる悪夢を見た。

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