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11話 おい! 待てよ!

 いやー、恥をかいた。

 俺は麻袋を返し、今度こそ冒険者ギルドをあとにした。


 ライカは、買い出しに行くらしい。市場は町の中心にあるそうだ。用事は終わったので、ここでサヨナラしても良かったが、俺もついていくことにした。

 俺は荷物持ちを買ってでる。

 ライカも、ここで別れるつもりはなかったらしく、俺の同行を拒否しなかった。

 ただカゴをどちらが持つかは少しもめた。


「あのですね。ハラダさんの世界ではどうだったか知りませんが、それ失礼ですよ。私のこと下に見てます?」


「そんなつもりはない」


「じゃあこのままでいいですよね?」


「まて。頼むから俺に背負わせてくれ」


「いやですよ」


「まて。周りの目が気になる。男が手ぶらで女が重いもの背負うのは格好悪い」


「じゃあ、私が格好悪いのはいいんですか!」


「そんなつもりは……」


「諦めてください」


「そ、そうだ。俺はトレーニングがしたい。頼む背負わせてくれ」


「もうしつこいですね。わかりましたよ。命の恩人じゃなかったら、断ってましたからね!」


 といった感じ。

 そういえば、ネットニュースでも見たことがあった。

 外国の女のビジネスパートナーに飯を奢ろうとして激怒された。その女の国では見下してることになると。

 今回は言い出してしまった手前、俺も引き下がれなかったが、今度からは気をつけよう。

 自分の見栄のために、相手の気分を害してたら意味がない。


 さて、切り替えて、さっきの疑問を解消しよう。

 質問タイムだ。


「取り引きボードとステータスボードの違いはどうなってる」


「一番の違いは大きさですね。取引きボードは小さいのですよ。お店の規模や種類によっても違いますね。お風呂屋さんではカードより少し大きいぐらいでしたよね。ギルドのはステータスボードより小さかったんですよ」


「ほう」

 

 なるほど。

 言われてみれば、冒険者ギルドの取り引きボードとステータスボードでは、七インチタブレットと十インチタブレットぐらい大きさが違った。

 それに少し驚いた。風呂屋が出してたカードも取り引きボードだったのか。

 

「あとは何も表示されないです。ただ、裏には所属先が書かれているのです。それと、持ち主、お店の帳簿、銀行、役所がリンクされています。不正は出来ませんよー。ちなみにこれは商人さんや受け付けさんのスキルです」


 分からなくなってきた。何となくふわふわと理解した。次の質問に移ろう。


「アイテムホールとはなんだったんだ?」


「ギルドやお店や銀行などに付属するアイテムボックスみたいなものですね。これを開けるのは、取り引きボードスキルを持っている方だけですね」


「なるほど」

 分からん。

 次だ次。


「この世界では所持金をカードで管理するようだが、危なくないか? それになくしたらどうするんだ?」


「普通は必要な分だけカードに残しておきますね。あとは銀行に預けますよ。異世界では違うのですか?」


「いや。すまない。大体そんな感じだ」


「そうですかー。あとなくしようがないですね」


 ライカはカードを取り出し、フリスビーのように斜め上空に投げた。

 何してるんだ! 大事なカードを!

 と俺は焦ったが、カードは上空で消えた。

 ライカの方を見ると、カードを持って自慢げに笑っている。


「驚きました? 私も初めてお父さんが見せてくれた時は驚きましたよー」


「驚いてない」


「ふーん」


 ニヤニヤしながらライカは続ける。


「カードは一度作ると離れてくれません。捨てても、燃やしても、今みたいに投げても、再構築され戻ってきます」


「そうか」


「他に聞きたいことはありますか?」


「いや。大丈夫だ。ありがとう」


 結局よく分からないことも多々あったけど、ぼんやりこの世界の雰囲気はつかめた。

 時々、ライカが買った物をカゴに入れるためにしゃがむよう頼まれながら、俺の質問タイムは終わった。


 買い物が終わった頃に鐘がなった。

 気づけば、もう夕方だった。


「もう十八時ですね」


「最後に質問だ。この世界は一日何時間なんだ?」


「二十四時間ですね。ちなみに一時間は六十分で出来てます」


 更に説明が続きそうだったが、俺はさえぎるように言った。


「大丈夫だ。俺のいた世界と同じらしい」 


 しかし、時間は地球の自転で決まってたんだよな。

 この星は地球と同じ速度で回転してるのか。

 じゃあ、公転速度はどうなってる?


「一年という概念はあるか?」


「ありますよ。十二ヶ月。約三百六十五日ですね。時々一日増えますけどね」


「そうか」


 やはり地球と同じらしい。

 未来や過去の地球だったりしないよな。

 

 買い物も終わり、「二十時に門が閉まるのですが、まだ時間はありますね。ご飯はどうします? おすすめのお店があるんですよ!」とライカが提案してくる。


「そうか。ならばそこで食べよう」


 と、飲食店が並ぶエリアに行くことになった。

 近づくにつれ、いろんな料理の良い匂いがしてくる。

 しばらく歩いていると、ライカおすすめの店『五つ星の店 デーモンデーモン』に着いた。

 あー、腹減った。そういえば、朝も昼も何も食ってない。

 店に入ろうとすると、俺は誰かに呼ばれた。


「おい! 待てよ! ハラダ!! てめぇ、この野郎!!」


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