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俺と私と”魔法の世界”  作者: ながも~
セアルクニーグ皇国編
40/52

Dive_16_BGP02 俺が、私が、僕が……村人だ!!

 PV91,000、UA14,000突破しましたー

 御愛読、ありがとうございます!



 前回に引き続き、裏側のお話。

 どちらかと言うと、過去話(2~3日前)ですが。


 今回はノリと勢いで書いてるので、結構無茶苦茶です。

 ……いや、いつもの事か。

 村長の悩み、その内容はフィリアへの対処だが。

 原因は何か……と考えてみれば、それは数日前のオークによる村への襲撃がきっかけだ。


 近隣の山に住み着くオークは、不定期に村を襲撃する。

 理由は簡単だ、群れが分かれた際に新しく巣を探しているオーク達が、稀に山の麓である村まで来てしまうだけである。

 

 ただ、村もただ襲われるだけではない。

 このプリムラ村は、元は首都と北の街を繋ぐ道の中間に作られた『商人や通行人が休む為の砦(休憩所)』だ。その頃の名残で、入口は北と南の2ヶ所だけ。その他は全て強固な防壁で囲われている。

 そこで村人は自警団を組織し、村の入り口を防衛しているのである。

 

 そして、その自警団も只者ではない。

 毎日朝早くから得物を振り回し、汗を流しては成果を確認、暫しの休憩で食事を済ませ、再び得物を振り回す……そんな日々を送るツワモノ共である。


 ……こう言うと強そうに聞こえるが、実際は農夫。鍬を大地に突き立てるのがお仕事だ。

 だが、それでも日々の仕事で培われた両腕、そして体力は強靭の一言に尽きる。

 魔法で多少強化して殴れば、その辺の木ならヘシ折れるのだ。こいつら人間じゃねえ……絶対に怪我するのでやらないが。

 

 まぁつまり、何だかんだで強い村人達は、何気に1人でオークの群れを相手できた。しかも警備は北と南、両方に4人ずつ。見張り1人と戦力3人だ。余裕である。実に村は平和だった。

 それこそ、オークが来る度に誰が一番多く倒せるか競う程に。

 

 ――― オークだけに、多く。なんt……





 

 その日の夜、北側の物見櫓に居た警備担当者はオークの群れを確認、櫓に設置されていた釣鐘を打ち鳴らした。

 ガランガランと、襲撃を知らせる音が響いた事で村人達に緊張が走る……なんて事は無かった。「あぁ、オークか」程度の反応である。月に2~3回程来るのだ、誰だって慣れる。

 

 鐘の音に対して動く者はたったの3人。物見櫓の隣に建てられた小さな建物、『プリムラ村北口警備詰所』と書かれた看板を下げた、その名の通りの施設に居た男達である。

 

 この詰所はシフト制で、成人した村人が入っている。より正確には、村の自警団に所属する人々だ。主に男だが、時々女も居たりする。

 シフトが入っている時は、一部の例外はあるが仕事よりこちらを優先し、詰所に入っていなければならない。まぁ、大なり小なり精神魔法の心得がある村人ばかりなので、仕事は素早く終わる。これが両立できてこそ、プリムラ村では一人前と言って良いだろう。

 

 24時間、1人は物見櫓の上で警戒、3人は詰所の中で出番まで英気を養う、といった常時4人で警戒体制で事に当たっている。警戒してるの1人じゃないか?と思うかもしれないが、実際その通りである。だが気にしてはいけないのだ。

 ……まぁ、ちゃんと順番に休んでいるので、特に不満等は挙がっていないから良いのだろう。

 

 ちなみにこの詰所、室温と湿度が魔法具によって一定に保たれており、一年通して快適に過ごせるように作られている。

 それ所か、食糧保存用に地下室まで作られている。もちろん魔法具で室温を調節されており、その温度は涼しいというよりも寒いと言える程であった。まぁ言ってしまえば冷蔵庫である。

 この4つの室内環境調整魔法具は、オークから手に入る低純度で小さい紫魔鉱石でも十分動くように作られた最高級品であり、まだ砦だった頃に北街の魔術師が持ち込んだ一品である。

 

 そんな詰所である。ヘタすると家よりも快適かもしれない、と考える村人は少なく無い。と言うか、自警団メンバーは地下室に各自の名前を書いた木箱を置いていた。

 つまり「この箱の中の物は俺のだから、勝手に食ったりするなよ!」という事である。詰所で控えている間は、各自の木箱から取り出した干し肉や商人から買った首都や北街のお菓子をツマミに、ジュース(アルコールを飛ばしたワイン)を飲むのだ。

 この詰所に居る間の制限はアルコール摂取禁止と、散かし厳禁程度なので、皆好き勝手やっている。この詰所に居るのが嫌な村人は、無類のアルコール好きだけだろう。

 ただし、現在の村人達の流行は「寝る前の一杯が最高」なので、皆大好き詰所といった具合である。詰所万歳!

 


 ……かなり話が逸れた気がする。

 

 話を戻そう。

 詰所から出てきた3人は、各々の得物を確認し、櫓の上に居る男へと確認を取るために視線を向ける。

 この櫓の上の男、名をクー(本名:クォーティ)といい、雑貨屋を営んでいる。月に1度くらいの間隔で首都に赴き、村で需要の高そうな代物を仕入れてくるのである。自他共に認める程の目利きで、彼は今まで赤字になった事は無い。本人曰く「俺は目が良いんだ」との事で、今日もそんな事を言いながら櫓に登って行ったのだが……目利き能力と、視力が関係あるのかは謎である。

 クーは魔法で光の珠が創り出すと、北東の方向へと投げ飛ばした。どうやらその方向から群れが来ているらしい。

 指し示す方向へと視線を向けたリーダーらしき男は、なるほど解った、といった自信を感じさせる表情で頷き、北口へと向かった。

 ちなみに、頷いたのはただの恰好付けであり、オークが居たのも防壁の向こう側なので、ぶっちゃけ何も見えて無いという事をココに記しておく。

 

 

 

 北口に着いた3人は、顔を見合わせて一度頷く。これまた意味など無いが、カッコ良いからである。

 意味有り気な事を行い、「これから村の為に戦うぞ!」という雰囲気を出す。するとなんだかやる気が出てくるのだ……実に単純な男共である。

 ちょっと前の流行は、無駄に魔法でエフェクトを演出した、ヒーローっぽい感じだった。読者の皆には戦隊モノって言った方が良いかな?プリムラ村中央広場で僕と握手!!

 

 

 


「じゃあ、最初は俺から行かせて貰うぜ……村一番の斧捌きを見せてやる!」



 そう言って、先程のリーダーらしき男が斧を担いで前に飛び出る。

 そのままオーク群の先頭目掛けて、走った勢いを乗せて斧を叩きこみ、まとめて吹き飛ばした。


 この男、名をリグ(本名:リグナトル)といい、自他共に認める村一番の木こりである。彼が振る斧の前では、あの『屋久島の杉の木』程の大木すらあっさり切り倒されてしまう程だ。

 伐採用の斧でバッサバッサと大木を伐採できる男である。その太い両手で握られた戦闘用斧バトルアックスを振り回せば、仮にオークが防御をしていたとしても、たったの一撃で防御を崩し、そのまま破砕……あるいは吹き飛ばす事が可能である。



「………確かに、貴様の斧捌きは村の中でも最高だ。しかし覚えておけ、斧捌きでは貴様が最高だとしても、村一番の鍬捌きの座はこの私だということを……!!」



 その後ろから声を掛けたのは、1メートル程の棒の先端に刃をつけた武器、短柄斧鉾ショートポールアクスを担ぐ男だった。

 

 この男、名をソラ(本名:ソラーヌム)といい、自他共に認める村一番の芋農家である。鍬を振り回し、何故か芋を傷つける事なく掘りだす事が出来る技量を持つ。

 もちろん耕す事も得意であり、何気にトラクターよりも早い。そんな男がその鍬捌きを応用した鋒捌きは、あたかもオークの防御を摺り抜けるように胴体へと吸い込まれていき、攻撃も防御もする間もなく倒してしまう。

 


「ハッ、言うじゃねぇか。確かにテメェの鍬捌きは他の奴には真似できねぇ、ってのは認めてやるよ! ……ところで、さっきから黙ってるが、どうしたんだトゥーリ」


「ん?あぁ、ごめんごめん。明日は待ちに待った麦の収穫でさ? 僕、今日の警備終わったら明日に備えてしっかり寝るんだ、もう既に明日使う鎌は研いであったりして」



 最後まで考え事をしていたのは、その手に片刃の歩兵剣ショートソードを持つ男だった。

 

 この男、名をトゥーリ(愛称:トゥリティキ)といい、自他共に認める村一番の小麦農家である。中腰で半日もの間鎌を振り続ける事ができる脅威のスタミナを持つ。

 さらに叩きつけるのではなく、刃を対象に擦らせるようにする切断方法はその剣技においても何故か発揮され、そのスタミナも合わさって刃毀れさせずに長時間戦う事ができのである。



「そういやそんな時期か……トゥーリの家のパンは格別だよな。毎日食ってるが、未だに飽きが来ねェ」


「確かに、あのパンは世界一と言っても良いだろう。まあ私の芋と、私の嫁が作る芋料理も世界一だがな! ……そうだ、今度には先日収穫した芋を持っていくとしよう。彼女ならば芋を使った旨いパンを生み出すやもしれん」


「あー、うん。じゃあ明日の夜にでも細かいトコ決めようか……と言っても、いつものように村全員で持ち寄って宴会になるんだろうけど」



 ここまで会話をしながら、既に3人はオークの大半を倒していた。

 正面から向かってくるオークの殆どを、リグが斧で纏めて切り潰し、その攻撃範囲から逃れた分を、左右に分かれたソラとトゥーリが手に持った武器で時に倒し、時にリグが振る斧の軌跡へと蹴り飛ばしていた。

 


「ハハッ、違ェ無ぇ!! だったら俺も伐採したての新鮮な薪木を持って行く……ッかなァ!」


「新鮮な薪木って……それじゃちゃんと焼けないよ、パンを燻製にする気?」


「おっと、これは失敬! ハハハハハ!」


「ふむ、まぁその話はまた後で。とりあえずオークは撃退した、詰所へ戻ろうではないか」


「そうだね」



 戦闘開始から5分と掛からずオークを殲滅した3人は、ソラの声を合図に詰所へと戻り始める。

 オークの紫魔鉱石はAが最後の1匹を倒している間に回収し終えていた。ソラはその鉾で、まるでオークの死骸を『耕す』ように突き刺して体内から紫魔鉱石を掘り出し、トゥーリは中腰で走り回りながら断面から露出しているモノを摘出していた。まさに農家スキルの有効活用(無駄遣い)である。


 最後に倒したオークからAが紫魔鉱石を取り出し、帰ろうと思った矢先、ガランガランと再び警報の鐘が鳴った。

 3人が櫓の上へ視線を向けると、丁度光の珠が北東へと飛んで行くところだった。

 飛んでいく光に照らされる森には、確かにいくつか蠢く影が確認できた。

 


「また来たのか? 一晩に何度も来るなど、滅多に無い事だが」


「稼ぎ時だね、これだけあれば今度貿易商が来た時に良いモノ沢山買えるよ」



 ご存じ……かどうかは知らないが、EWでは紫魔鉱石は通貨として用いられている。

 都市や魔法具のエネルギー源として、ほぼ一定の需要があり、魔物を倒せば手に入るので、魔狩人ハンターという職業が成り立つからだ。

 ハンターとは、冒険者の中でも森や洞窟へ積極的に挑戦し、魔物を狩る事を仕事にしている……と、本人が自称している場合の職業である。つまり大勢のプレイヤーの事だ。

 彼らが好き勝手に魔物を狩ってくれる為、一般人は割と安心して出歩く事が出来るし、貿易商という仕事が成り立つのも彼らのお陰である。

 

 ただし、セアルクニーグ皇国にはまだプレイヤーが居ない為、残念ながらエンカウント率が極めて高い。

 この大陸での安全は、皇国軍兵士の皆さんのお陰である。本当にありがとうございます。

 

 

 ……また話が逸れた。余談が好きな作者なのでどうしようもない。

 

 違和感に最初に気付いたのは、最も前に出ていたリグだった。



「……オイオイ、中々の粒揃いじゃねぇか。こりゃ狩り甲斐があるってモンだぜ?」


「む?貴様何を言って―――ッ!」


「うわぁ……これは随分稼げそうだね?」



 普段よりも警戒するリグが見る方向……オークの群れへと視線を向けて、ようやく2人も気づいた。

 そう、オークの輪郭が先程よりも解り辛い。

 ……普通のオークよりも、”色が黒っぽい”のだ。

 夜の闇に輪郭が溶け込んでいる。通常のオークの緑色の肌を暗くしたような、茶褐色の肌を持つオーク。ハイオークだった。

 

 ハイオークは今までも来ていた。群れには必ず1匹ハイオークかオークロードが居るし、先程殲滅した群れにもハイオークが1匹いた。

 しかし、目前の群れのように、『群れの殆どがハイオーク』という事は初めてだった。前例が無い為に、3人に緊張が走る。

 

 それでも、3人は慌てなかった。どうやってこの群れを殲滅するかを冷静に考える。それも素早くだ、敵は目前……早くしないと手遅れになる。プリムラ住民はうろたえない!

 思考を走らせる中、最も最初に行動を起こしたのは、やはりというかリグだった。

 


「クー、応援を呼べェ!! 茶色いゴブリン共を狩る簡単なお仕事とでも言えば何人か来る!」


「解った! 集まった半分は南口行きか?!」


「オゥ、解ってるじゃねぇか、頼んだぞ!!」


「ハッ、頼まれたよ!」



 2人は10秒にも満たない間でやり取りを交わしてクーは村へ駆け出し、リグは再び敵へと向き直る。

 

 

「オイ、テメェら……得物の確認と準備運動は済んだか?」



 待っていた2人に声を掛ける。

 


「あぁ、特に問題は無い。それに準備運動なら先程しただろう?」


「うん、こっちも大丈夫。いやー、今日は涼しくて運動日和だ」



 ニヤリ、と好戦的な笑みを浮かべて返事をする2人。

 その身体には疲れなど見当たらなかった。実際、先程のオーク戦など準備運動のようなモノだ。普段の仕事の方が数倍疲れる。


 返事を聞きながら、リグも自らの得物を確認、特に問題は無い。

 オークの群れは、既に目前にまで迫っていた。いつもよりも進行が早い。どうやら通常のオークが居ない分、ハイオークの強靭な肉体を生かして、速く歩くことができるようだ。

 


「そんなにお急ぎで何処行くんですかァー? ちょっとオッサン達に付き合えよ亜人共ォ!!」


「貴様と一緒にするな、私はオジサマだ!!」


「えー、じゃあ僕はお兄さんでヨロシク?」


「「お兄さんって歳じゃ無いだろ!!」」


「あははははは」



 無駄口を叩きながらも、戦意を高める。

 苦難に立ち向かう時には、あえて冗談を言ったりした方がカッコ良いのだ。



 ――― そして、3人の男と、ハイオーク達の戦いが幕を上げる。




~ かんたん かいせつ こうざ ~


  ■ 登場人物 ■

●リグ(リグナトル)

 村一番の木こり。戦闘時にも斧を使う。仕事と戦闘の斧はちゃんと別物。

 普段の仕事でも黒魔鉱石や身体強化魔法を使っている為、恐らく村人の中で最もソレの扱いに長けている人物。

 「周りの森の伐採は代々俺の先祖がやってきたんだ。村に移住するってェなら一声掛けな、良い材木紹介してやんよ」


●ソラ(ソラーヌム)

 村一番の芋農家。戦闘時には鉾で敵を耕し殺す。

 異様に器用で、刃先を狙った箇所に突き立てたり、肉だけを狙って骨を避けて攻撃する事が得意。

 「私の芋は甘味が強いぞ。他にも、味が染みやすく、荷崩れし難いモノも作っている。一籠買っていくと良い」


●トゥーリ(トゥリティキ)

 村一番の麦農家。戦闘時には歩兵剣を使う。

 トゥーリの使う剣は刃が徹底的に研がれており、叩きつけると一撃で刃毀れする。

 「妻がパン屋を開いてて、色々作ってるんだ。今度食べに来てよ」


●クー(クォーティ)

 村一番の目利き(貿易商)。戦闘ではあまり役に立たないが、監視は得意。

 兎に角目聡い。そして我慢強い。しかし店番は家族にまかせっきり。

 「俺は違いの解る男なんだ。だから良い品物を見つけられるし、森の中で少し違う所があれば気付くってことさ」



  ■ 用語 ■

『歩兵剣』

 ショートソードの事。徒歩の兵士が持つ剣を指す。

 今回、トゥーリが持っていた剣は刃渡り60センチ程度。

 ちなみに、どんなに長くてもロングソードにはならない。


『亜人』

 ヒト以外で、人型のモノを指す。つまり人型モンスターの事。

 EWではエルフだろうがドワーフだろうがヒトの範囲内であり、亜人とは呼ばない。呼んだら殴られても仕方ない。

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