1話 金髪リーゼント異世界に行く
今日も決まってるぜ。
俺は自慢の金髪リーゼントを撫でながら思った。
何故か、昔から、小学生低学年から、俺は昭和や平成のヤンキーマンガや映画に憧れていた。
あえて地区内での偏差値最低高校に入学し、高校デビューを飾ったものの、期待してたはずのヤンキーはつまらなかった。
入学式の後、一年生で一番悪そうな奴らとすぐに友達になった。
そいつらと話すのはまだ楽しかったと思う。だけど時々イラッとすることがあった。
そいつらの中学時代の武勇伝、主にバレてない犯罪歴を聞いてる時だ。
嫉妬だと思ってた。
だけど、昨日、初カツアゲをした時だ。
ヒジョーにイライラしたのだ。
ダセー。
今の俺ダセーぜ。
そう思えて仕方がなかった。
俺が憧れてたヤンキーってこんなんだったか?
違うだろ。
熱い友情、熱いバトル、熱いライバル。
そういうのに憧れてたんじゃないのか。
「やっぱやめとこうや」
俺は友達になったばかりの三人にそう言った。
「あぁ? 今さら何言ってんの?」
「高校デビューって噂本当らしいな」
「ヒビンなよ。こういうダサい連中はチクったりできねーから」
友達だった連中の一人がターゲットにされている真面目そうな、いや真面目そうではないな。
背が小さく肩幅も狭く、とにかく弱そうなヤンキーにそう言って、元友達は肩を組んだ。
俺は正直に言った。
「わりぃ。俺にとってはお前らの方がダサく見えるんだわ」
一番背の大きい元友達が無言で右フックをかましてきた。俺はそれに合わせてカウンターを入れる。
間髪入れずに、キックボクシングをやってると言ってた元友達がローキックを繰り出してきた。俺は軽く飛び跳ね、かわし、着地と同時に後ろ回し蹴りを食らわす。
最後の元友達は虎の威を借るタイプの一番ダサいやつだった。
「どうする? このまま帰るか? 俺とやるか?」と俺の威嚇。
「クソが! 覚えてろよ」
捨て台詞を吐き、他の連中をほったらかしにして、逃げ去っていった。
うめき声を上げ転がってる元友達も、しばらくして起き上がり、こう言って帰って行った。
「先輩に報告するぜ。ただで済むと思うなよ」
俺は内心ビビりながらも、平気なふりをして、男らしい立ち振舞いを想像しながら、弱々しいヤンキーに声をかけた。
「大丈夫か?」
「はい! ありがとうございます! アニキ!」
「俺はお前の兄弟じゃない。アニキはやめろ」
「へへ。そう言わずに。お礼に今取られそうだった半額をどうぞ」
そう言って千円札二枚を差し出してきた。
「いらねぇよ。見てなかったのか? 聞いてなかったのか? 俺はどうやらカツアゲが気に入らない人種らしい」
「そうですか。じゃあせめて友達紹介させてくださいよ」
「あ?」
俺は意味が分からず、聞き返した。
「ポイ活です。ポイント活動。今、俺からの招待コードを入力してくれれば二千ポイントがつくんスよ。招待した人もされた人も」
やつはスマホを見せながら、得意げに語った。
黄色い笑顔マークのアプリだった。
「俺はスマホは持ってきてねぇ」
「持ってないんですか?」
「違う! 家にあるんだよ」
「忘れたんですかい?」
「生徒手帳の校則に書いてあっただろうがよ! 学校にスマホ持ってくるなって」
「ひぃ。怒らないでくださいよ。そんなブラック校則守ってる人なんていないッスよ」
「あぁ?」
「いえ、何でもないッス……」
やつはしばらく考えて、何かスマホを操作していた。そして、スマホの画面を見せてきた。そこには何やらアルファベットと数字が映ってた。
「じゃあ、メッセージアプリのID覚えて帰ってくださいよ。satou1111ッス」
「だからいらねえって。やらねえって」
「それじゃ俺の気が済まないんッスよ」
「あーもう。わかったよ。クソ。面倒臭せーな」
「アザース!」
ってのが昨日の出来事。
昨日は面倒臭くて放置したが、放置したままだと付きまとわれそうだし。それも少し嫌なんだ。
だが、これから先輩たちと揉めるなら俺と付き合いがあると危ない。そっちのが心配だ。
メッセージアプリの友だち検索にsatou1111と入力する。すると多分佐藤って名前の、あの弱々しいヤンキーがいた。
アイコンに自分の写真使うなんてZ世代らしいのか、Z世代のくせにネットリテラシーが足りないのか。
ともかく俺は友達希望を送信した。佐藤仮の反応は早かった。
『遅かったじゃないですか。徹夜したんすよ』
『悪い』
『友達招待コードはISEKAIッス。黄色笑顔が目印のアプリッスよ。ポイ活生活ってアプリッス』
『分かった』
俺はストアアプリを開き、『ポイ活』と入力する。一番上に見覚えのある黄色い笑顔が出てきた。
「これか。異世界ポイ活? 確かこれだよな」
それは違った。
アプリを起動すると、目の前がフラッシュ。
俺は異世界に飛ばされた。




