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俺はステータス画面をポチポチしながら金属加工に使えそうな物を探している。
壁を作るのに、鉄筋で大量に使ってしまった。
それに加えて、エルフたちが訓練で惜し気も無く撃ちまくってる。
ぶっちゃけ、鉄不足なのだ。
この村の中では鉄鉱石が見つからなかったので、製鉄に必要な施設も村には無いのだろう。
鉄鉱石を俺が直接パクパクしても良いのだけど、純度が低いと効率が悪い。
この世界の鉄鉱石の純度がわからないけど、仮に俺が生きてた頃と同等とした場合、不純物を除いて酸化鉄の酸素を還元して鉄を取り出すと元の鉄鉱石の半分以下の量になると思う。
鉄は大量に使うので必要量の2倍もパクパクするのは時間的にキツイ。
どうにかして鉄の純度を上げたいのだ。
でもステータス画面を見る限り、俺が製造できるのは製品だけのようだ。
高炉のような工場や工場を作る部品は製造出来ないらしい。
たたら製鉄でも良いから、なんとかエルフたちに技術を習得させて、製鉄をマスターしてもらいたい。
ちなみに、燃料は生体素材から製造出来るので問題ない。
今はまだ鉄鉱石を入手する手段が無いので、一旦棚上げだな。
鉄鉱石の目処が立った時の事を考えて、状況を眷属のマキに説明しておこう。
と、思って周囲を見渡すと、エルフたちが壁の外の誰かと、何か揉めているようだ。
いつの間にかエルフたちは、壁の内側に足場を作って外を警戒出来る体制を整えていたのだ。
なんだか、一触即発って感じだけど、問答無用で殺し合って無いという事は、相手は人間じゃないって事だろうね。
もし相手が人間だったら、揉める所か会話する前に撃ってると思う。
「汝ら、我の導きが必要か?」
「あっ!鉄人様! 鉄人様の御意思を賜う程の事ではございません」
「・・・待て。まず、委細を、話せ」
「はっ!恐れながら申し上げます。流浪の民パーブエルフが壁の中に入りたいと、厚かましく不作法で無遠慮で不相応な図々しい事を・・・」
ちょっ!
ちょっと待って!
厚かましいも、不作法も、無遠慮も、不相応も、図々しいも、全部似たような意味だけど、そこじゃなくて!!
流浪の民って言った?
「・・・ダークエルフ?」
「鉄人様。ダークではなく、パーブでございます」
え?
白エルフでも黒エルフでも無いの?
何色でも良いじゃん。仲間が増えれば防衛も強固になるんだから、中に入れてあげようぜ!
「ふむ。汝らとは敵対してる民なのか?」
「い、いえ。敵対は、しておりません・・・」
んーー。なんだろう。微妙な言い方だね。
眷属のマキなら、その微妙なニュアンスも伝えてくれるんだけど、今は近くに居ないしなぁ。
まぁ、敵じゃ無いなら受け入れても良いでしょ。もし問題を起こすなら、とっ捕まえて放り出せば良いだけだし。
リスクよりもリターンの方が大きいんだから、断る選択肢は無いよね。
「構わん。入れてやれ」
「は! 鉄人様の、仰せの、ままに・・・」
俺がズズズーッとコンクリートの壁を動かして隙間を作ると、ぞろぞろと50人くらいのパーブエルフが入って来た。
男性は1割くらいだろうか。全員黒いローブを頭から被ってるから怪しい集団に見えるぞ。
ゲームで登場したら、絶対に黒魔術をヤッてるね。
全員壁内に入った所で、代表者が一人俺の前に出て来た。
ローブを脱ぎ、両膝をついて両手の甲も地面につけて挨拶が始まった。
「我ら、古の契約により参上しました。我らの全ては鉄人様のために。グフフ……」
契約とか言われても、それ、俺じゃなくて同型ボディの誰かだと思うよ。
説明しても理解してもらえるとは思えないけど。
それよりも!
服装がスゴイよ。ゲームで言う踊り子のコスチュームだよ。羽根が無いリオのカーニバルだよ。
服に分類してはいけない程、布の面積が極小のセクシー衣装だよ!
それを着てるのがボンキュッボンのナイスバディって、もう反則だよ。
生身の肉体で会ってたら、一生お辞儀のまま生活する事になってたね。
まぁ。1つだけわかった事がある。
このエゲツないオッパイと、エゲツないファッションのせいで、未亡人エルフが乗り気じゃ無かったのね。
趣味嗜好の違いから流浪を強要されてたんなら、少しだけ同情しちゃうな。
ハッ!!
今みたく思考誘導されるのがわかってるから、俺と合わせたく無かったのか。
エルフの社会も女のネタミって恐ろしいな。
俺、ロボで良かったよ。
何か有ってもチョン斬られるモノが付いて無いからね。
「生活の事は、我が眷属、マキから説明を受けよ」
「ハッ!」
そう言えば、最初にこの場所の名前を“新しいエルフの村”って説明しちゃったけど、別の部族が合流したから変えないとマズイよね。
今はまだ種族としてはエルフしか居ないけど“エルブヘイム”とかに改名した翌日にドワーフが来たら大惨事だ。
名前を付けるにしても、この世界のタブーを知らない俺が超ハイセンスなネーミングをしても地雷を踏む可能性があるからなぁ。
困った時の眷属召喚!
「マキよ。ここも人数が増えた。この地に名が無いと不便であろう」
「はい!鉄人様」
「この地に名付けをする栄誉を我が眷属、マキに授ける。好きに名を付けるがよい」
「えっ? ええぇぇぇ!!! い、い、良いんですかぁぁぁぁぁ!!!!!」
いつもの土下座から五体投地に切り替わったな。
そこまで行くと敬ってるのかバカにしてるのかわからないぞ。
「で、で、では不肖マキ。鉄人様の巫女にして『初代国王』として、この地に名前を付けさせていただきます!」
「・・・本日よりこの地は、平和に暮らすという願いを込めて、古代エルフ語の最強を意味する『モッコリ』と名付けます!!」
マキさん、マジですか!?
色んな意味で、マジですか!!




