-06-
~時間は勇者が肉塊になる少し前、エルフの村にて~
俺は今、未亡人エルフに囲まれてアサルトライフルと弾を大量生産している。
どうしてこうなった!
マキとの会話で、俺が神聖帝国コンファールトに殴り込みに行くと勘違いした未亡人エルフたちが、自分たちも武器が欲しいと言い出したのだ。
家族を殺されたのだから、その気持ちはわかる。
だが、戦うにしても俺だけだ。
未亡人を連れて戦争なんてしたく無いぞ。
ぶっちゃけ、邪魔なのだ。フィジカル的に足手まといだ。
そんな感じの事をソフトに説明したら、一応納得してくれた。
折角助けたのだから危険な事はして欲しくない。
しかし、俺が殴り込みに行ってる間、自分を守る力が欲しいと言われてしまった。
要するに、納得はしても説得は出来なかったのだ。
未亡人エルフの圧力に負けた俺は、全員分のパンを製造しながらステータス画面をポチポチして汎用性の高い武器を探した。
竹槍やナイフのような原始的な武器や、アサルトライフルや機関銃のような殺傷能力の強い武器迄ある。
大砲とか飛行ドローンも作れるようだけど、これは俺も使わないと思う。
さすがに竹槍を持たせるのは気が引けたので、アサルトライフルを用意することにしたのだ。
材料は兵士たちの武装を再利用している。
人数分が完成したら使い方のレクチャーや試し撃ちの指導も俺がするしかないのか。
エルフにアサルトライフルを持たせるとか、世界観をぶっ壊してる感じがするね。
これで未亡人エルフたちは満足してくれると思う。
だが、アサルトライフルを製造したら材料が尽きてしまった。
神聖帝国コンファールトとのデスマッチには、もっと金属が必要だ。出来れば鉄の他にも、チタンや銅や金も欲しい。
とは言え、中世レベルの社会にチタンなんて有る訳が無い。
ここは再び、困った時の眷属召喚だね。
「マキよ。汝に問う」
「はい!何でございましょう!鉄人様」
「我に捧げし聖遺物。他に類似の物はないか?」
「申し訳ございません。神具はあれしか・・・アッ!でも祭祀具ならあります!」
「案内せよ」
「はい!よろこんで!」
案内されたのは村の片隅にある洞穴。
何の変哲もない洞穴を進み、左に曲がった所で、理解しがたい光景が広がっていた。
ある意味ファンタジーだが、ファンタジーとは真逆の風景。
天井には夥しい量のLANケーブルや電線がお誕生日会の飾りのように垂れ下がっている。所々にダイオードが見えるのはクリスマス用のイルミネーションだろうか。
岩壁には大小様々な電子基板を立体的に組み合わせ、積み上げて創った壁一面のオブジェ。なぜがアチコチに缶ジュースの空き缶も使われている。
最奥にはタイヤを失ったママチャリが何台も積み上げられており、その頂上にサバイバルナイフを突き立てたノートパソコンが1台。
「カルトじゃねぇか!」
エルフは“電化製品”という宗教を持っていたのか。
足元も良く見れば、冷蔵庫や電子レンジの側面を上手に並べて、真っ平な床を作っていやがる。
「マキよ。この遺物の使い方は知ってるのか?」
「も、申し訳ありません!何か粗相がございましたでしょうか??」
「そうではない。これらはただの道具だが、何故集めていたのかがわからぬのだ」
「存じ上げていた長老たちは既に皆殺しにされ、私たちはそれを引き継いだだけで・・・」
「で、あるか」
「・・・」
「マキよ。ここにある全ては“我に捧げられた物”で良いのか?」
「は、はいっ! それはもう全部お納めください!」
前任者が集めてたコレクションを、後任は理由も知らされずに集め続けるなんて、地獄じゃねぇか。
宗教の始まりとしては、正しい道順なのかも知れないけど、俺は“電化製品教”には入りたくないね。
まずは何を作ろうか。
うーむ。
・
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よし!地図を作ろう。
流石に人工衛星は無理だろうから、無人航空機は作れるかな?
お!
ソーラー発電で24時間運航可能な無人偵察機がある。
これとミサイルが有ったら、戦術や戦略を無視しても勝てるんじゃねぇかな。
でもミサイルには残弾制限があるから、効率的な運用が必要だね。
俺が電化製品をモリモリ食うと、体から光が出てきて、徐々に無人偵察機が出来上がっていく。
うーん。
なんか、昔テレビで見た無人機よりも、かなり小さいんだけど。
もしかして、俺が生きていた時代よりも進歩した物を作れるのか?
ロボの体が存在するんだから、今更か。
「な、な、な、なんと。神の鳥。震えるほど神々しいお姿です!」
マキだけじゃなく、未亡人エルフ全員に土下座されちゃったよ。
まぁ確かに、つるんとした見た目の無人機は神秘的に見えるよね。
「これは我の目となる眷属である」
「は、はぁぁぁぁぁ」
なんだか“電化製品教”よりも、こっちの方がカルト宗教っぽいぞ。
あとは、無人機に搭載可能なミサイルも作ってみようか。