Dive_16 無限ループって怖いですよね
サブタイトルも「○○と××」という形式が思いつかなくなったので辞めました。
むしろなぜそんな形式にしたし……
お久しぶり……いえ、はじめましてですかね?
一人称視点、フィリアです。
ラーヴァスライムを黒菜さんが踏み潰した後、私達はアルマが動ける程度に回復するのを待ってから洞窟の奥へと足を進めました。
あ、ちなみに黒菜さんの靴裏は無傷でしたよ。
流石は本物の無敵ですよね、私のように死んでも復活する不死と違い、一切ダメージが通ってません。
そういえば黒菜さんや白埜さんの服って自分の物理リソース(身体)から作ってるんですよね………実は裸って事なんでしょうか。まぁ、言ったら私が身に着けているこのドレスも構成解除されてしまいそうなので言いませんけど。
……話が脱線しましたね。
肝心の洞窟なのですが、あのスライムの奥には何もありませんでした。
ちょっと進んで行き止まり。
宝箱なんてモノも無く……いや、自然洞窟の中に人工物がある訳ないじゃないですか。何であると思ったんでしょう、”彼”の影響でしょうか?
情報もアイテムも何も手に入らず、仕方無く麓の村に戻る事にしたのです。
……そういえばマグナは嬉々として黒菜さんが踏んで少し罅割れたウーズ核を拾ってましたね。ウーズ核の中には紫魔鉱石がありますし、売るなり材料にするなりするのでしょう。
また話が脱線しました。
いや、現実逃避もそろそろ止めますか。
今ちょっと、困った事態になってまして………
「申し訳御座いませんでした!!」
「顔を上げてください」
「そんな、恐れ多い!! 誠に申し訳御座いませんでした!!」
あははは……あのマグナですら顔が若干引き攣ってますよ……?
何でしたっけ……確か、村の宿の部屋で情報整理しようとしてたんですよね。
そうしたら村長さんが飛びこんで来て、この通り謝罪祭が開催されて……どうやら、私が『剣護の姫』だと知らず、騙すように無理難題なクエストを受けさせた事を謝罪している様なのですが。
あぁ、そういえばあのクエスト受けた時は彼でしたね。
彼は初ログインだった様ですから、名前登録もまだでしょうし……きっとクエストロールに確りと名前が出なかったのかもしれません。
それで、私に切り替わってクエストロールに名前が表示されたりでもしたのでしょう。
「隊長、こりゃ聞こえて無いぜ?いっそ命令した方が早いんじゃねえか」
「命令使いたく無いんですけどね……」
マグナが言う『命令』というのは単純に命令口調で話す、という事では無いのです。
仮にもNPC制御用の上位個体として存在する『フィリアレーギス』の命令は、少なくともセアルクニーグ皇国の住人にとって極めて強い効果を発揮します。
昔は自意識といったモノが殆ど皆無でしたから、使用に何の躊躇いもありませんでしたが……最近のLI型NPCは、皆感情豊かですからね。もはや制御というよりも洗脳といった方が良いです。
「ふむ、隊長は命令使いたくないっと……じゃぁこれで何とかなるか?」
「本当に!本当に申し訳ごばぁっ!」
マグナが村長さんを殴りました。
え、えぇぇぇー……何してるんですかマグナ。
何ですかその顔、やってやったぜ!みたいな顔。駄目ですからね?いやもうやっちゃったので駄目も何も無いのですが。
………あー、まぁ。良いか。
村長さんも殴られて目が覚めた(?)みたいですし。というかピンピンしてますね、流石はセアルクニーグの民。
「―――今回の一件については、今のマグナスの一発で不問とします。よって、これ以上の謝罪は不要です」
「あ、ありがとうございます!」
「それと、今回の依頼ですが……オークの巣窟とされていた洞窟奥でラーヴァスライムを発見、これを撃退しました。恐らくですがオーク達は追い出され、新しい住処を探して村まで降りてきたのでしょう」
「なんと……」
「また、洞窟までの道でオークの集団に遭遇しました。ただ不自然な事にほぼ全てがオークロードという異常事態で――その集団は殲滅したので安心して下さい。恐らく今回の事件の原因は取り除けたとは思いますが、確認が取れない以上、長期に渡り経過を見る必要があります。ただ、私達は遠征中である為、この村に駐屯する事ができません。ですので、皇国から必要分の軍を派遣しようと考えています。勿論軍の活動費は国が持ちますので、村の負担は殆ど無いハズです。強いて言うなら、一時的に流通量が多くなるでしょうから、人の出入りが激しくなる事が挙げられますが………ふむ、このくらいでしょうか。何か問題や質問などはありますか?」
「あ、いえ……問題ありません、ありがとうございます」
「解りました、では皇国議会へ書簡を飛ばしておきましょう……マグナス、頼みます」
「ハッ! 了解いたしました!」
「頼みましたよ? では、この話はココまでという事で……私は隣部屋で休んでいるアルマートの様子を見てきますので、村長さんは議会へ提出する書類の内容を確認してください。後はそこのマグナスがやってくれますので」
「あ、ありがとうございました!!」
「いえいえ、それでは」
……よし、何とか面倒事から逃げられました。
マグナが凄い嫌そうな顔してましたが、普段テキトーにやってるのですし、こんな時くらいは頑張ってくれても良いですよね。
そもそもこういった書類仕事などは私達3人の中ではマグナが一番向いてすし。過去の事例をそのまま引用して、速効で内容を決める辺りとか。
私だとより良いモノが無いか考え始めて時間が掛かりますし、アルマに至っては膨大な事例を比較して、一番良いモノを模索し始めますからね。
それにしても、何でオークが何故か完全成長してたのでしょうか。今回はイレギュラーな事態が多すぎて困ります。
まぁ全部魔物関連ですから、魔界へ着いたら紫苑さんに訊くとしましょう。
~いつもの謎解説~
『”彼”』
フィリアレーギスから見た場合の、自分に混ざっている主人公の事。
ゲームやマンガ、ラノベが好き。
『紫苑さん』
シオン=ヴィオレッタ=ヴィオレ=ポイニークニア。
特殊演算サーバ管理人格の1人。魔物を運用するサーバを担当する。