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灰色探偵ユウマの放課後事件録  作者: たくわん。
第18事件 駅前の亡失メロディ

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第1話『駅前の亡失メロディ』


 文化祭の翌日。

 午後の雨が、静かに駅前のアスファルトを叩いていた。


 天城ユウマは、傘を片手に立ち止まる。

 人の群れが行き交う中、どこかから小さな“旋律”が聞こえた気がしたのだ。

 低く、掠れたような音。――まるで、誰かがポケットの中で古い音楽を再生しているかのような。


「なあユウマ、今の……聞こえたか?」

 隣で早瀬ミナトが首をかしげる。

「うん。けど……どこからだ?」


 二人の視線の先、駅前の自販機の下で、

 小さな財布が雨に濡れて転がっていた。


 ミナトが拾い上げると――その瞬間、財布の中からかすかなメロディが流れ出す。

 電子音とも、風鈴の音ともつかない、不思議な響き。


「……なんだこれ、音が鳴ってる?」

「音楽機能つき財布なんて聞いたことないな」

 ユウマは眉をひそめ、耳を近づけた。


 メロディは、駅の構内放送と同じキーで鳴っていた。

 しかも、一定の間隔で音が消え、再び始まる。まるで“時刻”を刻むように。


 そのとき、背後から少女の声がした。

「――それ、私のです!」


 振り返ると、傘もささずに走ってきた女子高生がいた。

 肩までの髪が濡れ、白いマフラーが雨に貼りついている。


「ごめんなさい……落としちゃって……。それ、音が鳴るんです」

「知ってる。さっきから聞こえてた」ミナトが言う。

「でも、なんで財布から音が?」


 少女は静かに息を整え、

 小さく微笑んだ。けれど、その笑顔にはかすかな震えがあった。


「――その音は、“彼がいなくなった日”のメロディなんです」


 雨音が強くなり、駅前の空気が少し冷たくなる。

 ユウマは傘をわずかに傾け、少女を見つめた。


「……“彼”って、誰のこと?」


 少女は視線を落とし、

 財布の中に入った小さな紙切れを取り出す。そこには五線譜の一部――

 “B♭、G、E、A”の文字。


「黒川トオル。彼は……もう、ここにはいないんです」


 その言葉と同時に、駅構内の電光掲示板が一瞬だけ点滅した。

 表示された時刻――『17:42』。

 それは、三日前に黒川トオルが姿を消した、最後に目撃された時刻だった。


 雨に溶ける旋律が、どこかで静かに続いている。

 まるで、灰色の街に残された“未完の音楽”のように。


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