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無人機は無事に戻って来た。
着陸する時、俺が走りながらキャッチしたんだけどね。
ミサイルを補充したら再び飛ばして、上空で旋回させながら24時間待機させるのも良いね。
問題は、そのミサイルの素材が少ないと言う事だ。“電化製品教”で集めてた素材を使い切ったら終了だ。
銃の弾なら鉄製品さえあれば、なんとか製造する事が出来る。だが、その鉄ですら在庫は有限なのだ。
エルフたちに製鉄の技術は無い。人間は製鉄の技術を持っているが、エルフや俺が買いに行く事なんて出来ない。
つまり・・・
ミサイルを撃ちまくるには、廃墟を漁って電化製品を探す旅が必要。
銃を撃ち続けるには、人間が滅んでは困る。
と、いう事だ。
現状で補給可能な方法は、金属鎧の兵士を狙ってパクパクするしか無い。
結構な無理ゲー。ハードモード過ぎるでしょ。
考えていても状況は変わらない。出来る事からコツコツとしていこう。
まずは1発目のミサイルを撃った場所に行って、素材集めをしよう。
結構な数の兵士がいたので、金属も生体素材も集め放題だと思う。
とは言っても空から見ただけなので、方角と距離しかわからない。
森の中を迷わずに歩くには、道案内が必要だ。
という事で、困った時の眷属召喚だね。
「マキよ。訪ねたい事がある」
「はい!何でございましょう!鉄人様」
「この近くに人間の砦があろう。そこまで案内せよ」
「もちろん存じ上げております!皆殺しですね!!」
「あ、いや。それは既に終わっておる」
「流石は鉄人様でございます!」
砦までの移動は思いの外、時間がかかった。無人機の上空からの映像だけでは、森の中の地形まではわからないのだ。道案内がいて良かった。
俺たちは砦にある資材を片っ端から漁った。
この砦で、俺は初めて現在の人間の文化を体験した。
中世レベルだと思っていたが、俺の知ってる中世とは全く違う。
貴族の肖像画は、どうして生首を踏んずけているんだ?
ランプの傘が、人の皮膚製ってどうなってるんだ?
女性エルフの上半身の剥製って、どうなってんだ!
この文化は一度滅んだ方が良い気がする。
いや、滅ぶのを待っててもダメだ。俺が滅ぼそう。
俺たちは砦の外と中の死体や、金属製品をスクラップとして回収した。結果ガトリングガンの弾を2000発、サブマシンガンの弾は3000発補充で来た。
まだ素材は同じくらいの量の弾を製造出来るだけの余裕はあるが、他に製造したい物が出た時の為に残しておく。
補充も終わり意気揚々と砦から出ようとしたら、俺たちは取り囲まれていた。
敵は、ざっと100人。全員人間だ。
装備も年齢もバラバラ。たぶん冒険者ってヤツだろう。
でも、ちょっと到着が早くないか。
砦を攻撃してから、まだ数時間だ。往復どころか片道でもギリギリの時間じゃないかな。
砦が陥落する前から出発の準備が出来てた、って事かな。
「ぶっ殺せえぇぇぇぇ!」
「勇者を殺した悪党だぁぁぁ!!」
掛声に合わせて20人の冒険者が前に出て、包囲網を狭めてきた。
俺がガトリングガンをぶっ放そうとした瞬間、冒険者側から声が上がった。
「待ちな!!」
そう叫んだ男が一人、歩み出て来た。そして何処からともなく声があがる。
「あいつは《廃業のイプシロン》の異名を持つ、ザオ・ユッシラだ!」
意味は全くわからないけど、その異名はちょっとカッコイイな。
「この砦には弟のテオが居た。弟は何時も訓練を頑張っていたが、エルフを14人しか殺して無いのに・・・てめえの血の色は何色だぁぁぁ!?」
ロボだから。血は流れて無いと思うぞ。
「ザオ・ユッシラ、こいつに借りがあるのはお前だけじゃねぇぜ」
2人とも初対面なので、貸しも借りも無いと思うぞ。
「あ、あいつは《盗んだ財布》のラウリ・マラン!まだ現役だったのかよ!」
おい、そりゃあ、ただの泥棒だろ。
「ここの指揮官のベルガーには、女児エルフの丸焼きをご馳走になった恩が有る!それをこいつは・・・そんな悪行をやらかして、顔色ひとつ変えねぇ!!!」
ロボだから。変えたくても変わんねぇんだ。
なんかこれ以上聞いてると、エルフの村に帰るのが遅くなりそうだ。
俺はガトリングガンとサブマシンガンをフルオートにして薙ぎ払うように掃射し、冒険者たちをミンチにした。
バババババババババババババババババババ・・・
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・
冒険者のくせに、謎魔法とか謎魔導具とか使って来なかったな。
下っ端冒険者だったのかもなぁ。
ファンタジーな攻撃が見えるかも、と期待してたんだけど、ちょっと残念。
この砦に居たのは金属鎧を着た兵士なのに、増援に来たのは冒険者だ。
もう兵士を出せるだけの戦力が無いのかもしれない。
チャンスタイム到来の予感だね!