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 ~side 神聖帝国コンファールト~



 吾輩は宰相のニャンガンである。


 先日、あの忌々しい勇者が出陣セレモニーの最中に爆死したのである。

 勇者が死んだのは良かったのであるが、集まった大勢の人たちも巻き沿いを喰らったのである。

 吾輩も立派な猫耳を失う所であった。

 宝物庫から失敬していた上級回復薬が手元に無ければ、危なかったのである。



 今日は貴族たちが集まって、くだらない会議をする日なのである。

 いつもの会議であれば、話し合い5分飲み会1時間という流れであるが、流石に今回は違うであろう。


 上座の一番立派な椅子に踏ん反り返って座る男が口を開いた。


「諸君。今回の議題は・・・鉄人の再臨についてだ」


 次の瞬間、会議場が大混乱に陥った。

 悲鳴を上げながら自分の髪をかきむしる女。

 つっぷしながら何度も頭を机に叩き付ける老人。

 すわったまま口から泡を吹き気を失う青年。

 立ち上がろうとして椅子に引っ掛かり、地面に倒れ伏す者が一番マトモな状態であった。


 そんな中、男は言葉を続けた。


「皆の気持ちはわかる。だが真実なのだ。現にベルガー卿が治めていた砦は崩壊した」


「王よ!それは本当か!?」


「なんてことだ!あぁ神様!」


「ベルガー卿はたった1000人のエルフの女子供を食料として供給していただけなのに!」


「鉄人には人の心というものがないのか!?」



 他国に攻め入り、他国を併呑するのは理解出来るであるが、その国の民を捕まえて食料として供給する意味がわからないのである。

 そんな事をしなくても我が国は充分な食料生産を行っているのである。

 吾輩は鉄人という存在を良く知らないのであるが、鉄人の方が常識的な判断をしていると思うのである。


「更に、鉄人討伐に立ち上がった勇者と1000人の冒険者たちが、鉄人の卑劣極まる悪辣で邪悪な呪術によって討たれた。鉄人はもはや《魔王》となったのだ」


 なんだか話が大きくなってきたのである。

 あのセレモニーに冒険者は1000人も集まらなかったのである。

 第一、セレモニーで起こった爆発が鉄人によるものとは限らないのである。


「特級冒険者《廃業のイプシロン》のザオ・ユッシラ、《盗んだ財布》のラウリ・マランも討たれた。そこで私はここに、聖'sノール(セイズノール)軍の結成を提案する」


 つまり、無理矢理に聖戦とする事でウィンダミア教からはお金を出させ、貴族や領主からは兵士を出させるのである。

 協力を断れば背信者とされ、報復を受けるのである。


「鉄人はケイオスの街に忌まわしき魔王城を作りおった。普段のいさかいを忘れ、互いの手を取り戦うべきではないか!」


 勝手に王様が魔王と言い始めただけで、誰も魔王とは言って無いのである。

 宗教的意味を持たせる為に、魔王に仕立て上げ、聖戦と言い張って、金と兵士を出させただけである。


「100年前に鉄人が現れた時は1万人の兵で打倒したという。ならば今こそ当時の再現を!」


「「「おぉ!聖戦だぁ!!」」」


「「「正義の戦い、栄光の勝利は我々のものだ!!」」」



 さて、吾輩はそろそろ荷物を纏めて、この国を出る準備をするのである。

 この戦いに勝っても負けても、被害は甚大なのである。

 今までこの国の蹂躙に耐えて来た周辺の国が、それを見逃す訳が無いのである。


 戦いに勝っても負けても、この国は終わりなのである。

 沈むとわかってる船からは、サッサと降りるのが吉なのである。


 猫人の吾輩にとってこの国は、故郷でも何でもないのである。

 一緒に心中する義理は全く無いのである。


 この会議が終わったら、夜逃げの準備をしに帰るのである!



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