第1話 開幕、消えた主役
文化祭の朝――。
講堂のステージは、いつになく緊張感に包まれていた。
灰色探偵・ユウマは、放送部の臨時スタッフとして舞台袖の機材席にいた。
マイクの音量、照明の切り替え、配信カメラのチェック。
どれも生放送ゆえの張り詰めた空気。
「なあユウマ、本当にこれ放送して大丈夫か?」
隣のミナトがイヤホンを耳に引っ掛けながら囁いた。
「何が?」
「主演のレイカ。最近“あの噂”で荒れてるだろ?
昨日もSNSで『本番中に全部暴露する』って書いてたらしい」
ユウマは無言でステージを見つめた。
客席のざわめき、照明のまぶしさ。
その中央に立つ少女――七瀬レイカは、確かに何かを決意した目をしていた。
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午後一時、開演。
演目『白銀の約束』。
幻想的な雪の舞台を模した幕が上がると、客席が静まり返った。
レイカは白いドレスをまとい、ゆっくりとセリフを紡いでいく。
その声には確かな力があった。
観客の誰もが、彼女の存在に引き込まれていく――その瞬間。
――パチン。
照明が一瞬、落ちた。
わずか二秒の暗闇。
すぐに光が戻る。
だが――舞台中央に立っていたはずのレイカの姿は消えていた。
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客席がざわめく。
だが観客たちは演出だと思って拍手を送った。
舞台袖ではスタッフが混乱していた。
「え? え? 立ち位置変えたのか!?」
「照明、戻して!」
ユウマがすぐにマイクを切り、舞台裏へ走った。
「……いない」
舞台下も、袖の裏も、控室も――空。
ミナトが息を切らして駆け寄る。
「なあ、まさか“本当に消えた”のか?」
ユウマは静かに、舞台の床を見つめた。
そこには、小さな水滴がいくつも落ちていた。
「消えたんじゃない」
彼は低く呟く。
「――“溶けた”んだよ」
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次回 第2話「舞台裏の残響」
――光の消えた瞬間、誰が“主役”を奪ったのか?




