宝石の記憶
開いてくださりありがとうございます。
またもやごく短い、不思議なお話を書きました。
評価・感想お待ちしています。ブックマークも是非していただければと思います。
ある太陽の浮かばなかった朝、快活な少女は夢に沈んでいた。
夢の中の彼女は裸足で草原を跳ね回っていた。
足の裏には柔らかな緑のみがあり、皮膚を傷つける枝葉や虫はその一切が消えていた。
果てのない緑を往くうちに、少女は自身が太陽に乗っていることに気がついた。
熱さも眩しさも感じない、しかし確かに温かなその球体は、ゆっくりと宙を進んだ。
空間は上も、下も、右も、左も、一切が彼女の邪魔をしなかった。
暫くそうしていると、彼女の周りに次々と球体が現れた。
水星、金星、月、火星、木星、土星。
それぞれの形を象った硝子の球だった。
太陽は少女を緑に下ろすと、他の星を連れて天へと向かった。
星々がいよいよ彼女の目には見えなくなったというときに、天は弾け、空には万華鏡が散らばった。
万華鏡はくるくると形を変えながら、暗さを帯びた彼女の目に、その燦爛たる様を映し続けた......。
月が地の奥に落ち、太陽が昇った。
目覚めた少女は、自身の夢に首を傾げた。
何かが足りない気がした彼女は、それを見つけるため、机に大切にしまってあった木箱を取り出した。
その中には、色とりどりの硝子の球と、万華鏡と、天の川の下で満面の笑みを浮かべる2人の少女の写真があった。
少女の中の太陽は、少し浮かんだ。
それと同時に、水でできた宝石が、彼女の目から零れ落ちた......。
最後までお読みくださりありがとうございました。
重ね重ねになりますが、評価・感想、ブックマークをいただければと思います。よろしくお願いします。