Dive_16_BGP01 村長の苦悩
BGP:Back-Ground Process
⇒ 裏で動いてる物事
今回は、ただ老人がウンウン唸って「どーしよー」って悩んでるだけの話です。
…………誰得?!
本来なら、次の話も含めて丸ごと1話にする予定だったのですが、例によって余談祭りが開催されたので延びました。
おのれ余談。
「こんな事、誰にも予想出来ぬだろう……どうすれば良いんじゃ……」
フィリア達が洞窟に入る少し前。
村で一人、机に置かれた一枚の紙を前に、焦る老人がいた。
一行に村で依頼をした人物である。机に置かれた紙、それは彼とフィリアの間に交わされた依頼の契約書、その控えである。
何を隠そう、依頼者である彼は………なんとプリムラ村の村長であった。
――― え、知ってた?
――― コレは失敬、判決死刑。なんちゃt………
この村長、村の事を第一に考える良い人なのだが、村の為ならば何処までも冷酷になれる人物だった。
具体的に言うと、村人9人を生かす為に1人を殺したり。村人10人を生かす為に外来人を殺したりである。
もちろん、全員生きられるならその方法を使うし、その手段を使った場合の後々の影響で村に被害が出るなら使わない。
兎に角、最終的な村の損失が少なくなる方法を取る村長だった。
そんな彼である。
今回の依頼も村の為になると思ってやったのだ。
丁度良い感じに通りかかった、世間というモノを知らなそうな、護衛を連れたお嬢様に困難な依頼を吹っ掛けたのだ。案の定、そのお嬢様はあっさりと依頼を受けてくれた。彼女が依頼を完遂してくれるか、あるいは依頼破棄料が村に落ちるという考えである。
この世は契約社会。クエストスクロールは絶対であり、引き受けた以上、引き受けた者としての責任が発生する。ちなみに、依頼側はクエストスクロールに嘘を書くことは出来ない為、「低難度のクエストだと思ったら高難度だったでござる」という事は無い……まぁ、依頼者が知らない事は書いて無いので、想定外の出来事というモノも幾らか存在するが。
兎に角、依頼者は一切嘘を付けないので、どんなに内容が酷かろうが受けた人が悪いのである。文句はあるかもしれないが、受けたお前が悪い、で済む世界だ。そもそも予測外の事態がよく起こる冒険において、依頼内容と現場状況が異なる程度、ぶっちゃけ良くあるのだ。
だが、今回は依頼相手が悪かった。最悪である。村長は過去の自分を殴りたい程に後悔していた。
いくら知らなかったとは云え、自分の国の偉い人に困難依頼を吹っ掛けてしまったのである。ちなみに、フィリアレーギスは現代日本で言うと天皇陛下のような存在である。直接政治には関わっていないが、とても偉い。
フィリアレーギス皇女は、大陸南東から来る魔物から護る為、首都(最前線)で戦う剣姫である。つまり首都から離れる事など無いハズなのだ。
……だと言うのに、何故か首都から離れ、このプリムラ村まで来ていた。ぶっちゃけ、何で居るの?って感じである。
まぁ、たかが村長程度では考えられない様な、何か大事な御用事があったに違いない。そう思い、余計に絶望するのであった。
己の失態で、そろそろ『顔が青くなる』というレベルを越え、心臓が止まりそうになっている村長だったが、皇女様は国民の事を第一に考えて行動しているという話を思い出した。その話が本当ならば、命までは取られないだろう。そう彼は結論付けて精神を沈めた……人はソレを諦めと言うだろうが。
「ハァ……人生、儘ならん物じゃの……」
村長の零した声に、返事をする者は居なかった。