第2話 神礼の儀
数年後――僕、ノエル・ド・ラ・クレルドリュンヌは6歳になった。
いま両親に連れられて馬車でとある目的地に向かって移動をしている最中だ。馬車は思ったよりも快適で、少しウトウトしてしまいそうになる。
車内では、父が剣術が得意で~とか、母はかなり魔法の扱いが上手で~とか色んな話をしてくれたような気がするのだが、正直なところほぼ寝ていてしっかり聞けていない。
(これから神礼の儀をするって言ってたけど、いったいどんなことをするんだろ。父に聞いてみよう。)
「父上、僕はこれから一体何をするのでしょうか。」
「おお!そうだな、事前に色々説明しておこうか。」
父が治めるクレルドリュンヌ領のあるルミナス王国では、6歳になるとルミナス王国にある大聖堂の本堂で個人の素質を確認することが可能になるようだ。――これを神礼の儀と言うらしい。
神礼の儀で個人の素質を確認することで、将来に向けてどのような道を進んでいくかの大まかな道しるべにするのが風習らしい。
確かに、個人の適性を見てから進む道を示してあげるというのは合理的で無駄のない風習である。
神礼の儀の前と後では、将来の方向性を定めるだけではなく、教育の面においても大きく変化がある。
神礼の儀までは一般的で画一的な才能教育を施しているが、神礼の儀により個々人の適正が分かってしまうため、そこからは本格的に個々人の適正や才能に沿って天才教育や英才教育が開始される運びとなっている。
教育機関も2年ずつで等級が上がっていく仕組みになっており、8歳から通い始め、小等部2年、中等部2年、高等部2年、最高等部2年で満16歳を迎えて卒業となる。
(全部2年ずつってどんなスピードで教育施されんのよ。ついていけんのか心配だわ。)
ちなみにこの世界の成人年齢は16歳と若い。貴族の家の子息には成人すると貴族の当主として独立するための最低爵位が叙爵される。
成人するまでの16年間で生き抜いていくための術を身に付けなければ、他の新米当主たちに置いて行かれるというかなり実力主義な環境だ。貴族ニートは許されないと言う事だ。厳しい。
もちろん、自分自身の純粋な実力だけでなく、コネでいろいろ画策したりもあるだろうが、コネも本人の力の内と言われてしまえばどうしようもない。頑張るのみだ。
(飲酒解禁まであと10年!くーっ!楽しみだ!)
長々と説明している間に目的地に到着したらしい。訪れたのは王都の大聖堂の本堂。僕の神礼の儀を行う場所だ。
今回は有難いことに大司教様が対応してくださることになった。
「ようこそおいでくださいました。クレルドリュンヌ公爵ご夫妻、ノエル様。こちらの神礼の祭壇にて宝玉の準備は整っております。こちらにどうぞ。」
「大司教様、ご丁寧にありがとうございます。さっそくですが神礼の儀をお願いできればと思います。」
両親が目を輝かせて期待に満ちた面持ちで僕に話しかける。
「ノエル。お前は賢い子だ、なにかすごい素質を備えているかもしれないな!逆に何もなくても心配するな!お父さんがガッツリ鍛えてやるさ!」
「もう、あなたったら。ノエルに変なプレッシャーかけちゃダメ。さあ、ノエル。そこにある宝玉――真っ白く光っている玉に触れてみて。両手で優しく包み込むように。そして神様に祈りを捧げるのよ。神様から祝福を受けて自分の素質が見れるようになるわ。」
僕は一歩前に進み、両親に言われた通りにやってみた。
その瞬間、宝玉から眩い閃光が走り視界が白に染まった。
<次回予告>
走る閃光
神々
絶句
ステンドグラス
代行者
宝玉に触れた男は、一体どうなってしまうのか。
次回
回復魔法を極めて始める異世界冒険譚
第1章 運命の出会いと回復魔法
第3話
神々の祝福