オープニング
(壮大なオーケストラが奏でるテーマ曲。宇宙空間から始まり、古代遺跡、歴史的な戦いの場面、そして近代都市へと目まぐるしく移り変わるCG映像。最後に光り輝く「歴史バトルロワイヤル」の番組ロゴが画面中央に大きく映し出される)
あすか:(テーマ曲が静まるとともに、スポットライトに照らされて優雅に一礼する。ヴィクトリア朝風の探検家ドレスは知的なネイビーブルーで、胸元にはアンティークの羅針盤のようなブローチ。手には古代文明の模様が刻まれた薄型のタブレット「クロノス」を持っている)
「ようこそ、時空を超えた知の殿堂へ!『歴史バトルロワイヤル』、ナビゲーターのあすかです。私は、歴史という壮大な物語の声を聞き、その真実の響きを皆さまにお届けする案内人。今宵も、遥かなる時の彼方より、偉大なる魂たちがこのスタジオに集結いたします」
(あすかがクロノスを操作すると、スタジオの巨大ホログラムスクリーンに、回転する地球が映し出される。その表面に、次々と歴代の帝国領土がハイライトされていく)
あすか:「今宵のテーマは…『最大の帝国』。その言葉の響きには、抗いがたい魅力と、そして数多の野望が秘められていますわね。ある者は領土の広大さを誇り、ある者は後世への影響力を謳う。またある者は、その民の数こそが力だと説き、あるいは、長きにわたりその威光を保ったことこそ真の強さだと主張するかもしれません。一体、何をもって『最大』と呼ぶべきなのでしょうか?その答えを求め、今宵、歴史にその名を深く、そして大きく刻み込んだ四方の皇帝、そして女王陛下が、時空を超えてこの論戦の場にお集まりくださいました!」
(ファンファーレが高らかに鳴り響き、スタジオ奥に設置された円形のスターゲートが眩い光を放ち始める。ゲートの内側には渦巻く星雲のような映像が映し出されている)
あすか:「それでは、心してご照覧あれ!まず、最初のゲートが開かれますのは…七つの海を支配し、その版図は地球の陸地の実に4分の1に及んだと謳われる、栄光の大英帝国よりこのお方!19世紀、世界の工場として、そして世界の銀行として、その頂点に君臨した『ヨーロッパの祖母』!ヴィクトリア女王陛下、ご降臨です!」
(スターゲートから、ヴィクトリア女王がゆっくりと歩み出る。威厳を保ちつつも、やや緊張した面持ちで周囲を見渡している。衣装は黒を基調としたシルクのドレスだが、暗くなりすぎないよう紫の差し色が入り、ダイヤモンドのブローチが輝いている。小柄ではあるが、背筋を伸ばしたその姿には、一国の君主たる威風が漂う。あすかが促すと、指定された席へと進み、静かに腰を下ろす)
ヴィクトリア女王:(軽く咳払いをし、細い声だが芯のある口調で)「…このような場に招かれるとは、まことに…不思議な体験ですわね。わたくしが知る世界とは、少々趣が異なるようですけれど。」
あすか:「ようこそお越しくださいました、女王陛下。続きましてご登場いただきますのは、一代にしてモンゴルの遊牧部族をまとめ上げ、ユーラシア大陸を疾風の如く席巻!歴史上、最も広大な連続陸上帝国を築き上げた、モンゴル帝国の初代皇帝にして創始者!その名は武勇の代名詞!テムジンこと、チンギス・カン陛下!」
(スターゲートが再び激しく光り、中からチンギス・カンが姿を現す。毛皮の縁取りが施された質実剛健なモンゴルの伝統的衣装「デール」を身にまとい、腰には武骨な剣を帯びている。鋭い眼光でスタジオ全体を睥睨し、その体躯は長身で屈強な印象を与える。他の対談者たちを一瞥すると、フンと鼻を鳴らし、あすかに示された席にどっかりと腰を下ろし、腕を組む)
チンギス・カン:(低く、腹の底から響くような声で)「…奇妙な幕屋だな。して、ここで何が始まるというのだ?我が名はチンギス・カン。テムジンは幼名よ。」
あすか:「これは失礼いたしました、チンギス・カン陛下。そして、次なるお方は、伝統と旧習にまどろんでいた大国ロシアに西欧の風を吹き込み、軍事、行政、文化の全てにわたる大改革を断行!バルト海への出口を切り開き、ロシアをヨーロッパ列強の一角へと押し上げた、不世出の改革者!ロシア帝国の初代皇帝!ピョートル大帝陛下!」
(スターゲートから、長身のピョートル大帝がやや猫背気味に、しかしエネルギッシュな足取りで登場する。質素だが機能的な西欧風の軍服をきびきびと着こなし、その目は好奇心に輝いている。周囲を興味深そうにきょろきょろと見回し、時には身を乗り出すようにしてスタジオの機材を覗き込もうとする。あすかに席へ案内されると、他の二人とは対照的に、落ち着きなく椅子を少し動かしたりする)
ピョートル大帝:(早口で、ややがさつだが力強い口調で)「おお!これはこれは!何とも不思議なカラクリだ!我が国の職人にも見せてやりたいものだな!ピョートル・ミハイロフとでも呼んでくれ、堅苦しいのは好かんのでな!で、あんたが噂の『案内人』か?面白い、実に面白い!」(チンギス・カンを指差し)「そちらの御仁は…なかなか骨がありそうだ!」
あすか:「お気に召したようで何よりです、ピョートル大帝陛下。そして、最後にご登場いただきますのは、18世紀、世界最大の人口と広大な版図を誇り、その治世は『康乾の盛世』と称えられた中国最後の帝国・清の最盛期を現出せしめた偉大なる名君!学問芸術を愛し、文武両道に秀でた聖帝!乾隆帝陛下!」
(スターゲートから、乾隆帝が悠然とした態度で歩み出る。金糸銀糸で龍や吉祥文様が刺繍された豪華絢爛な龍袍を身にまとい、その顔には穏やかな笑みを浮かべている。手には白檀の扇子を持ち、時折それを軽く開いてみせる。騒がしいピョートル大帝を一瞥するも特に表情を変えず、静かに、しかし確かな威厳をもって席に着く)
乾隆帝:(落ち着いた、深みのある声で)「…星霜ここに極まれり、といったところか。このような形で、異なる世の者たちと相見えることになるとは、天の配剤もまた測り知れぬものよのう。」
あすか:(全員が席に着いたのを確認し、改めて一同を見渡して)「皆さま、時空を超え、ようこそ『歴史バトルロワイヤル』へ。今宵は、皆さまが築き上げ、あるいはその頂点に立たれた『帝国』について、そしてその『最大』たる所以について、存分に語り合っていただきたく存じます。まずはこの壮大なるテーマ、『最大の帝国』。これを耳にされ、皆さまはそれぞれ、どのようにお感じになられましたか?ヴィクトリア女王陛下から、お言葉をいただけますでしょうか。」
ヴィクトリア女王:(背筋を伸ばし、手元の扇子を静かに開閉しながら)「『最大』…まことに重い言葉ですわね。わたくしが即位いたしましたのは、まだ18の少女でございました。それから60有余年、大英帝国は日の沈むことのない広大な領土を持つに至りました。しかし、わたくしが思う『最大』とは、単に地図を赤く塗りつぶすことではございません。それは、法と秩序、そして何よりも、わたくしと愛するアルバートが大切にしてきた家族の絆…そういった文明の光を、世界隅々まで届け、人々の生活を豊かにし、道徳的な模範を示すこと。それこそが、真の帝国の『偉大さ』であり、『大きさ』だと信じておりますの。」
チンギス・カン:(ヴィクトリア女王の発言を鼻で笑うように)「フンッ。女子供の戯言に聞こえるな。法だの秩序だの、絆だの…そんなものは強者の手慰みよ。真の『最大』とは、力!絶対的な武力で敵を打ち砕き、服従させ、我が馬蹄が踏みしめた土地の広さ、そして天の意思のもとに従えた民の数!それ以外に何があるというのだ?我がモンゴルは、かつて誰も成し得なかった広大な大地を一つにしたのだ。それこそが、紛れもなき『最大』の証であろう!」
ピョートル大帝:(身を乗り出し、興奮した様子で両手を叩きながら)「おお、そちらの髭の殿は話が早そうだ!だが、過去の栄光だけでは腹は膨れんぞ!『最大』とは、未来をどれだけ変えたか、だ!我がロシアは、お前さんたちのような古い帝国の時代から見れば、ただの氷と泥にまみれた辺境の国だったかもしれん!だが、この私、ピョートルが!(自分の胸を叩き)その全てを叩き壊し、西欧の進んだ知識と技術を叩き込み、眠れる熊を叩き起こしてやったのだ!海軍を作り、新しい首都を築き、ロシアを世界の舞台へと引きずり上げた!この変革のエネルギー、その『大きさ』こそが、真の『最大』ではないのかね!?」
乾隆帝:(ピョートル大帝の熱弁を静かに聞き終え、ゆっくりと扇子を動かしながら)「…若き皇帝殿の意気は買う。なれど、焦りは禁物。真の『大』とは、一朝一夕に成るものではない。天意に適い、民を安んじ、文化を涵養し、数世代にわたり泰平の世を築くこと。それこそが、揺るがぬ『大』の礎よ。我が清朝は、広大な版図を治め、4億を超える民を養い、数々の経書や史書を編纂し、文化の華を咲かせた。これみよがしの武力や、目先の変革だけでは、いずれ砂上の楼閣と化すことを知るべきであろうな。」
あすか:「ありがとうございます、皆さま。それぞれのお立場から、『最大』という言葉に対する熱く、そして深いお考え、ひしひしと伝わってまいりました。ヴィクトリア女王は文明の光と道徳的模範を、チンギス・カン陛下は圧倒的な武力と版図を、ピョートル大帝陛下は未来を切り開く変革の力を、そして乾隆帝陛下は民の安寧と文化の隆盛、そして長期の安定こそが『最大』の証だとお考えなのですね。いやはや、これは冒頭から火花が散っておりますが…。」
(あすかは楽しそうに微笑み、クロノスを操作する)
あすか:「まさに、それぞれの帝国が誇る『最大』の側面は多岐にわたります。それでは、ここから各ラウンドで、それぞれの帝国の『最大』たる所以を、具体的な事実と、そして時には熱い魂を込めて、存分に語り合っていただきましょう!最初の戦端は、一体どこから開かれるのでしょうか…!」
(スタジオの照明が変わり、次のラウンドへの期待感を高めるBGMが流れ始める)