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 ~side 神聖帝国コンファールト の付近~



 吾輩は神聖帝国コンファールト“元”宰相のニャンガンである。

 20年勤めた神聖帝国コンファールトの宰相の職をステルス辞職して首都を出たあと、シャハル帝国の捕虜になったのである。


 シャハル帝国は吾輩が神聖帝国コンファールト“元”宰相である事がわかると、情報を持っている事を買い、参謀として登用したのである。

 敵であっても思い切りよく登用するシャハル帝国は、それだけ情報というものを重く見ているのがわかるのである。


 それにくわえて、シャハル帝国の技術は見事なものである。鉄の筒に火矢を差し込み、火薬の力で発射するのである。

 これがあれば、鉄人と神聖帝国コンファールトの戦いも違う結果に出来たやもしれぬ。



 シャハル帝国の“現”参謀となった吾輩ニャンガンは、シャハル帝国の砲台陣地を見回っているのである。


 砲の近くで、白い煙が上がっているのである。しかし、これは火事ではないのである。

 兵士たちが勝手に炊事をしているのである。


「砲の近くで火を使うなと言われてるのである!」


「しかし参謀、炊事所が遠いんでゲス。上官殿に砲から離れるなと言われたでゲス」


「ググググ。それならば、次から飯を配達させるのである」


「それなら、助かるでゲス」


 何度言っても、勝手に煮炊きをする者が居て困るのである。


「せっかくなんで、参謀殿も食ってくと良いでゲス」


 神聖帝国コンファールトの首都周辺には、すぐに手に入る木材が少ないのである。

 だから、奴らが煮焚きに使ってる薪、あれは人の油と人の骨を混ぜた物なのである。


 ソーッと鍋の中を見るのである。

 吐かないようにするのが、なかなかつらいのである。

 鍋の中には、薪にされた以外の部分が入っているのである。


「いや、結構なのである。見るだけで腹いっぱいなのである」


「参謀殿は小食っぽい見た目をしてるでゲス」


「「ゲスゲスゲス!」」


 こいつらは神聖帝国コンファールト以上にヤバいのである。同じ人間を食料としか見てないのである。

 いや、エルフを食料として見てた神聖帝国コンファールトも大概なのである。


 シャハル帝国の異様な進軍速度は、この食文化なのである。

 現地で手に入った“者”を無駄なく活用するのである。言葉で書くなら簡単な事であるが、現実に見ると吐き気がするのである。




 門の方が騒がしくなって来たのである。

 降伏状を持った軍使が、そろそろ出て来ても良い頃なのである。


 まずは100人の声楽隊が出て来たのである。

 予想通りと言えば、予想通りなのである。


 通常の流れであれば、このあと軍使が出て来て“良い歌を聞かせた礼に貴族だけは助けて欲しい”という交渉が始まるのである。


 吾輩が交渉の場に居ると話しがコジレるかもしれないのである。

 声楽隊が歌い始めたら、コッソリと後方に隠れるのである。


 「「♪ぼーくーはーおーちーNッぽッ♪」」

   「「♪みーNなーおーちーNーぽッ♪」」

     「「♪せーかーいじゅぅちNぽーにーなれー♪」」


 「「♪おッちNぽッになれッ!♪」」


 「「♪おッちNこでもー♪」」

   「「♪おッちNぽでもー♪」」

     「「♪おともだちッおーちNッだちッ♪」」


 「「♪つらいときやー♪」」

   「「♪かなしいときッこそッ♪」」

     「「♪おッちNぽッだッ♪」」


 「「♪ちNこだってー♪」」

    「「♪ちNちNだってッ♪」」

      「「♪なッかよくなれるよッおッちNぽっこー♪」」


 「「♪てッをつないでッ♪」」

   「「♪ちNこつないでーッ♪」」

     「「♪わッにーなーろうよーッ♪」」


   ボンッボンッボンッ


 3カ所の大砲から大火矢が放たれ、声楽隊は散った。


 爆発音を聞いても、吾輩は何が起きたのか理解出来なかったのである。

 そして地に倒れ伏してる声楽隊を見て、事の重要性を理解したのである。


 吾輩は閣下の元へ走ったのである。

 声楽隊は交渉の一部である。それを殺したという事は交渉しないという意味である。

 何かの事故・・・砲の誤射であるなら、まだ交渉の余地があるのである。


「閣下、あれは、あの砲は何かの、まちが・・・」


「くだらねぇでゲス!余は奴らに慈悲の思いすら湧かなかったでゲス!これは当然の結果でゲス!」


「閣下が、攻撃の沙汰を?」


「当然でゲス」


 例えウソでも、閣下が誤射だったと言ってくだされば、吾輩が命をかけて交渉の再開へ出向く事が出来たのである。

 もう神聖帝国コンファールトを救う手段が無くなったのである。

 吾輩に出来る事は、自分の持ち場へ戻る事だけである。




 声楽隊の惨殺から2日経ったのである。

 未だ閣下から総攻撃の命令は無いのである。

 神聖帝国コンファールトからの反撃も無いのである。


 吾輩は今日も見回りをしているのである。


「火薬樽は砲の近くに置くなと伝えてたのである。火の粉が飛んだらお前ら全員、吹っ飛ぶのである!」


「ですけど参謀殿、薬小屋は遠いでゲス。いちいち取に行くのは大変でゲス」


 砲の近くで焚火をしたり、火気厳禁の火薬樽を勝手に持って来るとか、こいつらは正気であるか?

 参謀とはいえ、新入りの吾輩に重要設備である砲の見回りを命じられた理由がわかるのである。

 どいつもこいつも危険という考え方を持って無いのである。


「近くに小さな薬小屋を用意するので、そこを使うのである」



<ジャァーン!ジャァーン!ジャァーン!>


 ん!

 これは敵襲を知らせる音である!

 神聖帝国コンファールトが打って来たであるか。


   ブォォォォォォォン!!!


 しかし目にした光景は想像したものでは無かったのである。

 車輪の付いた緑色の角ばった箱が、猛烈な速さで走り回り、周囲に猛火を振りまいてるのである。


「あれは何であるか?」


 歩兵を炎で蹴散らすと、今度は砲に向かって猛火を振りまいたのである。

 可燃物を積み上げている砲は、瞬く間に火を吹き燃え上がり、吹き飛んだのである。

 そして、燃え広がる炎の中、砂色の巨人が姿を現したのである。


「鉄人でゲス! 鉄人が出たでゲス!!!」


 兵が弓を射るが、命中した鉄の矢じりは刺さる事無くポトリと落ちる。

 次の瞬間、轟音と共に鉄人の手元から小さな炎が発生し、その手を向けられた者たちはバタバタと倒れていく。


 まさに一瞬である。

 吾輩が息を止めて物陰に隠れた一瞬で100を超える兵士たちが倒れ伏した。


 これが・・・これが、鉄人であるか!!


 だが、奴の敵は神聖帝国コンファールトではなかったのか?

 なぜシャハル帝国に牙をむけておるのか?


 まさか鉄人は、人類全てを滅ぼすつもりであるか!?




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