10話 冒険者ギルド
これが冒険者ギルドかー。
大きい一つの部屋。丸いテーブルが五つほどあって、珍妙な格好の人が座っている。RPGゲームをやらない俺にも大体想像がつく格好をした連中だ。
戦士に魔法使いに僧侶に盗賊。
もっとも正確な職業は分からないけれど。
左奥にカウンター。右奥には階段がある。
俺が向かうべきはカウンターだろうな。
「みなさん強そうですね。私あんまり来たことないんですよ。今日で二回目です」
「そうか」
「さあ、行きましょか」
ライカはカウンターに歩いていく。俺も歩いていく。
カウンターには二十代ぐらいの女がいた。バンダナを巻いてるが、ロングヘアーなのが分かる。その髪は茶髪だった。
俺たちに気がつくと声をかけてくれた。
「こんにちは。今日はどのような御用ですか?」
「ゴブリンの報奨金を受け取りに来た」
「あ、もしかしてサブールさんが言ってたあぶれ者さんですか?」
「そうだ。いや違う」
受付の女はキョトンとしている。
「サブールに世話になった者で合っている。ただ、俺はあぶれ者じゃない。異世界転移者だ」
「そうですかー。変わった髪型だと聞いていたので、直ぐには分かりませんでした。すみません」
あー、これ信じてないやつだ。俺のことあぶれ者だと思っている。
まあ、そこで粘っても仕方がない。
「アイテムボックス」と言い、スキルを発動する。
「すまんな。ここからどうして良いか分からない」
受け付けの女は慣れた様子で「かしこまりました」と言い、カウンターの裏の棚から、ステータスボードを取り出す。
俺はライカにヒソヒソ話。
「おい、ステータスボードは神殿にしかないんじゃないのか?」
「やだなー、ハラダさんあれは違いますよ。取り引きボードです」
よく見ると、やっぱりステータスボードにしか見えない。何が違うのかさっぱりだ。
受け付けの女は、多分俺たちの会話を聞こえていて、だからなのか待ってくれていた。
会話が終わったのを確認して言う。
「こちらのボードにカードを乗せてください」
「ああ」
俺は意味も分からず、カードを置く。
すると、カウンターに穴が空いた。
俺は戸惑うが、ライカも受け付けの女も平然としている。
説明を待った。
「こちらのアイテムホールにゴブリンを入れてください」
うーん、説明が足らん!
だから、聞いてみた。
「どうやってゴブリン取り出せばいい?」
「念じるんですよ。ゴブリンを取り出したいと思えば、アイテムボックスは応えてくれます。あ、取り出したい数も忘れずに念じてください」
俺がアイテムボックスを見ると、慌てて受け付けの女がつけ足した。
「アイテムボックスをアイテムホールの上に移動してください。念じたら落ちてきますから」
危ない。俺は床に骨の粉を、ばらまく所だったらしい。
って言うか、アイテムボックスって移動出来るんだ。
触ってみる。触れた!
アイテムホールとやらの上に移動する。
そして念じた。
(ゴブリンの骨、三体分出てこい)
アイテムボックスから骨の粉が出てきた。アイテムホールとやらに吸い込まれていく。
そして、なんだっけ。そうだ。取り引きボードが軽く光る。
「以上で取引きは終わりです」
受け付けの女は俺のカードを取り、手渡してくる。
終わったらしい。
さっぱり何が起きたか分からん。
「いくらになったんだ?」
「ゴブリン三匹で三千エルです」
「そうか」
俺はカードを見てみるが、特に変わった様子もない。
ライカが教えてくれた。
「裏ですよ。裏に所持金が記載されてます」
カードの裏を見てみる。なるほど。数字が書いてあった。確かに三千エル手に入れたらしい。
「それ、本人にしか見えないんですよ」
「そうか」
へー。カツアゲとかの時、全財産持っていかれたら、結構詰みだもんな。都合よく出来てる。まあ、このカードは常識のように定着してるみたいだし、長いだろう歴史の中で、色々進化したんだろう。
「格闘家さんですよね? 冒険者ギルドの登録をしていきますか?」
「何が変わるのか?」
「依頼を受けることが出来ます。後はダンジョンの使用が出来ますね。後は高ランクモンスターの買取り時に少しボーナスがあります」
「ハラダさん。入った方が良いですよ。デメリットはないですし」
「そうか。じゃあ、頼む。登録してくれ」
「かしこまりました。では、もう一度、取り引きボードにカードを置いてください。そして親指も置いてください」
俺がカードを置く。親指を押しつける。
「はいFランクで登録終わりました。このランクでの月会費はかかりません」
ランクが上がると費用が発生するのか。この世界ではデメリットのうちに入らないのかな。
ライカが思い出したように言った。
「先ほどのゴブリンは畑道で遭遇したんですよ! それも刃物を持っていました」
「なんですって! それは妙ですね……。ギルド長には私から報告します。多分、パトロールの依頼が出されると思います」
俺の右後方を見ながら、受け付けの女は言う。
振り返ってみると、大きな掲示板があった。
「その刃物はどうしました?」
「あっ! 置いてきちゃいました。すみません……」
「出来れば回収したかったのですが、仕方ありませんね。今度から、お願いしますね」
受け付けの女は俺を見ている。
そっか。戦うとしたら俺なのか。
「分かった」
俺はちょっと疑問を持ちながらも、頷いた。
後でライカに聞こう。
そうして、俺たちは冒険者ギルドをあとにした。
麻袋返してくださいと声をかけられた。




