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俺と私と”魔法の世界”  作者: ながも~
セアルクニーグ皇国編
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Dive_1C フィリアさん反撃開始

 前回のラストで、フィリア姫と城仕えの魔法使いマグナ2人のラブロマンスが始まると思ったアナタ。

 残念でした、始まりません!!!


 ………え、そんな事思ってませんか、そうですか。


110917:脚の本数間違えていたのでちょっと修正。カニの辺り。

 初見からマグナは違和感に気付いていた。

 と、言うか。気付かない方が可笑しい程度に違っていたのだが。



「……で、隊長。”姫様”はどうしたんだ?」



 顎に手をやり、フィリアの瞳を覗き込むように顔を近づけて尋ねる。

 行動そのものに意味は無い。ただ、ソレっぽいからやっているだけだ。


 顔が近い……フィリアは半歩下がりながら、耳の裏辺りをぽりぽりと掻きながら答える。



「それが、どうなったんだか解らないんだよな。マグナが来る少し前まではフィリアだったんだけど。……意識が表に出てる間は、裏側の事さっぱり解らないんだよ」


「ふーん? ……じゃあ、何で姫様がボコられてたかは解るか? 一応アレでも最強だからさ、敵がどれだけ強かろうが本来一方的に倒せるハズなんだよ」


「ああ、それなら解るぞ。MP切れだ」


「…………何?」



 あまりにもあんまりな回答に、流石のマグナも凍った。瞬時解凍、再起動。

 マグナはフィリアへと手をかざし、状態察知の魔法を掛ける。身体情報や病気を感知する魔法だ………ちなみに、年齢は調べられない。



「―――マジで魔力切れてんな。……なら、コレで大丈夫か?」



 マグナは掌の上にビー球程の光り輝く球体生成し、そこから一条の光線をフィリアへと放つ。「レーザービーム?!」と驚いたフィリアが身動ぎをするが、マグナにがっしりと頭を掴まれて殆ど動けなかった。

 魔力譲渡だろうか、ステータスをチェックしてみれば、確かに魔力が回復している。


 開放されたフィリアは黒剣を抜いてトリガーを引く。黒い方だ。

 内部回路に黒魔鉱石がセットされる。刀身が黒く染まった……どうやらちゃんと魔力供給されたらしい。魔力の無駄使いを防ぐ為にも、トリガーを元に戻して鞘へと戻す。



「大方、消費の激しい魔法でも使った後に戦闘したんだろ。……まあ、何にせよ無事で良かったよ」


「へえ……心配してくれたんだ?」


「当たり前だ。隊長の人格が消えたら俺達……というか、この世界も割と危ないからな」



 少し言い辛そうに、顔を顰めながら言った。

 マグナに似合わない表情(失礼)と、ちょっと冒険的な意味で浪漫溢れる言葉に疑問を持ち、



「世界が危ない……世界の危機か。そりゃ大規模だな。なんでそうなる、俺が大変な事になるだけじゃないか?」


「……城では説明省いたのか? まず、隊長の人格が消えた、つまり姫様の人格を現実に持って行っちまった時だ。すると現実社会では『何が原因なのか』と捜査が始まる訳だ。……で、その原因としてこの世界が挙げられたら……どうなる?」


「ん………運営停止、か?」


「その通り。危険なゲームなので運営停止だ。となれば、この世界は『終わり』を迎える。NPCと呼ばれるこの世界で生きてる人々も全員『死ぬ』。現実で運営に関わってる人達も仕事が無くなったりして社会的に死ぬ。まあつまり、沢山死んじまうから、頑張りましょうって事だな」


「………訊かなきゃ良かった」



 実にリアルな理由だった。



「まあ、そんな話は放っとけ。そろそろ休憩タイムは終了だ」


「良いのかそれで………で、これからはゴーレムさんの求刑タイムか」


「あんま面白く無い―――2点」



 ―――ぎちぎち、ごりごり。


 嫌な音を立てて、倒れていたゴーレムは起き上がる。どうやら内部フレーム的なモノがひん曲がったらしい。


 表面装甲とでも言うべきだろうか、大小様々ば岩板がボロボロと崩れ落ちて行く。

 事実上の内骨格だけとなり、ゴーレムの内部が良く見えた。



「……中身のアレ、粘土か? 足が6本でカニっぽいとは思ってたけど、まさか甲殻類だったとは」


「腕を数え忘れてるぞ。合計7本だ」



 実際は、腕を入れたらカニは10本脚だ……十脚類だし。脚が8本、腕を除けば6本なのは、ヤドカリだ。

 しかし、この2人はそんな事は知らない。「片手だけデカい奴みたいなモノだろ」と言ってみれば、成程とマグナも納得した。


 ………つまり、あのゴーレムはカニだったのだ。



「いや、ねーよ」









 装甲が剥がれ落ち、粘土や砂利で作られた内部構造を晒したゴーレムは、その巨体を支えていた骨格を失った為か、その内部構造すらもボロボロと崩れ始めていた。

 そして、バスケットボールサイズの半透明の球体が露出した。ゴーレムのコアだ。


 ……それは、各脚の付け根部分にあった。1個はフィリアの落石攻撃で失われた様だ。つまり7つ。



「いや、中央にもあるな……8つだ」


「腕も切り離されて動いてたって事は、コアあったんじゃないのか?」


「ああ、そっちは破壊した。問題無い」



 何時の間に破壊したのだろうか。拘束を外してくれた時だろうか。

 考える間にも、ゴーレムは崩壊する。

 辺り一面に散らばったゴーレムの構成品、そこへ落下する8つのコア。落下地点を中心に、周囲の土や岩板を吸収しはじめる。身体を再構成するつもりに違いない。



「さて隊長。『初戦闘』な訳だが、大丈夫か?」


「そりゃやってみなきゃ解らないな………ま、とりあえずフィリアの戦い方は見てたからな、在る程度はやれるさ!」


「なら、いっちょやるか―――!」



 フィリアは腰の白剣を抜き放ち、マグナは半身を引いて拳を突き出す。

 トリガーに指を掛ける。これならいつでも黒いトリガーを引ける。無断に魔力消費をする訳にもいかないから、振るう寸前にトリガーを引く事が望ましい。


 ……ゴーレムの再構築が完了する。

 先程までと比べて、少し小さい。そして何より、形状が違う。

 今の姿は左右2対、計4本の短くなった脚と、半分程の長さになった腕……ただし左右にある、両腕だ。腕より少し短い程度の尾があるから、3本腕なのだろうか?


 ……後で聞いた話だが、ゴーレムが身体として用いる事が出来るモノは、魔力を十分に馴染ませた物体だけらしい。

 先程のマグナの一撃によって各部の魔力が吹き飛ばされ、身体構成に使える部品が少なくなったから小さくなったからだとか。



 ゴーレムは身体構成が終わるや否や、岩で構成された両腕を振り上げる。

 この距離で振り降ろしても届かないと思うのだが。



「―――飛ぶぞ、口閉じとけ!」


「え、ちょっ?!」



 腕が振り下ろされる前に、マグナはフィリアを掴んで垂直に跳躍する。

 直後、岩石の腕が大地へと叩きつけられ、ズドン! と凄まじい音を立た。同時に、大小様々な岩が飛んでくる。散らばっていたゴーレムの構成品だ。

 さっきまで立っていた場所には巨大な岩石が突き刺さり、クレーターを作っていた。


 もし、マグナに引っ張られて無かったらあっさりと潰れていただろう。想像するだけで痛い。いや、死ぬ。



「助かったよマグナ」


「おーおー、存分に感謝したまえよー」



 安全を確認したのか、今度は地面へと向かう。

 一瞬ふわりとしたと思ったら、着地の衝撃も何も無く立てた。どうやら、マグナが何らかの魔法で何とかしてくれたらしい。


 先程の攻撃は危なかったが、もう大丈夫だろう。

 ゴーレムの脚元に散らばっていたモノは、今の一撃で全部吹っ飛んだからだ。


 好機だ、周囲に岩が落ちていない以上、その手足を使ってしか攻撃してこない。

 足先に力を込め、ゴーレムへと向けて走る。



「狙うのは核だ! さっきと同じなら、場所は腕・脚の付け根とド真ん中!」


「解ってる!」


「前衛は任せろ。マズい攻撃は防いでやるから、ド派手な『初勝利』を決めてこい!」



 前衛に魔道士マグナ、その後ろに剣士フィリア。

 どう考えても可笑しい布陣だが、気にしない。実際、マグナの方が圧倒的に強いのだから仕方ない。



「どうした、この程度か! もっと気合い入れて攻撃してこいよ!」



 ゴーレムは、岩の代わりに周辺の土を飛ばしはじめた。まるで海辺で水を掛けて遊ぶ様に。

 しかし、それもマグナの放つ砲弾のような圧縮空気で吹き飛ばされ、行く手を阻む事は出来ない。


 ………挑発しているが、ゴーレムに聞こえているのだろうか? とりあえず、耳は無いが。



「―――ッりゃああああああ!!」



 大声と共に剣を振り上げる。トリガーを引き、白い刃は黒く染まった。

 身長が下がったゴーレムの脚は、長さ2メートル程だ。腕を伸ばせば届く。


 がりがりがりがり……と、嫌な音が響く。傷は出来た、しかしあまり深く無い。コアまでは届いていなかった。



「クソッ……黒剣ほどの切れ味は無いか!」


「振り降ろしだ、下がれ!」



 マグナの声に咄嗟の反応で横へ飛ぶ。

 直後、すぐ近くに腕が振り下ろされた。爆散する地面。空中に居たフィリアは大きく吹き飛ばされる。


 3メートル程も飛び、その倍近い距離をゴロゴロと転がって漸く止まった。



「大丈夫か!」



 声を掛けるマグナに手を振り、無事である事をアピールする。

 目が回って多少気持ち悪くなったが、身体は殆ど無傷だ。直撃さえ受けなければ、大抵の攻撃はドレスが何とかしてくれる。実に頼もしい。



「いやしかし、攻撃が通らないってのは参ったね………ん?」



 立ちあがり、再度ゴーレムへ向けて歩きだした処で何かを踏んだ。足をあげてみれば、それは黒い掌程の破片……黒剣の欠片だ。

 何気なく空いていた左手で拾い上げようとして、籠手では上手く掴めない事に気付いた。白剣を左手に持ち替え、改めて右手で拾い上げててみると、魔力を吸い上げたのか、黒曜石の様な色だった欠片は光沢を失い、より深い黒へと変色する。どうやら、破片でもちゃんと機能するらしい。


 そして、ふと左手の剣を見て、思いついた。


 ――――これ、使えんじゃね?


 何を思いついたのか、フィリアは白剣を左手に持ったまま、マグナの元へと奔った。



「……左手じゃ、剣の威力は極端に下がるぞ? っていうか、ただの剣だな」


「いや、問題無い。これで行けるはずだ……多分」


「多分かよ……まあ、面白そうだから良いか」



 ニヤリと笑ってやると、怪訝な顔をしていたマグナもニヤつき始めた。何をするのか知らないが、とりあえず面白そうだと思ったらしい。

 もし失敗して危なくなっても、マグナがサポートしてくれるだろう。



「さあ、第二ラウンド開始だぜ……ッ!!!」




 外見変化後のゴーレムは、一部の人に解りやすく言うとハンムルドール(完全版)です。

 とは云え、攻撃方法が似ているというだけで外見は結構違うのですが。


 次回、ゴーレム編決着です。

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