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8話 職業選択の自由

 神殿に入ると、長椅子がずらりと並んでいた。

 教会みたいだ。

 右奥には扉がある。その少し手前に、部屋の奥の中央に台座があった。

 一人の男が、台座の後ろに立っていた。

 ちょっと背が高めの帽子。真っ白な服、元いた世界の神父さんが着てそうな祭服。

 歳は三〜四十歳ぐらい。中年だ。


 ライカは、迷わず男の元へ歩いていく。俺も後を追う。


「こんにちは。司祭様」


「はい。こんにちは」


「実はこの方、ハラダさんと言うのですが、異世界転移者様でして、カードがないのです」


「なるほど」


「神託を受けたいので、ステータスボードをお借りできますか?」


「どうぞ。お使いください」


 あれー? 門番のように異世界転移って言葉に驚いてないぞ。


「異世界から来たと信じたのか?」


「はい。たまにいらっしゃいますから。そうですね。バラツキはありますが、数年に一人といったところでしょうか」


「そうか」


 俺はライカを見る。


「私は知らなかったんですよ。会ったことも聞いたこともありません!」


 ライカは、手をばたつかせながら言い訳をする。

 司祭が、庇うように言った。


「普通は隠したがりますからね。おとぎ話のせいで変に期待されますから」


 ふーん。そんなものか?

 俺は堂々と目立ちたいけどな。

 期待が重いのか。


「逆にあぶれ者が異世界人を語ることがあります。ステータスボードに親指を置けばすぐ嘘だと分かるのですがね」


「あぶれ者?」


「事情があって十二歳の誕生日に神託を受けられなかった者が、その後も受けられず大人になってしまった。あるいは犯罪を犯した等でカードを隠したい者ですね」


「そうか」


 門番が俺をあぶれ者だっと思ったのは、堂々と異世界人だと宣言しだからかもな。


「ではステータスボードに親指を置いてください。左右どちらでも構いませんよ」


 俺は台座の上にあるステータスボードを見る。俺のそれとは少し違うようだ。外側の材質が金属、恐らく銅なのである。俺のはプラスチック。

 ステータスボードの中央に親指を置く。指紋認証みたいだな。

 先ほどの温泉でのライカがやってた取引きの時のような淡い光が出て、ステータスボードの上にカードが現れた。

 カードにはこう書かれている、

 

 名前 原田 哲夫

 職業 無色  年齢 16

 犯罪歴 なし


 やっぱり無職かよ!

 と思った。


 カードを見た司祭が、この時になって驚く。


「本当に異世界の方なのですね」


 やっぱりそれなりに珍しいらしい。信じてなかったらしい。

 

 「無色とは、つまり白紙。自分で職業を選べるのです。これは異世界から来たものだけに許される特別なことなのですよ」


「やっぱり、ハラダさんは凄いんですね!」


 とライカが拍手しながら、はしゃいでいる。

 よく見ると無職じゃなくて、無色だった。


 とは言え、こちらの世界の職業について俺はまだ何も知らない。

 どうしたものか。

 やっぱり己の身体を武器に戦うのが、漢らしいーだろ。

 俺はライカに聞いてみた。


「身体で戦う職業には何がある?」


「そうですねー。えーと、分かりません!」


 そっかー。分からないかー。

 ってなんでだよ! この世界で十七年生きてきたんだろうが!

 そう言えば、戦闘職の例も偏っていたな。剣系統に。

 待てよ。俺も興味ない分野の職業について、詳しくは語れない。

 すまんライカ。俺は心の中で責めてしまった事を、心の中で謝った。


「格闘家、ボクサー、キッカー、柔術家などがありますね」

 

 とは司祭の言葉。流石に詳しい。

 そうだな。俺は柔軟に身体全体を使って戦いたい。


「格闘家がいい。格闘家になれるか?」 


「はい。もちろんですよ。ステータスボードに親指を置き、念じてみてください。伝承通りなら、それで神託が降りるでしょう」


 俺は再びステータスボードに親指を置く。今度はカードがあるので、手前側の端の中央に置いた。

 心の中で念じる。


(俺は格闘家になる!)


 するとまたカードが淡く光った。

 職業が、格闘家になった。

 おー、少しワクワクしてきたぞ。

 

 カードを取ると、台座のステータスボードには、俺のステータスが表示されていた。


 職業 格闘家 レベル1(レベルアップ可能)

 力 25

 体力 25

 耐久力 10

 俊敏性 25

 魔力 5

 聖魔力 5


 えっと多分、あんまり覚えてないけど、力、体力、俊敏性が上がってる。

 代わりに魔力と聖魔力が下がっているっぽいな。


「わー、凄いですね。普通の成人の能力値が大体10なんですよ」


 ライカがステータスボードを見ながら驚いている。


「そうですね。レベル1とは思えない数字ですね。格闘家になのに魔力や聖魔力が残ってるのも珍しい」


 司祭も驚いている。

 もしかして、俺、格闘家にむいてる? 普段から鍛えてた甲斐があったぜ。

 ただ耐久力は人並なんだ。

 これから戦うわけだろ? ちょっと心ともないな。

 俺の感は当たってたらしい。

 司祭が忠告してくれた。


「ただし、耐久力は人並みです。鎧を着ることが難しい、死にやすい職業ですから、油断なさらずにおごらずに精進してください」


 そうなんだ。ちょっぴり後悔。

 いやいや、俺は一度決めたことにあーだこーだ思わない!

 それに俺には『異世界ポイ活』がある。他の人達より有利なわけだ。『ジャブ強化』の効果もエグかったしな。

 格闘家で世界を制す。

 漢なら世界最強を目指してやる!

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