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第13事件「生徒会室の鏡が語る嘘」第1話 鏡の中の手



放課後の生徒会室は、窓から差し込むオレンジ色の光に包まれ、静まり返っていた。

だがその穏やかな空気を一瞬にして切り裂いたのは、副会長の九条リカの声だった。


「……誰か、後ろに手が映ったって言ってるの!」


一瞬、ユウマは何のことか理解できなかった。振り返ると、壁にかかった大きな鏡の前で、リカが青ざめた顔で立ち尽くしていた。

鏡の表面には、確かに彼女の姿が映っている――はずだった。


「え、何を見たの?」と、ミナトが恐る恐る尋ねる。


「背後……私の後ろに、誰かの手が、私に触れようとしているみたいに……」

リカの指先は、鏡の中の空間をなぞる。だが、ユウマが生徒会室を見回しても、誰もいない。鍵はかかっており、窓も閉ざされている。完全な密室だ。


「なるほど……密室のトリックか」

ユウマはぽつりとつぶやき、鏡をじっと見つめた。表面のガラスに反射する自分の顔を見ながら、微かに眉をひそめる。


「角度が……おかしいな」

彼は指で鏡の縁に触れ、軽く揺らす。金具が少し緩んでいることに気づいた。

「この鏡、壁にがっちり固定されてると思ったけど、わずかに傾けられるようになっている」


「えっ、傾けられるって……誰か仕掛けたの?」

ミナトは背筋を伸ばして鏡を覗き込むが、手はどこにも見えない。


ユウマは鏡の表面を慎重に調べながら、そっと口を開いた。

「もし、鏡の角度や光の反射が少し変わっただけで、誰もいないのに手が映ることだってある。光って、見たいものしか映さないからね」


「……それって、幽霊の仕業じゃないの?」

ミナトは目を丸くする。


「いや、幽霊じゃない。これは人間の仕業――あるいは、誰かの“意図した嘘”かもしれない」

ユウマの声には、確かな手応えがあった。


その瞬間、鏡の中で光が揺らぎ、まるで別の空間がそこに存在するかのような錯覚をミナトに与えた。

だがユウマの目は冷静だった。


「さて……真相は、もう少し観察しないとね」


放課後の静かな生徒会室で、二人の影だけが鏡に映る。

そして――その背後に潜む“誰かの存在”は、まだ読者にも秘密のままだった。



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