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 モッコリに監視塔が建てられた。

 もう少し高さが欲しい所だが、無人機を使わないでも東西南北を見張れるのは大きなメリットだ。これで俺がいなくても交代制で24時間監視が出来る。

 今までは4メートルの壁から頭をヒョッコリ出して見るのが精々だったので大きな進歩と言える。


 火炎放射器から逃げて森に入った兵が、偶然ゴブリンからも逃げて、偶然モッコリに到着する可能性はゼロじゃない。

 警戒は必要なのだ。



 モッコリ周辺の監視は元捕虜たちに任せ、俺は無人機を神聖帝国コンファールトへと向けた。

 計算上はまだ1万の大軍が首都に残ってるはずだ。

 既にモッコリへ出発してたら、その動向を把握する必要がある。



 しかし、無人機から送られて来た映像は、俺の予想とは違った。


 首都を取り囲んでいた天幕が、無い。兵士も見えない。

 代わりに、真っ赤な旗を掲げた人々が首都を包囲している。

 金属鎧を着た兵士は見当たらず、革か布の服を着て帽子をかぶってる人間ばかりだ。後方には牛や羊の家畜を連れた集団までいる。


 俺が数日目を離してる間に何があったの?浦島太郎の気分だよ。


 ズームして門の周辺をみてみる。

 俺が破壊した門はトッカンで修理はされてるようだが、赤旗の軍はその門と対峙してた。


 って、オイオイ。

 黒く重厚な筒が地面に固定されてる。あれは大砲じゃないのか?



 兵士の装備が金属鎧では無いから、神聖帝国コンファールトの貴族が反乱を起こした訳じゃないよな。

 それじゃあ、赤旗の奴らは他国から来たって事になるぞ。

 この時代の移動は徒歩が基本だ。それに家畜を連れての移動となると、とんでもなく時間がかかる。

 ようするに、いつ出発したかが問題だ。

 勝てると判断したから攻めて来たんだろう。

 だが、それをいつ判断したんだ?


 首都に3万人が集まったのを確認してからの出発では、間に合わないと思う。俺のように無線機が使えるなら別だけど。

 だからタイミング的に、俺が未亡人エルフたちと出会った頃になる。


 つまり鉄人が目覚めたのを知って出発したか、鉄人とは関係なく出発したかだ。


 後者なら問題ない。

 前者の場合、俺への対抗策があると考えるべきだろう。


 神聖帝国コンファールトと赤旗の軍、どっちが勝っても俺と敵対するのは決定のようだ。




 暫く上空から観察してると、門が開いてぞろぞろと人が出て来た。

 だが金属鎧を着た兵士では無い。なぜか、白い修道服に身を包みハチマキを付けた集団だ。そして全員が本を持っている。

 100人ほどの集団がビシッと一列に並ぶと、その中の一人が前へ進み出た。

 と思ったら、全員で唄を歌い始めた。


 無人機は地上の声なんか拾えないけど、前に出て来た指揮者に合わせて歌ってるのが見える。

 舌戦で口上を述べ合うじゃなくて歌うって、文化が俺の想像の斜め上で理解出来ないぞ。


   ボンッボンッボンッ


 俺が呆気に取られてたら、赤旗から大砲が放たれた。

 大砲と言っても、鉄の玉を飛ばすタイプでは無いようだ。

 槍と弓の中間のような棒状の物が何本も燃えながら飛んで行き、合唱団100人を串刺しにした。


 武装してない100人に対して至近距離から大砲を撃つとか、容赦ないなぁ。

 このタイプの人間って、核を持ったら絶対に使うタイプでしょ。

 ある意味、神聖帝国コンファールトよりもタチが悪い。


 一部の槍は壁に当たって破裂し、周辺に炎をまき散らしている。

 どうやら槍は細い棒を何本も束ねた物で、着弾と同時に広範囲に放火する。そんな槍を同時に何本も射出する大砲。

 設計思想がナパーム弾じゃねぇか!


 大砲としての殺傷能力は低いが、木造建築の多い街中に撃たれたらパニックが起こるぞ。

 炎と恐怖と混乱の中で戦える者は少ない。

 たぶん、この時代で最強の武器なんじゃないかな。


 ムムム。


 不味いね。

 このままだと神聖帝国コンファールトが負ける。

 神聖帝国コンファールトが消滅するのは全く問題無いのだが、電子基板の情報も一緒に消えてしまう。

 こりゃ困ったぞ。




 まずは赤旗の連中の情報を集めよう。

 森の中で隠れながら暮らしてたエルフと違って、元捕虜たちなら何か知ってるだろう。


「兵士どもよ。神聖帝国コンファールトが燃えておる。だが我では無い、赤旗の者たちだ」


「な、なにぃぃ!その旗はシャハル帝国のモノでございます!」

「畜生ー!出兵した隙を狙い、仕掛けて来たか!」

「世界の調和者様!ぜひ我らに先鋒をお任せください!」 


 即断即決かぁ。

 もう少し考える頭とか無いのだろうか。

 俺としては話が早くて助かるけどね。


「ウム。我も神聖帝国コンファールトを焦土とするつもりであった。しかし、貴様らのような者がまだ残っているのであれば、我も力を貸す事としよう」


 俺はダンジョン探索の時に使用した、全身を光らせるだけ、という機能を使った。

 俺もどういう原理で金属の体が光ってるのかわからないけど、中世レベルから見たら神々しく見えるんじゃないかな。


「我はエルフの側に立つ存在。エルフは汝らを憎んでおる。その事だけは忘れるでないぞ」


「へへぇー!!」



 さて、次はエルフたちに説明するか。

 敵を助けるって事だから、言い方を間違ったら大変な事になりそうだ。気合を入れないとな。


 眷属召喚!!!


「マキよ。我が眷属よ」


「はい!鉄人様。第一の眷属にして、モッコリ初代王のマキでーす!」


 なんか最近、バーサーカー・モードを経由してウザさが増した気がするのは気のせいだろうか。


「シャハル帝国が神聖帝国コンファールトへ攻めて来た。我はこれからシャハル帝国と戦い、神聖帝国コンファールトの味方をする。しかし、国を助けるのではない」


「と、いいますと?」


「長老が集めていた神具や祭祀具を覚えているか?」


「ま、まさか!」


「そうだ。神聖帝国コンファールトが奪った遺物を奪還する。だからシャハル帝国が邪魔なのだ。これはエルフを助けるという目的に必要な事だ」


「あ、あのぉ。遺物が目的なら、クソムシ(ヒト種族)どもは皆殺しにしても良いですか?」


「無論だ。ここの兵士のように利用価値がある者以外、生かす価値は無い」


「ヒャッホー!!」


「第一目標を神聖帝国コンファールトから、一時的にシャハル帝国へ変える事を、皆に伝えよ」


「へぇぇぇ!」


 さて、ここからどう動いたら良いんだろうな。

 不発弾を抱えて戦場に行く気分だぞ。




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