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【完結御礼】社内ニート女子、戦国時代で社長する?! ~ 浅井家の殿として織田信長と戦います ~  作者: 香坂くら


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031 姉川の決戦6


 この頃の姉川は現代の川筋と若干異なり、幾本かの細い支流に分かれてた。

 この流れを利用して、一帯にたくさんの田畑を開墾したんやが、アホな織田兵どもに踏み散らかされて、メチャ腹が立った。

 なので窺見か物見か知らんが、覗き魔みたいな連中を道すがら片っ端に懲らしめた。

 半ば八つ当たりなんやが。

 月も出てない暗闇の進撃ルートは浅井・朝倉合同隊にはこれ以上ない好条件やった。


 先ほど支流って言ったが、この時期の姉川は瀬切れ状態、つまりは水無川に近く、川向うに移動するのは容易やった。

 そして、渡河してすぐに木瓜の旗印どもに出会った。

 わたしは現代人やし、ずるっこなんで、旗なんてもんは一切お城に置いて来た。だって目立つもん。

 正々堂々?

 んなもん、知るか。


 それと鎧と兜。これも可能な限り排除した。だって重いしね。

 魔法会社の専務にお願いして防刃ベストだの、防弾ベストだの、フェイスシールド装備の軍用ヘルメットなんかを可能な限り調達してもらい、作戦参加者に支給した。

 しょせん一般人がかき集めた物なんで種類がまちまちやし、デザインがいまいちなのもあったけど、気に入ってくれた者は嬉々として着用してくれた。そりゃ中には「もののふ」の精神を捨てきれず、古式ゆかしい侍姿を貫く武士もいたけどもね。


 ただし。

 あえて重い装備をつけてても足を引っ張るのは無し。作戦成功に見合う迅速な行動は要求した。

 足手まといになったら置いて行く。

 隠密行動・ゼッタイなんで、発見されれば一巻の終わりやからである。


 渡河に成功し、信長本隊を捉えたときには安堵と興奮の一息が漏れた。


 ――さて。浅井渡河隊の総数は1500人。


 わたしが900ほど率い、残りを安養寺三郎左衛門、今村掃部助、弓削六郎左衛門にそれぞれ150人ずつに分け持たせた。

 他方、西翼の朝倉防備隊は徳川軍に対峙するために2000人を振り、朝倉孫三郎や真柄十郎左衛門らを支えに、朝倉左衛門督義景殿に大将を務めてもらった。(ひとえに士気高揚のためだ)

 なお遠藤執行役を義景付き与力にし、我ら浅井との連絡将校役を引き受けてもらった。

 

「作戦実行する。以後の10分間、捜索係は織田弾正忠をひたすら探せ。見つけたら生け捕って報せろ。なお降りかかる火の粉は遠慮なく払え。きれいごとは無しや。武器の使用はそれぞれの判断に任せる」


 一同、無言で頷き合う。

 浅井の精兵はそれぞれの役目を果たすべく四方に散った。

 周囲が白みだしたころ、陣各所が騒がしくなった。


 寝惚け顔に長槍を担いだ敵の一隊が塁から飛び出したのをかわきりに、刀身を閃かせた鎧武者が血染めの頸を幔幕の外へ放り投げたり、あちこちで矢が飛び交い合ったり、鉄砲の射撃音が耳を衝いたりした。


 周囲はドッと混乱の文字に支配された。


「そろそろ10分か……」


 今のところ想定通りの展開やが、未だ織田弾正忠の居所が掴めない。

 突入部隊は敵との交戦係と攪乱係、そして捜索係に役割り分担していたが、机上プランのように巧く進行してないんやろ。


 皆には10分経ったら攪乱と捜索は打ち切り、乱戦に持ち込むよう指示している。

 後方をちら見た。


 朝倉隊、2000が計画通り丘陵を占拠し、こちらは旗を翻し、堂々の防護陣を敷いている。

 この後彼らは、徳川軍に対処していく。


 飛び道具の応酬をきっかけに、目覚めた徳川軍がキレたように朝倉防護陣に殺到するのが見えた。


 防護部隊の大将は言わずと知れた朝倉左衛門督義景。

 義景殿には徹底した防戦をお願いしている。

 今頃、ビビりまくってるに違いない。けど正念場ですよ! どうか耐えてくださいね!

 遠藤執行役を補佐につけているから、わたしは何の心配もせずに自分の役割りに専念した。



◇織田弾正忠信長の視点


「何たる失態か!」


 床几を蹴りつけ近場の護衛を殴った。

 やや冷静さを取り戻し反省する。近頃短気になっている。それもこれも浅井備前のせいだ。何かと目障りな事ばかりする。しかも、ここぞというタイミングで愚劣かつ最低な邪魔をする。

 八つ裂きにしても気が治まらん気分だ。


 片膝つきの丹羽が詫びている。


「松明にばかり気を取られておりましたのは我らの落ち度。弁明の次第もございませぬ」


 松明の灯を警戒しろと厳命したのは俺だ。

 その灯が小谷城に点ったのを丹羽は何度も確かめ、俺に報告した。

 接近する松明が無かった事も聞いている。

 そうすると、俺にも落ち度がある。


 要するに、またもや俺は備前をナメていた事になる。


「もういい。ただちに藤吉郎(サル)権六(クマ)を呼び戻せ」

「え? しかしながら、横山城はもう一歩で落ちますが?」

「二度言わせるな。あのような小城、いつでも落とせる。それよりも今は目の前の危機に対処すべきだ」

「はッ、承知しました」


 ぱっと幕が開き、注進が飛び込んだ。

 袴が泥まみれだ。


「恐れながら周囲が田畑のため、思うように隊列が組めませぬ! 同士討ちも多数――!」


 その者の背中が血を噴いた。


「松永弾正久秀、帰参したわよ」

「おお弾正か」

「殿、泣き言をぬかすヤツを赦しちゃダメ。足場が不利ならさっさと戦線を後ろに下げなさいよ」


 やはり地獄に慣れたヤツは一味違うな。

 あの明智ですら、冷静面しているが、まともな指示は出せていない。


「相分かった。二町ばかり引き下がろう」


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