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灰色探偵ユウマの放課後事件録  作者: たくわん。
第22事件「止まった列車と廃駅の亡霊」

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第1話「静止したホーム」



夜更けの霧が、線路を包み込んでいた。

街の喧騒から遠く離れた山間の廃駅――風ノ原駅。

十年前に廃止されたまま、誰も使わないはずのその駅で、奇妙な出来事が起きた。


「……この音、聴こえるか?」

ミナトが耳を澄ます。

確かに――微かに列車のブレーキ音のような、金属が擦れる響きが夜気を裂いていた。


「列車なんて、もう来ないはずなのに」

「いや、来てるんだよ。止まったまま、ここに」


灰色探偵ユウマは、ホームの端に足を踏み入れた。

そこには――存在しないはずの列車の影があった。

誰も乗っていない。けれど、窓にはかすかに灯りが揺れている。


「……なぁ、ユウマ。あれ、どう見ても……」

「うん、“本物じゃない”な」


ホームの時刻表は、最後の列車が止まった午後11時42分で止まっている。

その時刻を境に、時計も、電灯も、すべてが止まったままだった。


――まるで、「時間そのものが封印された」かのように。


ミナトがポケットからスマホを取り出す。

「電波、入らないな……。なんか、圏外っていうより“過去の空気”って感じ」

「面白い表現だな。――けど、正しいよ」


ユウマはホームの線路際に膝をつくと、枕木に指を滑らせた。

そこに刻まれていたのは、古いチョークの線と数字。


『11:42 待ってる ——E』


「これ……人の書いたもの?」

「そう。そして、最後の駅員“江田えだ”のイニシャルだ」


ミナトはごくりと息を飲む。

「江田……って、十年前に失踪した……?」

「そう。彼が消えた夜――この列車が、最後に止まった時刻だ」


夜風が吹く。

止まった時計の針が、一瞬だけ震えた。


「……なぁユウマ」

「ん?」

「本当に、列車は止まってるのかな」

「いや――まだ走ってるさ。時間の中で」


霧の中、微かに汽笛が響いた。

それは、遠い過去から届いた“声”のようでもあった。



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