第3話 真実の頁
翌日、図書室は静まり返っていた。
放課後の光が、長い本棚の影を床に落とす。
灰色探偵・ユウマは、回転棚の間に立ち、昨日の痕跡を指先でなぞっていた。
ミナトとマイも静かに見守る。
「さて――」
ユウマは低く言った。
「読者のみんな、ここで推理の答えを明かそう」
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1. 犯行の手口
1.回転棚の利用
犯人は可動式の回転棚を回転させ、古書を一時的に隠す通路を作った。
棚を戻すことで、外からは本があるように見える。
2.鏡による錯覚
棚の一部に鏡が仕込まれており、古書のある位置を反射させることで、誰もそこに本があることを疑わなかった。
3.映像の乱れ
防犯カメラは、微弱な電磁波により一瞬映像が乱れた。
この短時間で古書は安全な位置に移され、密室が維持された。
4.紙片の意味
床に残された紙片は、棚の回転角度の指示。
犯人は事前に動線と棚の角度を計算して、誰にも気づかれずに古書を動かした。
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2. 犯人と動機
ユウマは静かに、図書委員の副委員長・望月ユリを見つめた。
「犯人は……君だな」
ユリは顔を赤らめ、視線を落とす。
「……ばれたのね」
小さな声でつぶやく。
「私は、桐生委員長の功績を邪魔したくて――。
光の書を一時的に隠すことで、彼女の信用を揺るがそうと……」
ユウマはうなずいた。
「だが、君は暴力も破壊もしていない。
ただ密室トリックを利用し、心理的に追い詰めることを選んだ。
その計算の正確さが、読者にも見抜かれる手がかりになった」
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3. 古書の発見
ユウマは回転棚を回し、隠されていた位置を示す。
そこに古書『光の書』は無事に置かれていた。
マイは胸を撫で下ろし、涙を浮かべる。
「ありがとう……ユウマくん。これで、学校の宝が戻ったわ」
ユリも目を伏せ、静かに謝った。
「ごめんなさい……。でも、もう二度とこんなことはしません」
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4. 推理の解説
ユウマは棚と鏡、映像の乱れを順に指し示す。
読者に向けて解説するように語る。
「密室は、物理的な閉鎖だけではない。
人の心理、視覚の錯覚、微細な時間差――
すべてを組み合わせることで、密室は成立する。
だが、必ず微かな痕跡が残る。埃、紙片、乱れた映像……
それらを見逃さなければ、真実は必ず見えてくる」
ミナトが感心して息を吐く。
「さすが灰色探偵……」
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その後、古書は元の棚に戻され、図書室には再び静寂が訪れた。
ユウマはそっと棚を閉じ、微笑む。
「密室の影も、これで終わりだ」
夕陽に照らされた図書室。
ページの匂いと、静かな誇り――
事件は、完結した。
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この事件のポイント
•密室トリック:回転棚+鏡+防犯カメラの乱れ
•犯人の心理:内部者による妨害、暴力なしの“心理的密室”
•読者への伏線:埃の跡、紙片、微細な映像乱れ
•テーマ:「閉ざされた空間にも、必ず真実は残る」




