Dive_6 俺と私と旅の仲間
「本当にありがとうございました、お元気で!!」
そう言って階段を駆け上がる俺は最高にカッコ良い気がする。
さながら物語の主人公だ。いや事実上この世界では誰もが主人公なんだが。
まぁ何にせよ、装備は手に入れたから後は青葉さんの居る北を目指して・・・
「・・・って北って事しか知らねェ――ッ?!」
――余計な事考えていた所為か脚を踏み外した!
そういやこの階段ヤケに長く見えるけど実際は徒歩30秒程度で行き来出来るんだったな。
・・・ところで段があると思って高めに脚を上げたら段が無かった、・・・って時のアレは踏み外したで良いんだろうか?
「痛ェ・・・まあ何だ、またノリで走り始めたのが原因か。・・・このクセ早く直そう」
今回は大丈夫だったが、また勢いのまま外に出たりして死んだら笑うに笑えんしなあ・・・
しかし、北って事しか知らない訳だが、どうするかな・・・
まぁ考えてても仕方ない・・・城の誰かが知ってるか?
・・・と、思っていたら扉が勝手に開いた。
まさか自動ドア・・・・「あ、フィリア戻ってきたんだ」・・・ってノイエさんか
「そういやいつの間にか居ませんでしたね」
「今まで気づいてなかったの?!・・・私の扱いずいぶんと雑じゃない?」
「そんな事言われても気付いたら居なかったじゃないですか」
「今まで気づいてすら無かったじゃないか」
「そうですね、アハハハハハハ」
「・・・もういいや」
何かノイエさんが諦めたような表情になってる。
・・・まぁ特に問題は無いな。
「あんまり酷い扱いを続けると力貸さないよ?」
「おおっと、それはヤバいです。これからは善処します」
ノイエさんが若干ニヤつきながらとんでもない事を言う。
でも何故か冗談だと解る・・・フィリアの記憶か何かか?
「そういや、ノイエさんは何してたんですか?」
「ん?・・・あぁ、旅の仲間を連れてきてたんだよ」
「仲間・・・?」
「そう、仲間。やっぱり旅には仲間が必要だよね。基本は3~4人パーティかな?」
そう・・・なのかな?結構一人旅とかのゲームも多いんだけど。
まぁRPGだったら複数人必要だけどさ、この世界どちらかというとアクションゲーム系だし。
「謁見の間で待って貰ってるんだ。あまり待たせるのも可哀想だし・・・行くよ?」
こっちの返事も聞かずに廊下に出てしまうノイエさん。
さっきの怒ってるのか?
「置いてくよ~?」
「あぁスイマセン今行きますよ」
うん、そんな事無いみたいだな。
「おまたせー」
ノイエさんに連れられて謁見の間に到着。
そこに居たのは鎧を身に纏った綺麗な長髪の女性とボサボサ頭のローブ男性。
女性の方は正に騎士!って感じ・・・男性の方は、何というか魔術士以外の何者でも無いな。
「んじゃ顔合わせと行きますか。騎士の方がアルマ君で魔術士の方がマグナ君だよ」
「ご紹介にお預かり致しました、アルマート・ヴィースリートと申します、私の事はアルマとお呼びください。以後お見知り置きを」
「同じくご紹介されました、マグナス・ブレムリートと申します。私の事はマグナと呼びください。・・・お見知り置きを」
やばい何か超綺麗に礼しながら挨拶とかされた!
どうしよう・・・とりあえず挨拶返した方が良いよな?!
「えっと・・・ご紹介承りました、フィリアレーギス・G・セアルクニーグです・・・以後お見知り置きを」
クソッ・・・こんな挨拶とかしたこと無いぞ!
アルマさん苦笑してるよ・・・マグナさんに至っては完全に笑ってるな
「ふふ・・・そう無理にしなくても大丈夫ですよフィリアレーギス様。私共相手にそう肩肘張る必要は御座いません。」
「そ、そうか?・・・じゃぁ楽にさせて貰うよ・・・アルマさんとマグナさんも楽にしてくれると有難いなぁーって思ったり」
ややこしい喋り方するのも辛いけど、同じくらいややこしい喋り方されるのも辛いからな。
自然が一番だ。何といっても楽だ、楽オブザベスト!
「おぉそうか?結構無理してたんだよな、あの喋り方・・・話の解る奴で良かったよ、それと俺の事は呼び捨てで良いぜ?」
「んなっ!?・・・貴様、いくらフィリアレーギス様から許可を頂いたと言っても砕けすぎだろう!」
しかしどうやらマグナは体育会系のような性格の様だな・・・魔術士なのに。
アルマさんはまさに騎士!って感じで真面目だな。
「アルマさん・・・お、私は気にしないから・・・というかフィリアで良いですよ。名前長いでしょう?」
「・・・解りました、それと私の事も呼び捨てで構いません。元来私はフィリア様専属の護衛騎士ですので」
危ない危ない、俺って言う所だった。流石にマズい・・・よな?
しかし直属の護衛騎士って何だ。近衛兵みたいなモノか?
「ククク・・・本当に話が良く解る奴だな、俺が自然体でも全く怒らないとは」
「全く・・・フィリア様に感謝しておけよマグナス」
そしてこの2人は仲が悪い・・・いやそうでも無いか。
真面目なアルマと砕けたマグナの歯車が若干ズレてるだけで仲は悪く無いみたいだな。
「随分と短時間で仲好くなったねー・・・まぁ、この2人が旅の仲間、事情も理解してるから問題無いよ」
確かに仲良くなった気がする。さっきも思ったがアルマとマグナの仲は微妙だが。
・・・しかし事情を理解って言うと・・・中の人の事とか?
とりあえず一応口に出すのはマズい気がするからアイコンタクトを試みてみよう・・・
NPCの前でプレイヤー等のキーワードを呟くのはどうかと思うし。
「・・・何?2人じゃ物足りない?やっぱり4人パーティ派?」
「いや2人で十分です・・・」
その話まだ引っぱるのか?!っていうか駄目だ、通じてないっぽい!
仕方ない、仲間の2人にアイコンタクトを・・・・
「ん?・・・あー、さっきの事情ってヤツか。安心してくれ、俺達は白神様の操り人形だからな」
「マグナス貴様「ちょっとアルマは黙ってようね」――ノイエ様?!」
マグナに通じた!良かった!しかし謎ワードが出たな・・・白神様の操り人形?
・・・白神様って白埜さんの事か?しかし操り人形ってのは・・・
「元のフィリアと同じって事、要するにAI型NPC・・・白姉が動かしてるようなモノだよ。白姉は元々AI型NPCを使って世界中で発生する問題に対処するのが仕事でね?イベントNPCに襲いかかったりする人が来ても大丈夫な様に護衛を付けてるんだ」
とても解りやすい説明をありがとうございますノイエさん。
しかし、白埜さんが動かすAIか・・・さっきアルマが言ってた護衛騎士ってこの事か。
「とすると・・・普通に俺とか言っても問題無いんですか」
「そうだね、少なくとも2人の前だけなら全く問題は無いね」
なるほど、つまり完全に身内な訳だな・・・これは改めて挨拶しなければいかんね?
・・・なんか向こうで2人共殴り合いしてるけど・・・女性をグーで殴るのはどうなんだマグナ?
まぁ殴り合い中でも大声で言えば聞こえるだろう。
「改めましてフィリアだ、2人共よろしくな!」
突然の大声に驚いたのか殴り合いを止めて此方を見る2人。
一度顔を見合わせた2人は笑顔で・・・マグナはニヤリと形容した方が良いか?
「「よろしくな!」」
――返事をしてくれた。
何だ、なんだかんだでアルマもノリは良いみたいだ。
このメンバーなら結構・・・いや、確実に楽しい旅になりそうだ!