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第1話 消えた楽譜
放課後の音楽室は、ピアノの残響と夕焼けに包まれていた。
その中で、音羽カレンの声が震えていた。
「……楽譜が、ないの」
机の上には譜面台と鉛筆、そして置きっぱなしのメトロノーム。
けれど肝心のコンクール用の楽譜が消えていた。
「部屋には誰も入ってないはずだよ?」
黒瀬リオが眉を寄せる。
「だって、鍵はカレンが持ってたし」
ユウマは静かに音楽室を見回した。
鍵も窓も閉まっている。誰も侵入していない。
それなのに楽譜だけが消えている。
「音羽さん、いつまでこの部屋にいた?」
「15分前まで。少し外の自販機に行ってたの。その間、リオは隣の部室にいた」
ミナトが首をかしげる。
「じゃあ誰もここにいない時間は、ほんの数分か……それで盗まれた?」
ユウマは黙ってピアノの鍵盤を軽く押した。
“ポーン”と音が鳴る。だが、ある一つの音だけ――微かにビリッと震えた。
「……この音、違う」
ミナトが怪訝そうに首を傾げる。
「え、今の音? 普通じゃないの?」
ユウマの瞳が細められた。
「違う。中に、何かがある」
夕陽の光がピアノの内部を照らす。
その奥、譜面台の裏の金具に、微かな“銀色の反射”が見えた。
ユウマの目が鋭く光った。
「楽譜は、まだここにある――」




