えんぴつと赤とメガネ
僕は今、非常に緊張している。別に美術の先生が苦手とか、下手な絵を見られるかも知れなくて恥ずかしいとか、そんな理由ではない。いや、実際にはそれもあるんだけど、そんなちゃちなもんじゃない。
僕はそっと、隣を盗み見る。そこにいるのは、名前も知らない、別のクラスの女の子。その子は僕が見ている事にも気付かず、課題として出されたまっ赤なリンゴをのデッサンを描いている。僕の顔も、あんなリンゴみたいになってるのかも。
うちの高校は、芸術科目を『音楽』『書道』『美術』から選ぶようになっていて、選んだ科目ごとに分かれて、複数のクラスが一緒の授業を受けるようになっている。彼女に出逢ったのもまったくの偶然だった。
初めての授業で、先生から2Bのえんぴつを渡される。『先生をスケッチしなさい』だって。慣れないスケッチブックを片手に、不格好な絵をいくつも連ねていく。あ、変になった。えんぴつを消しゴムに持ち替え、不自然に突きでた線を消して行く。
カラカラカラ……。
「はい」
落ちたえんぴつを、拾ってくれたのだろう。ありがとうと言いつつ振り向くと、女の子がいた。ひなたに出た事がないんじゃってくらい、まっ白い肌で、優しげなおっとりとした目をしてる。それに、ちょっとぶかっこうなメガネも、すごく可愛いな……。
カラカラカラ……。
僕は女の子が落としたえんぴつを拾って、
「落ちたよ」
って手渡す。
「ありがとう」
って言われて、ちょっと嬉しかった。でも、今日はコンタクトだ。
次にあのメガネをかけてくるのは、いつなのかな。
だって、コンタクトより、あの時のメガネの方が、ずっと可愛かったんだから……。
まさか書き上がったら発表するとは思わなくて、公開処刑にあいました。恥ずかしいですよ、恋愛ネタ読まれて感想いただくのは。