表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

17話 メイキングマスター

 ライカの家に着くとシチューの匂いがした。

 ドアを開けると「おかえり」と三つの挨拶。

 俺は「ただいま」と返す。

 ライカにマイカ。それと知らない男がいた。金髪ロン毛を後ろに束ねている。立派なヒゲも金色。

 

「ハラダ君とは初めましてだね。スーグルだ。ライカの父のスーグルだね。よろしく頼むよ」


「ああ。よろしく頼む。世話になってすまない」


「気にすることはない。ゆっくりしていきなさい」


「そうですよ! 命の恩人なんですから! それに困った時はお互い様です」


「ありがとう」


「さあさあ、シチューをどうぞ。今持ってきますね」


 マイカがそう言ってキッチンに向かう。俺は止める。


「夕飯はすませた。申し訳ないが遠慮する」


「そうですか。サトウさんはどうかしら」


「お母さん。サトウさんが帰ってからしまっても腐らないわよ」


「そうねー。そうしましょう」


 しまう、とはアイテムボックスのことだろうな。

 俺はマイカの職業について聞いてみた。


「お母さんは料理人だったんですよ。食材や料理ならしまえます」


「今は専業主婦ね。町まで通うのは辛くて」


「膝が悪いのですよ」


「畑仕事でも手伝える範囲で手伝えれば良いのだけど、邪魔になるしね」


「そんなことないだろう」


「ハラダさん、スキル持ち以外が畑仕事すると害虫を呼び寄せたり、品質が下がってしまうのですよ」


「申し訳ないわ」


「そうか。でも気にするな。俺のいた世界では専業主婦も立派な職業として成り立っていた」


 そこに佐藤が帰ってきた。

 佐藤は四つの「おかえり」に「ただいまっす」と返す。


 「お、この匂いはシチューっすか。俺大好物なんすよ。ウチはカレーばかりで……」


「あら、食べてくださる?」


「申し訳ないっす。明日の朝頂きたいっす」


「そう。分かったわ」


 そう言ってマイカはキッチンに行く。

 ドアを開けっ放しだったので、俺はしまうところを見れた。

 

 アイテムボックスを出して、そこめがけて鍋を傾ける。シチューがドバドバとアイテムボックスに吸い込まれていく。

 

 なんだか、不思議な光景だった。

 結構ショッキング。

 

「それじゃあ、俺たちは部屋に戻らさせてもらうっす」


「もう寝るの? お風呂は?」


「それもサホロで入ってきたっす」


「同じくだ」


「そう。わかったわ」


「あと寝るのはまだっすけどちょっと話があるっすよ」


「どうぞ、自由に部屋を使ってください!」


「助かる。ありがとう」


「感謝っす」


 こうして俺達は部屋に戻った。


「ステータスボードを確認してくださいっす」


「ああ」


 大体五千ポイント稼いで、合計七千ポイントになった。

 お、なんか『ステータス』が点滅してる。

 タップすると、『次のレベルまでの経験値 30/10 レベルアップ出来ます』の文字があった。


 佐藤は俺のステータスボードを覗き込み、「経験値も見えるんですね。俺たちのステータスボードは」と言う。思い出してみれば、神殿では経験値の表示がなかった気がする。


 レベルアップしてみる。力、体力、俊敏性が上がった。

『次のレベルまでの経験値 20/20 レベルアップ出来ます』

 とある。まだレベルアップできるらしい。

 もちろんレベルアップ。

 力、俊敏性が上がった。

 

「普通の人はいつレベルアップ出来るのか分からないっすよ」


「そうなのか?」


「何をしたら経験値が入るのかも不透明です。現在の経験値もレベルアップまでの経験値も見えない。手探りっすよ」


「俺もいつ経験値が入ったのか分からない」


「そうっすよね。俺皿洗いのアルバイトのに前に神殿で職業選んだっすよ。こっそり経験値確認したら、0でした」


「ほう」


「みんなの話を聞くに、多分無職は魔物を倒さないと経験値が入らないっすね。で、戦闘職ならそのまま魔物を倒したり、職務を全うすることで経験値が入る」


「生活職っていうのか。戦闘職じゃないやつはどうなる」


「仕事すればいいみたいっす。八時間の皿洗いで八の経験値入りましたね」


「ちょ、まてよ。お前は戦闘職に就かなかったのか?」


「俺はステータスも低いし、戦うセンスもないのは分かってますからね」


「そんなこと……、あるかもしれないが、異世界ポイ活で強くなれるだろ?」


「何も戦うだけが全てじゃないっす。それにステータスボードでは器用さなんかは隠しステータスになってましたしね。俺そういうのは得意なんすよ。プラモ塗装したり、裁縫したり」


「そうか。一緒に冒険したかった」


「な、なんすか。らしくない」


「ああ?」


「いや、なんでもないっす」


「それで何の職業にしたんだ」


「メイキングマスターを作りました」


「なんだそれ?」


「職人系なら全てできる職っす。俺が考えたんすよ」


「凄いっぽいぞ」


「世界でただ一つっすね。オレが作ったっす。ぶっちゃけチートっすね」


 そんな事が出来るのか。俺は知らなかった。

 平凡な職についてしまった。

 

「ずるいな」


「ずるくないっすよ! 原田さんが短慮なんすよ」


 佐藤は続ける。


「まあ、異世界ポイ活がない人がメイキングマスターになっても、手に余りますからね」


「スキルポイント不足か?」


「そうっすね。それより原田さん。まずガード覚えないと」


「ああ」


 俺は格闘家スキルの『ガード習得』をタップした。

 今まではスキルを習得すると、白くなったのに、今回は赤くなった。


「おい。いつもと違う」


「ああ、それアクティスキルっすね」


「なんだそれ?」


「言葉に出しながら条件をクリアして発動するスキルっす。スキル名長押しで説明出るっすよ」


 俺はガード習得を長押し。

『ガードポーズをとってガードと唱えると5秒間ダメージ20%カット。この効果は全身に作用する』


 佐藤に見せる。


「なるほど。格闘家のガードはダメージカット率が低いけど、全身ガードできるんすね」


「どういうことだ?」


「ガードしてる腕じゃなくて、他の部位に攻撃を受けても、ガード効果が発動するっす」


「ほう」


 多分なんとなく分かった。


「さあ、異世界ポイ活でのポイントで、ガード強化するっす」


 俺は言われるがまま、ポイント交換の『ガード強化1』を習得。百ポイントだった。長押しで確認。『ダメージカット率が50%上昇』と書いてある。

 エグいな。これで俺のガードは70%カットだ。


 『ガード強化2』も交換してみる。千ポイントだった。

 長押しで効果を確認。

 10%アップだった。

 ポイント高かったのに、しょぼい!


 「強化1は凄く上がって、2からは緩やかになるみたいっすね」


 ガーン。ジャブとかもそうなのかな。

 

「あ、アラームなったっす。もう寝ないと」


 俺にはアラームが聞こえない。佐藤だけに聞こえるらしい。

 体内時計で確認すると、二十二時半だった。

 八時間寝るとして、六時半起きか。

 丁度良いな。部屋のランプも無料じゃないだろうし、あまり遅くまで起きるのも申し訳ない。

 俺も寝ることにした。 


 と、忘れてた。歯磨き!

 俺は熟睡スキルのおかげかもう寝てしまった佐藤を起こし、二人で歯磨きした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ