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俺はエルフの村へ無人機を運んで、早速飛ばしてみる事にした。
村には滑走路なんて無いが、俺が持って走れば離陸はなんとか成るような気がする。
それにしても、冷蔵庫やトースターからどうして爆弾が作れるのか不思議だった。
ステータス画面をポチポチしてわかったのだが、どうやらエリクサーモドキを作った時の余りらしい。
分子レベルか原子レベルかわからないけど、余剰素材はストックされる親切設計のようだ。
そこまで分解されるなら、出来上がった製品が生物由来の素材かどうかなんて関係ないよね。
でも・・・
兵士を取り込んだあとに、パンを作ったんだよなぁ。
余計な事は考えない事にしよう!
俺の全力疾走+投擲にて、無人機はスーッと離陸した。あとのコントロールは俺のボディから出来るらしい。
ただ、中継ポイントが地上にも軌道上にも無いので、ある程度の高度を保たないと連絡不能になるようだ。
たしか神聖帝国コンファールトは西の方だったなぁ・・・と思いながら高度を上げていく。
ん?
森の中に人工建造物が見えたぞ。ちょっと旋回しながら確認してみようかな。
見た感じは砦かな?
四方を石かレンガで囲っている。中心の広場にいるのは人間だろうか?
カメラの倍率って変更出来たよね。
お、おぉ。
広場で整列しているのは金属鎧を着た兵士たちだ。その鎧には滅茶苦茶見覚えがあるぞ。
少し離れた壁際に棒が立ってて、棒の先には人の形をした何かが刺さっていやがる。この光景もつい最近見た記憶があるぞ。
ようするに、俺の敵って事で良いね。
練習として、ここに一発撃ってみようか。
安全装置を解除すると、照準が表示された。
目標をロックオンして、発射!
するとミサイルがガコッと落ちて、3秒後、火を噴きながら目標へ向かって推進を始めた。
あ、あれ?
無人機の操作が出来なくなったぞ。もう壊れたとか言わないよね。
BOOOOOOOM!!!
狙い通りの場所に着弾したけど、思ったよりも爆風も炎もショボイな。
あっ!
無人機の操作が可能になってるぞ。
ムムムム。
もしかしてミサイルって無人機からのレーザー誘導だったのかな。
俺が生きていた時代には実装されて無かったと思うけど。
着弾ポイントが見えてきたけど、このミサイルはなかなかエグイぞ。被害状況として近いのは劣化ウラン弾や釘入りパイプ爆弾って所だね。
爆発で無数の金属片をまき散らして、周囲の人間を皆殺しにするのかぁ。ミサイルのくせに、破壊では無く、対人の殺傷能力を上げてるとか。設計思想がヤバいね。
運良く即死を逃れても、体の何処かに穴が開いてるだろうね。無事なのは偶然石壁の陰にいた人くらいだ。
搭載したミサイルは、あと1発残ってるけどここはもう良いかな。
・・・うーーん。
神聖帝国コンファールトを探しながら飛んでいると、いくつかの村や町を見つけた。
そこを観察して、ちょっと気が付いた事がある。
この時代の軍って、民間との区別が曖昧過ぎる。
農具片手に槍や剣を持ってる人がいるんだけど、あれって農民なのかな?
家が20軒程しか無い村でも金属鎧を着てる人がいるんだけど、あれって軍人なのかな?
そもそも中世では攻撃目標の軍事工場が無い。
武器や鎧は個人の工房が作ってるよね。そんなの1つ1つ潰してたらミサイルが足りない。
これは兵站の食料品もたぶん同じだよね。全てのパン屋を潰さないと軍への補給は止まらない。
無人機を手に入れた時は、チートでラクラク。って思ってたけど無理ゲーかもしれない。
気が付くと無人機は森や林を抜けて平原地帯を航行していた。
その先にはこれまでで一番大きい都市が見えてきた。
ここが、マキが言っていた神聖帝国コンファールトの首都なのだろうか。
壁の内側は、道が石畳で整備されている。家も石造りの2階建てが多い。
それに街の中心より少しズレた場所に、周囲の何倍もある建物が見える。あれって城なのかな。
街の中心の広場では大勢の人が集まってるようにも見えるぞ。今日はお祭りなのだろうか。
カメラの倍率を上げると、集まってる人々に対してやぐらの上から演説をしてる人間が見えた。
高そうな装備を着けて、偉そうにスピーチしていやがる。祭りというよりもセレモニーだな。
つまり、得意気に話してるアイツが指揮官か、特殊能力を持ったチート野郎って事だ。
早速、安全装置を解除して、ロックオン!発射!!
BOOOOOOOM!!!
今回はミサイルが標的に直撃したようだ。
ミサイルからばら撒かれた金属片で周囲は阿鼻叫喚だけど、ミサイルの直撃を受けたチート野郎は木端微塵だね。
どんなチートを持ってたのか知らないけど、流石に復活は出来ないでしょ。
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注)勇者はチートを持っていません。