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俺と私と”魔法の世界”  作者: ながも~
セアルクニーグ皇国編
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Dive_1F 北の湖


 もしかして、過去最長じゃなかろうかこの話。

 ………なのに話は全然進んで無い。(・3・)あるぇー?


 キュィンッ……という風切音と共に光のラインが夜空に昇り、光で構成された紋様が天に浮かびあがる。

 光ってるとは云え、その光は薄い。眼を凝らして漸く円形の魔法陣だと解る。


 ……ィィィン―――!!


 続いて、人々が見上げる中で、浮かぶ紋様へと赤・青・緑・黄・紫……様々な色の光弾が街の至る所から打ち上げられ、次々と吸い込まれていく。

 すると、紋様の輝きが強まっていき、


 ……ォォオオオン――――!!!!


 紋様は中心へ向けて一気に集束。

 瞬間、取り込んだ多くの光の弾を一息でばら撒く。


 午後10時。夜空に虹色の大輪の花が咲き誇った。


 直後、虹の花を追うように閃光が放たれ、地上からも赤・緑・青の3色の薄い光のラインが伸びて天地両方から街を照らした。



 夜遅くにもなり、街中の喧騒は静まった。

 しかし、祭はまだまだ終わらない。






 その光景を遠く北に離れた、湖の上に浮かぶ船から見上げる者達が居た。



「………何だあれ?」


「あー、破壊力皆無で構成した視覚効果魔法だな。解りやすく言うとフラッシュグレネードに近い。空に魔法陣で展開座標を固定、大勢の魔法使いが色を付けた魔力を撃ち込んで、その魔力を纏めて周囲にばら撒く、って所だな」



 なるほど。

 ……が、俺が聞きたいのはアレがどんな魔法なのかじゃなくて、何の為に発動させられたのか、なんだけど。


 そう思っていると、表情から読みとったのだろうか。マグナが補足を加えてきた。



「あの街が魔法使い主体ばかりで、青神様―――魔法神を中心に信仰してるってのは話したよな。あそこの祭はその魔法神への日頃感謝……要するに、魔法のお陰で生活便利ですありがとうとか、魔物から街を守る力を頂きありがとうだとか、そんな感じの意味な訳だ」


「つまり、魔法万歳感謝祭か」


「ああ。……本来ならあの祭も年1回、年末年始にやってるんだが……今回は例外で、魔法神降臨記念祭だが、まあその辺りは変わってないハズだしな。話を戻すぞ? そんな訳で、あの祭で行われているモノは基本的、全てが魔法神への感謝だ。魔法関係の露天がやたら多いのも、元は日頃の研究成果を神に報告するとかそんな感じだ」



 全てが魔法の神様への奉納へと通じている訳か。

 ……まあ、凄い好き勝手に露店出てたし、自慢大会って感じでもあったが。



「要するに、アレは空に高度な大規模術式を展開して、大勢が魔力弾という形で魔力を魔法神に捧げてるって感じだな。魔法陣と最後の閃光のサイズ、そして魔力弾を打ち上げる人数は『魔法神をこれほど信仰してます』『御神の信徒は大勢います』ってアピールで、多種多様な色を混ぜるのは魔法の多様性の表現だ。まあ結局のところ魔法すげぇ!って言いたいだけなんだが。………例年の祭ならこの後、青髪の少女に魔法神役をやらせて返礼の儀が在るんだが……今回の場合、本人が来たからな。多分そっちは無い。っつーか半日そこらで準備できてたらビビるわ」



 ………ふーん。



「要するに、賽銭代わりの元気玉花火か」


「……身も蓋も無い言い方をすると、そうなるなあ」



 なるほど、なるほど。

 祭の最中に黒菜から聞いた話によると、この世界の開発には日本人が結構深く関わっていたらしいし。

 中でも、此処セアルクニーグ皇国は殆ど日本人が作ったとか。通りで、日本式西洋風ファンタジーな世界観してる訳だ。

 まあ要するに、日本式の色付きの光を放つ花火があっても可笑しくは無い。


 ちなみにその際、NPC『フィリアレーギス』のベースデザインは日本人が担当したという話を聞いた。何でも、18歳くらいのイメージで描いたらしいんだが……日本人故か、単に描いた奴がロリコンだったのか。16歳くらいの見た目になっている。それでOKを出した周りも大概だが、いいのかそれで。


 つまり、フィリアレーギスの外見デザインには開発陣、つまり人間が関わっている訳で。

 以前、城の地下で「フィリアの身体は白埜の複製」という話を聞いたが……アレはどうやら材料的な話であって、フィリアを生み出す際に白埜が外見を模した、と言う方が正しいようだ。


 つまり、フィリアが白埜と黒菜に似ているのでは無く、白埜と黒菜がフィリアに似ているのだ。

 コレは「人類は神の似姿」では無く、「神が人類の似姿」だったという事。実に哲学的である。

 哲学っぽい事を考えると、自分の頭が良くなったような気さえする。つまり俺の頭が良い気がするという事だ。


 ………まあこの世界での話だし、現実ではどうだかさっぱりだが。

 そもそも神が居るかどうかさえだな―――――








「フィリア様、到着しました」


「―――――――あ?」



 気が付いたら、船が岸に着いていた。……いつのまに。

 船着き場では無く、岸だ。砂浜に乗り上げていると言い換えても良い。


 舳先から伸びる板、そこに開けられた穴に杭を通して地面にガスガス打ち込んでいるのはマグナだ。多分、船が流されないように固定してるんだろう。ぼーっと見ている内に打ち終わったらしく、舳先から下りて砂浜で背筋を伸ばしていた。

 だがしかし、普通は力仕事って魔法使いと騎士だったら騎士がやるもんじゃないのか? 何故マグナがやってるんだ。いや、似合ってるけど。


 余談だが、マグナが杭を打つ時に使っていたのは素手である。

 ……もう何でもアリだな、魔法闘術。



「御手をどうぞ……固定してあるとは云え、多少は揺れますので。脚元にご注意ください」



 手をこちらに差し出しているのは勿論、アルマだ。

 舳先の台に立つアルマは、その銀色に近い髪が月光を反射している。容姿も相まって、まるで妖精の様である。


 …………だが男だ。








 船を下り、砂浜を進む。

 何気に踏む度に良い音がするんだが……試しに砂を手に掬って見てみると、一般的な砂粒とは違った形をしていた。



「これは……まさか、おっとっ○―――――」


「いや違ぇよ、普通そこは星砂だろ。何故に菓子の名前出すよ?」



 そういえばそんなモノもあったな……と思い、掌に乗る中でも特に大きな一粒だけを指先で摘まんでみた。

 見事に星……いや、星というよりも、ヒトデ型か。うむ、見事なヒトデ型だ。


 たしか星砂というのは、岩が砕け、川で流される内に角が取れたような通常の砂では無く、ホシズナという名前の単細胞生物の殻だったハズだ。

 つまり、砂というよりは……どちらかというと、貝殻のようなモノである。



「要するに、ココは砂浜じゃなくて貝塚だったのか!」


「いえ、これは黒菜様が『この方が面白くて神聖のような気がする』という理由でバラ撒いたモノです……ですので、それは生物の殻では無く、本当に星の形をした砂です」


「ちょ、何やってんの黒菜さん。武器の神様らしい事しろよ。誰も来ないだろココ………」



 ホント、迷惑は掛けないが碌な事をしない神様だ。玉砂利気分で星砂を作るとは………いやまあ、その方が面白そうってのは認めるが。


 ……そんな事を話している内に目的地が見えた。



「………あれか?」


「ええ、あれが魔法神の神殿です」



 一直線に伸びる石畳。

 そしてその先にあるのは、木々に埋もれている石造りの建造物だった。









 ~~ おまけ ~~



 魔法学院・簡易屋外実験場(校庭)にて。

 フィリアが花火を見上げる数刻前の出来事。

 ――――――――――――――――――――



「座標空間固定完了、上空に吸収陣を展開します!」



 1人の学生の言葉と共に、夜空に魔法陣が展開される。

 セプテントゥリオの上空いっぱいに広がるそれは、彼の言う通り吸収――より正確には、触れた物体を取り込み、陣を円形回路として内部でぐるぐる回して維持するというものだ。



「っしゃー、んじゃあ各自で魔法弾打ち上げ開始ィー! 撃てよ撃てよ片っ端から撃てよォ!」



 それを合図に、集まった学生達は魔法陣に向けて各々魔法弾を放つ。

 威力は持たせず、単に光を放つだけの魔法。

 色は適当に。赤や黄や緑、茶や青、本当に好き勝手に叩きこむ。


 魔法学院の校庭だけでは無い。

 街の到る所にいた魔法使い達……つまり露店経営を行っていた者、恋人とデートしていた者、串焼きを頬張っていた者など。学生で有る無し関わらず、魔法が使える者達全てが魔力弾を放っていた。



「―――予定魔力量到達しました!」


「よし、撃ち方止めー!」



 十分な量を吸収させた所で、魔力弾の討ち上げを止める。

 最も多く魔力弾が放たれていた魔法学院方面からの供給が止み、それを見た街の各地にいた魔法使い達も打ち上げを停止する。


 皆、何が起きるか知っているからだ。



「魔力吸収停止、圧縮・集束と同時に、高速回転を掛けます!」



 夜空に広がっていた巨大な魔法陣はその巨体を徐々に縮めて行き、



「―――臨界点到達、制御限界です。合作花火『ザ・レインボーフラワー』、開放します……許可を!」


「良いぞ、やれ!!」



 合図と同時、指先ほどにまで縮められていた魔法陣がその身をさらに縮ませた。

 刹那、制御を離れた魔法が暴走し、内部に取り込んだ魔力弾を、遠心力によって周囲にバラ撒いた。



 夜空を覆う程に巨大な、虹色の花が咲き誇った。



 それを確認した学生達の顔は満足気であり、




 ――――――――そして、その脚元には多量の酒瓶が転がっていた。



「ヒャッハー! デカいの終了ったが、祭はこれからだぜェー?! だれか芸やれやオラァー!」


「ならば一番手は俺が! 今から我が最高の魔法を見せてやる、眼を見開け!」


「ほほう、そこまで豪語するならさぞ凄いんだろうな。見せてみろ!」


「フッ、行くぞ……ォォ、オオオオオッ……お?」


「何だ、どうした? 爆発か?」


「――――フン、魔力が足りないようだ………貴様達、残念だったなグボァッ!!」


「ひっこんでろ阿呆、私が一番手を頂く。……懐から取り出しますは試験薬2つ。七色に光り輝いて、なんとも美しいですね?」


「七色っつーか、極彩色レインボーって感じだな」「ああ、ザ・ヤバイって感じだよな」


「この2種の薬品を、こちらの密閉した真空容器内に転送。よーく混ぜ合わせます!」


「何かすっげー光ってるぞアレ」「ああ、ザ・ヤバイって感じだよな」「むしろヤバイスト、最上級だな」


「そして、この七色に光り輝く神秘の薬を地面に振り撒きますとー?」


「どうなる?」「やべ、わっかんね」「一番手はイケメンか。彼女とか居るんだろうなァ、爆発しろ!」「これテストに出るか?」「出ねえよ馬鹿」「……と見せかけて?」「ねーよ」「そんな事より、あの薬品大丈夫なのかよ?」「大丈夫だろ、仮にも魔法学院の学徒なんだ」「まあそうだけど」「所でアイツ誰?」「俺、アイツの顔見覚えあるんだけど」「へえ、誰なんだ?」「校内新聞で見たと思うんだが……誰だっけな」「校内新聞に載るっつったらエリートじゃねえか」「イケメンの上、あの若さでエリートかよ、爆発しろ!」


「――爆発? 思い出した、アイツは――――



「なんとっ、大気中の魔力や酸素と連鎖反応を起こし、爆発します!!」



 ―――爆破芸術学科のフラッツだ」


『ギャアアアアァァァァァァァ!!!』



 極彩色の爆薬は、地面に降り積もっていた魔力反応試験粉末『マジカルミノールパウダー』と共に魔法学院の学徒達を空へと打ち上げた。

 赤緑青の三色の光の軌跡を残して、学院の中庭は静けさに包まれる。



 ―――俺達の祭は、これからだ!!

   (次回の北街でのお祭りを御期待下さい)



 何か最近読み始めた某ラノベ作家の作風の影響を受けまくってる予感がする。

 まあ、悪い事では無いので良いか。




 あ。ちなみに、次回のお祭りとか書く予定は全く無いです。

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