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俺と私と”魔法の世界”  作者: ながも~
セアルクニーグ皇国編
47/52

Dive_1A 六脚単腕のゴーレムさん現る。

以前、一話あたりの長さを短くして、更新頻度を上げると言ったな。

………あれは嘘になった。


あと少しで前話投稿から1ヶ月経つトコロでした。あぶねー!



そして、もう一人称だとか、三人称だとか気にしなくて良いと思ってみた。

視点が気付いたら変わってる。


人は、それを読み辛いと呼ぶ。きっと。

でも試験的にやらかしてみた。てへっ


 北の魔術都市セプテントゥリオ。

 その東に広がる大平原……かつては山岳地帯であったが、大規模な魔法実験を行う内に大地が吹き飛び、平坦化され、大小様々な大きさの岩がゴロゴロしている地となってしまった場所である。


 その真っ只中、フィリアは自身よりも巨大な岩の陰から、件の魔物と思わしき存在を観察していた。







 実際の所、件のゴーレムが魔法を無効化する……という現象の解明をしようと色々試してみたのですが。

 小さい魔力珠を生成して投げてみたり、落ちていた小石を投げ付けてみたり。


 結論から言えば魔力珠は消失し、小石は何の障害も無く届きました。つまり、純粋な対魔法性能です。

 しかしこれでは魔法を無効化しているのか、単に魔力力場が強力なのか。さっぱり解らないのですよね。まあ、魔法無効化等と言う現象はシステム上存在しない……ハズなので。いや、やろうと思えば出来るでしょうが、そんな能力を持たせた魔物はまだ存在しないはずですから、きっと魔力力場だとは思うのですが……



「ここの所、何かと異常事態が続いてますし……ね」



 明らかに強化されていた魔物オーク

 本来はこの近辺には存在しない魔物フレイムウーズ

 目の前に居るゴーレムも、明らかにこの近辺に出現するような強さでは無いですし。


 そもそも、私と『彼』の現状が既に異常な訳で。



 ……まあ、お仕事しますか。

 フィリアレーギスの仕事……それは魔物の能力テストと、同時に皇国民を守る事。

 つまり、『魔法無効化』などという、殆どの皇国民が対処不能な魔物の存在を許す訳にはいかないのです。

 そんなスキル持ちの魔物を作ったという報告は聞いてませんが。何らかの要員から生まれたイレギュラーならばデータを収集し、ログを取得し、そして排除しなければ。





 ……で、どうやって魔法無効化と魔力力場を判別しましょうか。

 単純に、魔力力場を押し流す程の強力な魔法を撃ち込めば良いのですが……途中経過を確認しながらとなると、中々難しいので。

 何が良いのでしょうかね?


 火炎系……見え辛いので却下。

 電撃系……距離が離れているので届かない、却下。

 冷気系……届くまでは良いですが、相手が岩石なので効果判別が微妙、保留。

 空圧系……そもそも見えない、却下。


 あれ、岩石で出来たゴーレムに通用して、その上で過程も確認出来る属性が殆ど無いじゃないですか。

 辛うじて冷気系ならば、霜くらいが付きそうですが……


 ……あ、良いモノがありました。

 普段使わないので、すっかり忘れてました、圧縮魔法。

 それは、物体のサイズを縮める効果を持つ魔法。圧縮状態を維持する為にも魔法が使われる為、魔力力場による影響が確認しやすいですし。


 使う対象は、先程まで私が隠れていた巨石。

 この巨石、半分程は地面に埋まってますから……凡そ、2トン程でしょうか?

 これを、拳大まで圧縮………無駄に膨大な魔力を使って、何重にも、何重にも圧縮魔法を掛けます。効率は悪いですが、この際それは無視。

 そして圧縮して出来た黒い小石……周囲が少し暗くなってますが、恐らくは圧縮効果に光が巻き込まれているのでしょう。まさに、一種のブラックホール。これを持ちあげて投げ……持ちあげて……持ちあがらないです。



「………2トンの重量を持ち上げるなんて無理ですよね」



 ―――――生身では、ですが。


 全力で身体強化。このまま持ちあげると、接地面積から考えるに地面に両足が突き刺さる可能性があるので、自身を中心に空間を『掌握』し、身体固定。


 当然、身体が動かなくなるので小石(巨石)を持ちあげるのもまた、掌握魔法。



「……言うは易しですが、流石は強力な魔力力場を持つ(多分)だけあって、掌握対象を近付けるだけで制御が辛いですね……」



 それもまた、魔法無効化などでは無く、魔力力場であるという説が強くなる要因ですね。周辺へ干渉しているのですから。


 ……そして、持ちあげた小石を、ゴーレムの頭上まで動かして、落とす。


 落下する小石は、ゴーレムの身体に近付けば近付く程に魔力干渉が強まるのか、何重にも掛けた圧縮魔法が解け、徐々に元のサイズへと戻ります……が、完全に元に戻る前に、元のサイズの半分程にまで戻りつつ。

 ゴーレムの頭上(?)を狙ったものの若干逸れ、淵に当たり……脚の一本を撒き込みながら本体部を大きく抉りました。


 ……ちゃんと、魔法効果を維持したまま接触しましたね。



「―――つまり、魔法無効化では無く、魔力力場である……と」



 ならば、容赦無く倒して大丈夫ですね。





 まず、狙うのは頭頂部(?)から生える腕……腕? 触手? まあ、腕と言う事で。

 敵の攻撃手段を奪う事が、戦術の基本。


 ……見るからにあのゴーレム、本体を高所に置いて安全を確保し、多脚化により高い安定性を確保し、360度全方位に振りまわす事が可能な腕で攻撃する、といった感じですし。

 腕さえ破壊してしまえば、残る攻撃手段は脚部による蹴りや踏みつけのみ。それも安定性確保の為、一度に攻撃に使えるのは1,2本でしょう。



 そうと決まれば、身体強化だけを残して空間掌握を解除。

 強化による強靭な脚力を用いた踏み込みで加速、大地を抉るような爆砕音を後方に残して急接近しつつ、途中に転がっていた大岩を足場に跳躍。


 それでも明らかに、私という砲弾が描く放物線はゴーレムの頭上に到達せず、落下する。

 なので、放物線の頂点へ到達し失速する前に、ゴーレムの遥か上空、その長い腕が絶対に届かない程高い位置に広がる『大気』を掴み、懸垂の要領で『不可視の腕』を縮める。

 跳躍による運動エネルギーを持っていた砲弾(私)は『懸垂』による加速を以って、ゴーレムの上空へ。


 目標であるゴーレムを確りと見据え、直上の位置で空間掌握。急ブレーキを行う事で身体に掛かっていた運動エネルギーを放出。

 完全停止してから、腰の黒剣を抜き放ち―――大気を引き裂きながら落下。



「やはり、真上にも腕は向ける事が出来ますか……ですが、無意味です!」



 迎撃反応なのか、こちらへと向けられた腕。

 しかし、強引に軌道をずらし、突き出される腕を回避。

 ゴーレムの腕半分程まで潜りこんだら、ブレーキ代わりに腕へと剣を突き立てて減速。


―――そして、ゴーレムの頭上に着地、ゴツゴツとした足場を踏みしめ、剣を横薙ぎに振るう。



「魔力装填・フルドライヴ――――っせぁぁぁっ!!」



 一応素材が岩石である為、斬り損ねる可能性を考慮して刃が黒く輝く程に魔力を込められた黒剣は、岩石で構成されたゴーレムの一本腕を紙か何かの様に切り裂いた。

 切断された岩の腕は、大地へと落下して行き、ズズンと大きな音を立てて横たわった。再結合を防ぐ為、切断と同時にフィリアが殴り飛ばしていたので結構遠くに転がる。

 数十メートルはあったゴーレムの腕は、たった一息の攻防の内に斬り捨てられ。残っているのは数十センチ程度の長さだけになった。明らかに断面の直径の方が腕の長さよりも長い。



「攻撃手段の削減完了……とは云え、核が何所にあるのやら」



 現在フィリアが立っているゴーレムの本体部は、直径8メートル程の球体……に近い形をした、石塊である。

 正直大きすぎて、どこに核(本体)が居るのかさっぱり解らなかった―――というか、刀身の長さからして届かない。黒菜が居れば『黒一閃』で消し飛ばす事も出来ただろうが、居ないものは仕方ない。


 フィリアが悩む間、岩石故に痛覚が無いのか……それとも単に腕を失った事に気づいていないのか。

 短くなった腕をモゾモゾと動かし、頭上のフィリアを払おうとする。当然、届くハズが無い。


 ……が、全く頭上のフィリアに動きが無く。ようやく腕が無い事に気付いたゴーレムは暴れ出した。

 腕で払えないのなら、暴れて落とせば良い。実に合理的である。

 1本を本体ごと抉られ、残り5本となった足は頭上まで流石に届かないらしい。


 

 暴れられてはゴーレムの上に居る事も安全では無い。

 いや、腕が無いのだから安全かもしれないが、攻撃は不可能だ。そう判断したフィリアは、間髪いれずに飛び降りた。



「腕の次は、脚を破壊ですね―――ッ!」



 落下するフィリアに向けて、ゴーレムは脚の一本を振り上げる。膨大な質量をもつ岩石で叩き殺すつもりなのだろう。

 それを察知したフィリアは素早く黒剣を盾として構え、刀身に走る赤いラインへと魔力を注ぎ込む。同時に黒剣内部に仕込まれた赤魔鉱石が光を放ち、剣に絶対破壊不可の効果を付与する――――



「え……―――ッ?!」



 ―――ハズだった。

 岩石の脚による攻撃の盾にされた刀身は赤く輝いていたものの、フィリアの知る光に比べてあまりにも弱々しい。

 絶対破壊不可の効果も発動せず……その上、衝撃吸収やダメージ軽減の効果の効果も薄かった。


 想定外の衝撃を受けたフィリアは大きく吹き飛ばされ、黒剣を手から弾き飛ばされた。

 黒剣は鋼鉄も空気も変わらない力で斬り裂く事が出来るし、赤魔鉱石に魔力を流せば衝撃もダメージも殆ど無効化できる……だからこそ、フィリアは剣を握りしめていない。素早く振るう事を重視し、柄に手を添える様に、軽く掴んでいるだけだった。


 お陰で手に殆ど衝撃が伝わらなかったので手首を痛めたりはしなかった……が、黒剣を弾き飛ばされる、という事態にフィリアは思考が停止していた。

 


「え、うそ………魔力力場で干渉された……?」



 在り得ない、在り得ない。では、眼の前の光景は一体、何?

 黒剣に仕込まれた赤魔鉱石……それは胸元に留められたブローチ程では無いが、世界中探しても恐らく見つけられないであろう純度を誇っている。

 何せ、黒菜が赤璃に協力を得て作ったモノだ。管理者のリソースを用いずに存在できる最高水準を目指して作られたソレは事実、マグナの馬鹿げた魔力出力にすら耐える事が出来た。


 だと言うのに今、黒剣はフィリアの手から弾かれ、くるくると中を舞い、自身の身体は吹き飛ばされ、地面に叩き付けられていた。

 大地に背中を叩かれ、肺の空気が抜かれる。



「―――ッ! っが、げほっ……ドレスの衝撃無効化も、機能して……ない?」



 本来ならば、ドレスの上からダメージを受けたとしてもフィリア自身が感じる衝撃は極僅かでしか無い。

 布地を広げて全身を覆えば、設定上では大気圏突入すら可能なのだ。耐熱、耐火、耐寒、耐水、耐電、耐腐食、耐衝、耐魔、何でも御座れの超万能防護服は伊達では無い。

 ……しかし実際には弱まっているとは云え衝撃を受け、全身を貫く様に痺れが拡がり、内臓がやられたかの様に呼吸すら覚束無い。


 そもそも、フィリアは食事等の行為を必要とせず、代謝も存在しない。

 ならば、当然の様に呼吸すら必要では無いし、言ってしまえば内臓など存在しない。体温や脈など、生命活動を示すモノが『そういうもの』として存在するだけだ。勿論、心臓も無い。

 腹を裂けば存在するだろうが、それは裂く瞬間に構築されたモノだ。シュレディンガー的な感覚で、フィリアの内臓は観測するその瞬間まで、存在しない。

 故に、現時点で呼吸を必要とするハズが無かった。肺は露出していない。


 勿論、プレイヤーキャラクタとNPCには内臓が存在する、『存在する』という前提で設定されているからだ。走れば脈拍が加速するし、呼吸を止めれば息苦しい。

 だが、フィリアにそんなモノは無い、活動する上で邪魔だ。いくら走ろうとも脈拍は固定だし、そもそも呼吸する必要が無い。呼吸や瞬きなど、生物的な行動は『ヒト』としての外観として、一応行っているだけ―――だけだった。


 理解不能な自体を前に、フィリアは心身共に硬直していた。以前、アルマが思考ループに陥った状態に近い。

 現状を考察し、原因を走査し、解らなければ『白埜ネットワーク』へと検索を掛ける。


 しかし、ネットワークには繋がらなかった。

 精確には、返答が無い。



「―――え、あ………何故?」



 ネットワークに接続しようとしたソフトウェアが、接続先から返答が返ってこなかった場合はどうなるか。

 当然、設定されたタイムアウトまで待機ビジーを続ける。

 フィリアの設定タイムアウト値は現実時間で1秒。明らかに短いが、そもそもフィリアは白埜ネットワークの中に存在する。内部からのアクセスなのだから短くて当然だった。回線速度を考慮しなくて良い。

 そして再接続を繰り返す。フィリアの設定では再接続リコールは5回。

 しかしここ、EWの中では時間間隔が24倍となる。つまり、24×5で120秒。

 それだけの時間があれば、割と何でも出来るのである。止まっていたフィリアは、外部からの衝撃で意識を取り戻した。強引に戻された。



「ぐ……これ、は………ゴーレムの、腕? 何故動いて……」



 それは、先程フィリアが斬り飛ばしたゴーレムの腕だった。

 ゴツゴツとした岩肌を持ち、フィリアを締め上げる様に撒き付くソレは、もはや腕と言うよりも、岩石の大蛇となっていた。


 基礎フレームが人の頭より2回り程も大きな岩石だからか、締め上げるというよりは『拘束』という形に近い。

 平時ならば余裕で吹き飛ばせるだろう拘束だが、それでも何故か力が出ない現状のフィリアでは手も足も出なかった。

 ただ、足音を響かせてこちらへと歩いてくるゴーレムを見る事しか出来ない。



「離し、なさ……ッ! く、如何して魔法が使えないのですか。まさか、他者の内側にまで干渉する程の魔力力場でも持つというのですか……?」



 呼吸が落ち着いてきたが、身動きは取れない。

 拘束云々以前に、何故か魔法が使えなかった。ドレスは未だに薄桃色に染まっている以上、魔力は使えているハズ。魔力切れならばドレスは真っ白に戻ってしまうし、そもそもフィリアに魔力というステータスが存在しない。仮にもゲームマスター側、無制限に行使可能だ。


 結局、フィリアはゴーレムの腕の中で身を捩りながら、ゴーレムを睨み付ける事しかできなかった。


 割と諦めつつ、どうしようかと思考する。

 とりあえず本体から離れておきながら動いている、身体を拘束しているゴーレムを調べようと視界を下げた時、自身とゴーレムの間に黒く光るモノを発見した。

 弾き飛ばされ、転がっている黒剣だ。


 手から離れ、魔力供給もされて居ない状態で大地へ落ちたからか、刀身の所々には罅が見える。

 魔力を流せば圧倒的な強度を誇る魔鉱石も、魔力が無ければ文字通り鉱石程度の強度しかない。むしろ折れていない事が驚きだ。



「―――――あ」



 ―――― アレが、黒剣さえあれば、この拘束を断ち切り、事態の改善を狙えるのに。


 そう願うフィリアの眼の前で、ゴーレムの脚が振り降ろされ。

 その足音が大きすぎて聞こえなかったけど。


 黒剣は、きっと砕かれた。


 フィリアさん的には、死んでも城まで戻るだけなので

「またここまで来るの面倒だなぁ、それにしても何で魔法使えないんだろ。ふっしぎー!」

 という感情が多いという。後書でシリアスブレイク!!


 ~ 例によって謎解説 ~


『スフィア』

 精神魔法の発動ベース。

 魔力を練り上げ、球状の魔力結晶を精製する。

 この中に術式を詰め込み投擲、任意のタイミングでスフィアに残る魔力で術式を起動させる。

 精神魔法なのでプレイヤーは使用する事が出来ない。似た様な事は出来る。


『空間掌握』

 ご存じ便利魔法、掌握魔法の応用の1つ。

 周囲の空間を丸ごと固定し、何はともあれ物理的に動かなくする。

 簡単に行ってしまうと、水に浮いた状態で重いモノを持つと沈んでしまうし、押されたら動いてしまう。だったら、周辺の水ごと自分を凍らせれば動かないじゃん?という無茶理論。

 空間が固定されている以上、矢などが飛んできたとしても「かこーん」と弾かれる。しかし、空気も動かない為に呼吸出来ないという欠点があり、その上で広範囲掌握には膨大な時間が掛かる。フィリアさんはチートだからこそ短時間で発動可能。

 また、当然の様に『掌握』は魔力を流し込んで行っている為、他者が近付くと魔力力場が干渉して解除されて行く。つまり他人の顔面を掌握して窒息させる事は出来ない。



 ゴーレムさんについてはまた次回。

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