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元冒険者だった生体素材をパクパクしていく。
素材は有効利用しないとね。
で、気付いたんだけど、こいつら多少なりとも金銀を持っていやがる。
たぶん通貨だと思うけど確認するのは面倒なので、全部まとめてパクパクしちゃってます。
中には可愛らしい女の子もいて、ちょっと勿体ないなぁ。
なんて思うのは俺が元男だからであって、決して変態だからではない。
神官風の巨乳女子をパクパクしようとしたら、懐から1冊の本が落ちた。
タイトルは《ウィンダミア教典》。
なんだか、嫌な予感しかしないけど、一応保管しておこう。
さて、一通り元冒険者という生体素材を取り込んだので確認してみよう。
フムフム。
ステータス画面をポチポチして、金属関係を検索する。
一番多いのは予想通り鉄だ。他には、金、銀、銅、鉛。それに少量だがチタンやマンガン、アルミまで有るぞ。
ゲームのイメージでは、冒険者は良くわからない草とか、良くわからない鉱石を持ち歩くのが定番だったけど、この世界も同じで良かった。
冒険者や兵士は鉱脈と同じだね。
夢が膨らむ宝箱だ!
これで多少は予定を変えられるかな。
エルフ村をどうにかしようと思っていたけど、現在の場所でそのまま防衛を強化するのは難しいと思う。
壁を作るにも周囲には木しかない。堀を作ってその土砂で壁を作っても、土壁しか作れない。最低でも石材が必要だ。
だが、俺は丁度良い場所を知っているのだ。
無人機で神聖帝国コンファールトへの移動中、石壁に囲まれた数十軒の家があった。
石材があり、家もある。生体鉱脈は望み薄だが、現在のエルフの村より不動産価値は高いだろう。
問題はエルフたちが引越を受け入れるかだ。
こんな時、便利に使えるのは眷属召喚だね。
「マキよ。確認したい事がある」
「はい!何でございましょう!鉄人様」
「エルフの村だが、あそこを引き払い、より防衛の固い村を作ろうと思う。だが、あの村を捨てる事に心残りは無いか?」
「いえ。全然。どうせ仮住まいの場所です」
あ、そうなのね。
ゲームじゃ、エルフは住む場所に拘りを持ってる偏屈者ってイメージだったけど、随分とサバサバしてるね。
計画を進めやすくて助かるけど。
「では、皆を連れて人間の村へ移動するぞ。先住民がいても、夜の間にいなくなるので問題ない」
「と言いますと?」
「寝ている間に我の腹の中に入れて、役に立つ物に生まれ変わってもらうだけだ」
「さっすが鉄人様!役立たずのヒトも村も祝福されるのですね!」
「そ、そう、だな」
「皆には私から伝えます!とうとう国盗りの始まりですね!」
えっ?
祝福とか国盗りとか、どんどんヤベェ方向に向かってるんだけど大丈夫か?
エルフの村へ戻った俺は、早速エルフたちの移動手段を製造している。
作るのは、未亡人エルフ全員を乗せて移動出来るトラックだ。
鉄は砦でタンマリ仕入れたので問題ないのだ。
トラックが製造される過程は、俺が見ていても意味不明だ。
俺の体から、俺よりもデカいサイズのトラックが出て来るなんて、技術力がぶっ飛び過ぎてて魔法にしか見えない。
中世レベルのエルフからは、魔法を通り越して神様を見てる感じなのかもな。
俺はただのロボなんで、教祖になる気は無いよ。
よーし。出来上がった。
どこからどう見ても、軍用トラックだ。
角ばった車体に、高い車高。無駄に大きいフロントガラス。
ちなみに、燃料は兵士から製造したバイオエタノールを100%ぶち込む予定。エンジンに負荷はかかるけど、まぁなんとかなるでしょう。
それじゃ順番に荷台に乗るように・・・と言おうとしたが、誰も乗り方を知らないね。
俺が一人づつ抱えてポンポンと荷台へ載せて行く。
ついでに人数を数えたが、生き残ったエルフはマキを加えても20人だ。ちなみに荷物は俺が作ってプレゼントしたアサルトライフルだけだったよ。
新たな村を作っても、この人数では村を維持する事は難しいだろう。
第一、未亡人エルフしか居ないのだから、いずれ子孫が絶える。
同族のエルフだけじゃなく、同様に人間から虐げられている種族も受け入れる事を考えるべきかな。
まぁ、そういう難しい問題は当人同士で話し合ってもらうのが一番だ。
エルフたちが判断を俺に丸投げして来たら、俺は眷属のマキに丸投げしてやる。
俺の目的は、俺を敵視するクソヤベー人間を絶滅させる事で、エルフの保護はついでなのだ。
トラックは遠隔操作で俺が運転する。
信号の無い道を低速で走らせる事は、無人機を飛ばすよりも簡単だった。
自分の体を動かしながら別の機体を操作するのは、無人機でも行っていたので全く苦にならない。
テレビを2台並べて別々の番組を同時に鑑賞する感じに似てるね。
エルフたちがゆっくりと移動してる間に、俺は急いで目的の村へ向かい、一人一人生体素材をパクパクする。
BGMはエルフ達の黄色い声だ。初めて車に乗り、キャアキャアはしゃぐ彼女たちの声を聞きながら、俺は粛々と回収作業をするのだ。
だが、これは決して盗聴では無いのだ!
これは安全の為に必要な行為なのだ!!