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第4話 事実と理

 衝撃の事実が告げられた。


「え…?」


 思考が停止してしまった。


 僕は創造神の手によって殺された。


 あの死に至る病は創造神によってもたらされたという事実。


 妹の麻理奈が泣きじゃくり過呼吸にまでなり、日々憔悴しきった笑顔で笑う。今も思い出すだけで胸が締め付けられるほど苦しい。


 あの悲劇を引き起こしたのが目の前でさっきまで悠々と会話をしていたこの髭マッチョ野郎の仕業だった。


「なぜ僕を殺した?僕が何か悪い事でもしたってのか!あんたのせいで、妹は傷ついて苦しんで、孤独になった!」


 僕の言葉に神々は表情を変える事は一切なく、さっきまでのフレンドリーな雰囲気から一変してどこか無機質ささえ感じる。


「我々の勝手な都合でお前と妹を引き裂いてしまった事は申し訳ないと思っている。だが、お前のように素質のある人間の寿命を早期に刈り取り、世界のために他世界へと導くことも我ら神々の役目である。許してくれとは言わぬ、この世界の理として理解してくれ。その気になれば、もっと早く事を進めることもできたが、最大限の譲歩としてお前の妹が成人するまで待っていた。」


(なに?もっと早く連れてこられる可能性もあった…?落ち着け。いったん冷静になるんだ。)


「待っていた...ということは僕はもっと早く死ぬ手はずだったってことですか?それに、善人の寿命を刈り取り異世界に送りだして、悪人が長生きをするならば、世の中が悪くなっていくだけでは?」


「そうだ。もっと早く命を刈り取るべきだった。なんせもう時間が無いのだ。そして素質ある善人を他世界に送り出す事によって元の世界の善悪のバランスが大きく変化することはない。特にお前の住んでいた世界の秩序はかなり善の方に向いており大いに安定している。神は全ての世界の秩序を善の方向に調整していかなくてはならない。これは調整であり、その結果として世界が悪くなっていく事はない。全世界という大きなスケールで見てみれば世界は転生者の働きによってより良くなっていっている。これは世界のバランスを守るための所謂システムのようなものだ。」


(なるほど一理ある。たしかに、これから僕が転生する先の世界の話を聞かされたら、その聞いた内容と比べれば元々いた世界は明らかに善に傾向している。表面上かもしれないが世界平和が維持されて安定している。)


 とはいえ、理解してもまだ心はついていかない。


 いきなり理不尽に殺されたこと、そしてなにより妹の麻理奈を孤独にしてしまったことで怒りを抑えきれない。


(合理的だが、やられる側の事を何も考えてない。無茶苦茶だ。あまりにも理不尽だ。)


 だが、すでに決定されていたであろう僕の命の刈り取りの時期を先延ばしにしてくれたのは、目の前にいる創造神様であるのもまた事実。感謝こそすれ恨むべきではないのも分かる。


(ふぅー…落ち着け。もっと冷静になれ…これ以上何か言って神に楯突く者とみなされたら、妹まで危ないかもしれない。)


「もっと早く僕が逝く予定だったのを、妹が元気になるまでの間、創造神様の図らいによって僕に猶予をくれてたって訳ですね。おかげで妹は元気になれました、ありがとうございます。」


「礼など要らぬ。もう少しだけ猶予を与えられれば良かったのだがな。こちらもこちらで、これ以上待つことができない状況だったのだ。詫びと言っては何だが、お前の妹が幸せになれるよう我ら10柱が見守ることを約束しよう。」


 思ってもない神々からの申し出に、驚く。神々が見守ってくれるという。もう何もできぬ死人の僕にとっては願ってもない条件。


 神がそこまで譲歩するなら、自分の使命を全うし、妹の幸せを願うのみだ。これで心残りなく、新しい旅に出られそうだ。


(神様もここまで言ってくれる。もうなるようになってんだ。次の人生をめいっぱい楽しみつくす。待ってろよ、異世界ファンタジー。)


「それは願ってもないことでした。ありがとうございます。麻理奈の事をどうか宜しくお願い致します。」


「気にすることはない。人間の寿命は短いのでな。その代わり、異世界の件を頼むぞ。」


「はい!お任せください。それで…」


「待って待って~!」


 突然、別の声が会話を切った。


<次回予告>


超可愛い


分かってない


病気の移植


大事な事は雰囲気で


産まれる


事実を受け止めた男は、異世界へ向かうのか。


次回


回復魔法を極めて始める異世界冒険譚


プロローグ 死と転生


第5話


真相と転生

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