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6話 門番とのやりとり

 門には門番がいた。全身が隠れるような重そうな鎧を着ている。

 門番は俺たちに気がつくと「カードを見せて」と言った。

 と同時に鼻に手を当てる。俺か。俺のゴブリンのせいか。

 結構、ショックだなあ。


 ライカがカード、免許証みたいなカードを見せていた。ただ写真はなく、文字がいくつか書かれている。

 クサビ形文字みたいな変な文字だが読めた。

『異世界語翻訳』のおかげだろう。

 上から、こう書いてあった。


 名前 ライカ

 職業 農民  年齢 17

 犯罪歴 なし

 

 シンプルだ。

 だが、門番はライカのカードを見ない。

 鼻に手を当てたまま、迷惑そうに言った。


「なぜ、ゴブリンをアイテムボックスにしまわない」


 俺の方を睨みつける。


「無職だからだ。アイテムボックスはまだない」


「見た所、十二歳以下には見えないが、どういうことだ?」 


「転移者様なんですよ」

 ライカは誇らしげに言うが、信じてもらえなかったようだ。


「ほう」


 とだけ言って、門の内側にいる、町から外に出る者をチェックしてただろう門番に声を掛ける。


「また、あぶれ者だ。今度はゴブリンを持って来やがった。至急、冒険者ギルドに使いを出してくれ」


「はっ」

 と部下らしい内側の門番は、手紙らしきものを書き、それを肩にいた鳩っぽい鳥の脚に結びつけ、飛ばした。


「門から少し離れて待ってろ」


 外側の門番は冷たく言った。

 俺は素直に従って、門の横の草むらに行く。五メートルぐらい離れる。ゴブリンを降ろして、少し気が楽になる。

 はぁ。でも、ショックだ。

 ライカは再度カードを見せながら尋ねていた。


「私も入れませんか?」


 やっと鼻から手を離した外側の門番は、鼻をスンスンと鳴らした。


「通ってよし!」


 ライカー。オレを見捨てるのかー!


「スミマセン。ハラダさん。昼までにキャベツを引き取ってもらわないといけないので、行きますね。すぐ戻りますよ!」


 俺は情けない顔をしてしまったのかもしれない。ライカはすぐ戻るを強調して言った。


 十分後ぐらい待っていると、ローブをかぶった若い男がやって来た。魔法使いかな。と眺めていると、なにやら外側の門番と話している。

 ヒソヒソ話で、聞き取れない。

 魔法使いっぽい人は門番にほうきと麻袋預けて、こちらに来た。

 鼻に手は当てなかった。けれど、一瞬少し顔を歪ませた。だけど、すぐ真顔に戻り、俺に問う。


「私はサブール。ギルドで働いているファイアーマジシャンだ。ゴブリンをアイテムボックスにしまえないのは君かな?」


 「ああ」


「無職なのかね?」


「ああ」


「ならばカードも持っていないな?」


「ああ」


「とりあえずゴブリンは私が焼却する。君の顔は覚えたから、神殿に行ったあとに冒険者ギルドに来なさい」


「報奨金がもらえると聞いたが?」


「カードのない者にどうやって金を渡す?」


「カードが必要なのか?」


「当たり前だろう」


 貨幣がない世界なのかと思った。多分、そうだ。

 あのライカが持っていたカードは、身分証だけではなく、クレジットカードみたいな機能もあるらしい。

 万能カードだな。


 サブールはゴブリンに向かって、手をかざし、「ファイアーフィールド」と唱えた。


 ゴブリンのいる所に火の四角が現れた。その中では激しい炎が踊りだす。

 ゴブリンの姿が見えないほど、激しい炎だ。

 なんだか、髪を燃やしたような臭いがする。

 人が燃える臭いも、髪を燃やした臭いに近いと聞いたことがある。

 ゴブリンが燃える臭いなのだろう。


 数分後、火の四角は消え、骨の粉だけになったゴブリンが現れた。

 物凄い火力だ。


 サブールは外側の門番の方へ行ったので、もう終わったのかと思った。

 だが、違うらしい。外側の門番に渡していた麻袋とほうきを受け取ってこっちに来る。

 ほうきでゴブリンの骨の粉を集め、麻袋に器用に入れていく。

 俺は疑問を抱く。


「アイテムボックスに入れないのか?」


「カードを読み取る前にアイテムボックスに入れたら、私の所有物になるぞ。君への報奨金がなくなるからな」


 うーんとね、よく分かんない。

 そう思ったが、なんだか聞きにくかったので「そうか」と返した。

 

「それでは私は失礼する。神殿でカードが作れたら冒険者ギルドに来なさい」


「助かった。感謝する」


「気にしなくていい」


 サブールはそう言って俺に麻袋を手渡し、帰っていった。


 丁度その時、鐘が鳴り響いた。

 しばらくしてライカが戻ってきた。


「お待たせしまいました。ギリギリ間に合いましたよ」


「もう売れたのか?」


 冗談だと思ったらしくライカは笑った。

「やだなー。ハラダさん。お店に卸したんですよ」


 そう言われてみればそうか。日本でも農家が直接売っているのを見たことはある。

 だけど、卸問屋がいて、小売店があった。そっちの方が一般的だったと思う。


「まずはお風呂! それから、靴屋ですね。最後に神殿で職業を授かりましょう」


「いや、カードを作ったら、この麻袋を持って冒険者ギルドに来いと言われた」


「了解です。じゃあ最後に冒険者ギルドに行きましょう」


 お風呂の優先順位が高いな。

 いやなんとなく分かっている。聞くのが怖いけど聞かなくては。


「俺はまだ臭うか?」


「そんなことない……、とは言えないですね。ゴメンナサイ! えっと、少しだけ……」


 汗だくになりながら、直にゴブリンを担いでたから、臭いも移るよな。

 申し訳なく思う。

 と同時に、町に入るのが怖くなった。

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