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 ――ブォン! ブォンブォンブォン!


 俺は今、光る刀身を振り回している。金属製の筒の先から出ているのは、高熱のよくわからない青い光だ。

 光る刀身が空気を切り裂くたびに、ブォンブォンとカッコいい音をたてるのだ。


 俺のテンションは爆上がりだ。男の子だったら当然だよね!


 これを持っていたのが、俺が尋問した兵士だった。

 今回の戦いの為にウィンダミア教団から下賜されたらしい。

 あの兵士は知識の量も多かったから結構なお偉いさんだったのかもしれない。


 このライトセーバーは100年前の鉄人にとどめを刺した武器だそうだ。

 人間には作れないだろうから、たぶんパクられて、そのままやられたってところじゃないかな。


 その後使い方がわからなくなって、伝説の武器になったらしい。

 握ってる俺の手からエネルギーを吸われてる感覚があるから、単にバッテリー切れだったんでしょ。

 てか、使えない物を下賜するとか教団も頭悪いな。持たされた奴は有難迷惑だろ。



 使えないハズの武器を俺が使っちゃった事で、俺の立ち位置が一段と微妙になってしまった。


   魔王+勇者+エルフの王 = 世界の調和者


 捕虜の頭の中では、こんな数式が出来上がってるらしい。

 なんだよ、世界の調和者って!

 どんどんスケールが大きくなってるだろ。


 捕虜たちの俺に対する崇拝が凄くて、殺すのも追い出すのもチョット気がひける。

 捕虜たちに甘くすると、エルフたちの信頼を失う。

 エルフたちを優先させると、捕虜たちの崇拝が暴力性に置き換わる。


 どうしたら良いんだろう。


 ムムムム。


 極論、捕虜たちの暴力がエルフに向かわなければ、丸く収まるんじゃね?


 ここは眷属の協力を得て一芝居うつか。




「こ、この剣は、100年前に鉄人より奪われた伝説の剣に違いあるまい!」


「へー。人間は、とんでもねえ連中っすね」


 マキさん。人間の為に働くのが嫌なのはわかるけど、もう少しヤル気を出してくれよ。

 テンション下がりまくって、芝居だとバレちゃうじゃないか。


「だが、伝説の剣は我の手に戻った。我に信純するならば慈悲を与えよう」


「慈悲っすか」


「うむ。罰として我が軍の先鋒を命ずる。しかしその勇気を示した者には略奪の権利も認める。人間の兵士たちよ。返答は如何に」


「ハッ。御意のままに! 我らの大罪はこの身をもって償いいたしまする!」


 うん。単純な奴らで良かった。

 マキの大根芝居でもなんとかなったね。


「へえ。逃げようとしたら背中から撃つので、遠慮しないで良いっすよ」


「この身を惜しむ事などない!血肉となるまで戦うのみ!」


 マキさんや、わざわざ喧嘩を吹っ掛ける必要は無いよ。

 エルフにヘイトが向かないように一芝居してるのに、自分からヘイト集めてどうすんの。


 これで教団や権力者を敵だと認識したでしょ。ついでに略奪の権利というエサもぶら下げた。

 とはいえ、既に相当な被害を与えたので暫く戦闘は起きないと思うから、拠点内の仕事を割り振って働いて貰おう。




 さて、捕虜が永住する事になったので寝床くらいは提供しよう。

 急に人口が増えても、元々村にあった家の数では足りないのだ。


 ステータス画面をポチポチして探すが、さすがに家は作れない。

 家として応用できそうな物を探す事、数分。上下左右前後、全ての壁が鉄板で出来ている頑丈な箱を見つけた。コンテナである。

 色々なサイズがあるが、コスパ的に大きい物を選択した。数人の共同生活で我慢してもらおう。居住環境としては最悪だけど、雨風を防げるだけ良いと思ってくれ。

 あまり良い生活をさせても、エルフたちからの反感が出るからね。多少の苦痛を感じる程度で丁度良い。

 勿論、素材は元捕虜の装備や、火炎放射器で燃え残った様々な素材を使いますよ。


 次は防衛施設の強化だ。

 以前、物見やぐらを作ろうと思ったが、製造出来なかった。

 無人機が1機しかない現状、やはり周囲を監視する塔は必要だろう。


 うーむ。ちょっと試してみよう。


 “塔”そのものは製造出来ないが、鉄板、角材、釘、金槌は製造出来た。

 ちなみに角材は森の木を切り倒してパクパクしたら、乾燥済みの製材された木材になったよ。ただし年輪の無い不思議木材だけどね。


 よし。これだけの材料が有れば大丈夫だろう。

 眷属召喚!


「マキよ。この材料を使って、村の四方に外を見張れる塔を作れ」


「へぇっ!! 恐れながら鉄人様! 我らの中に大工はおりませぬぅぅ」


 ですよねー。なんとなく知ってた。

 マキが住んでた村の家は、大きな葉っぱを積み重ねて円錐形にした竪穴式住居だったね。


「世界の調和者様。エルフどもには出来ずとも、我々なら出来ますぞ」

「世界の調和者様。エルフどもとは違い、木材での塔の建築は兵士のたしなみでござる」


 呼んでもないのに、元捕虜たちがワラワラと集まって来たよ。

 そして無駄にエルフのヘイトを集めてるし。


 君達、なんなの?

 仲が悪過ぎて、一周回って、仲良しさんなのかな?

 どっちがトム役で、どっちがジェリー役なのかな?


 まぁ。

 塔が出来るならどっちでも良いや。





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