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回復魔法を極めて始める異世界冒険譚~神々に祝福されし代行者の旅路~  作者: かぷちーの
第2章 激闘の王都と新たな旅立ち
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第1話 鍛錬の成果

 草原に立つ1人の少年がいた。


 少年の前には全長6メートルの漆黒の巨躯をしたサーベルタイガーのような魔物が立ちはだかっている――ダークタイガー。


 FからSSSまであるレートの中で、Aレートに分類される。


 大変狂暴な魔獣である。

 

少年はじっと敵を見つめており、口元には笑みを浮かべている。


 まるで狩る立場にいるのは少年の側であるかのように。

 

 ダークタイガーが目にも止まらぬ速さで少年の背後に回り、首に向けて鋭い牙を突き立てる。

 

 少年が死んでしまう。


 そう思った瞬間、少年の背後から魔力で生成された巨大な白銀の花にも見える大きなシールドが現れダークタイガーの猛攻を防いだ。


 ただ防いだだけではない。


 ダークタイガーの自慢の牙は粉々に砕け散っていた。


 攻撃された少年に至っては、1ミリも動いていない。


 まるで白銀の盾が自動的に少年を守っているように見えてしまう。


 そして怯んだダークタイガーに向けて間髪いれず、魔法が繰り出される。


 少年の背後に6個の魔力玉が出現し、炎、水、氷、風、雷、土、の異なる6種類の性質に変化する。


 少年が背後にいるダークタイガーへ視線を向けると、それぞれの魔力玉から一斉に魔法が放たれた。


 炎の槍、水の槍、氷の槍、風の槍、雷の槍、鋼の槍が目標に向けてまるでマシンガンの様にに連射される。


 俊敏なダークタイガーといえど避けきれず、一発でも被弾して怯んでしまえばもう逃れるすべは無かった。


 少年の攻撃が終わった後には、地面が捲れ上がり、辺りを砂ぼこりが舞う。


 レートAのダークタイガーを小さな少年が瞬く間に仕留めた。


 まさに異常な光景だった。


「ふーっ!けっこう使えるようになってきたっ!でも6属性を同時に使うとまだ威力が落ちるかー。6つの魔法を同時に撃ち出すこと自体は安定してできるようになったんだけど。」


 魔法を同時にいくつも使用したり、ましてやバラバラの属性に変化させて使用するなんて神業は誰にもできないことだった。


 この少年には類稀なる、魔力コントロールの才能があるのだろう。


 執事のような服装をした男性が少年に近づく。


「流石はノエル坊ちゃま。ロザリンヌお嬢様を助けた時に培った回復魔法の緻密な魔力コントロールを攻撃魔法にまで転用させてしまうとは、ここまでくると神の所業としか言えませぬな。」


 少年は執事風の男性に向かって返事をする。


「そんなことないよロベールさん。ロザリンヌを助けた時、必死に回復魔法を使い続けて感じたんだ。魔法は全て自分が放出した魔力によって創られているでしょ。それなら魔力のコントロール精度を上げれば上げるほど、魔法の可能性は無限に広がるんだ。」


「ハッハッハ。流石はノエル坊ちゃま。すべてはロザリンヌお嬢様への愛の力ということですな。」


(ぐぬぬ…またバカにしてるだろ。ロベール!)


 2人は歩きながら木の陰の方へと向かっていく。


 そこには銀髪で透けるように白い肌、燃えるように真っ赤な瞳をした美少女が座って二人をみていた。


 少年は美少女に意気揚々と話しかける。


「ロザリンヌ!見てた?新魔法けっこういい出来になってきた気がするんだよね!」


 美少女は目がくらむような笑顔で少年に返事をする。


「見てたわよ!さすがノエルだね。すっごくかっこよかった。よし!私も負けてられないわね。」


「じゃあ交代だね!次はロザリンヌが鍛錬の成果を試すときだ!」


「うん!行ってくるね!ちゃんと見ててね、ノエル!」


「もちろん。ちゃんと見てるよ!」


 美少女は元気に走りだし、ランクBの魔物――巨大で真っ赤な体をして鋼鉄のような牙を生やしたイノシシのような魔物、イノッスィーのもと向かう。


「おいで、ウンディーネ!」


 美少女が声を出して呼びかけると、可愛らしい水の妖精が現れた。


「いくよっ、ウンディーネ!ウォータースラッシュ!」


 妖精は美少女の呼びかけに応えると、美少女と一緒に直径5メートルにも及ぶ巨大な水の球体を美少女と妖精の頭上に作りだした。


 さらにその水の球体から高圧水流が目にも止まらぬ速さで噴射され、横薙ぎに一閃。


 それはまるでビーム兵器のようにも見える。


 高圧水流の破壊力で大地が抉れ、それが命中したターゲットのランクBの魔物イノッスィーは、きれいに真っ二つに切断されていた。


「やったー!上手くいった!ウンディーネちゃん、ありがとー!」


 大はしゃぎで妖精とハイタッチ。


 妖精と一緒に木の陰に戻ってくる美少女もまた、優秀な精霊魔法士だった。


 執事風の男性が美少女を褒めちぎる。


「流石はノエル坊ちゃまの将来の妻、ロザリンヌお嬢様でございますな。見事な一撃でした。」


「ふぇっ!?そ、そんなノエルのつつつつ妻だなんて!」


 美少女は耳の先まで真っ赤になってキャーともじもじしている。


 そこに少年が狙って追い打ちをかける。


「ロザリンヌ。本当にすごいね!精霊魔法を使うロザリンヌに思わず見とれちゃったよ。」


「ののののの、ノエルのバカ。そんな恥ずかしい事、じっと見つめながら言わないでー!」


 美少女は、恥ずかしさからか木陰にしゃがんで顔を隠してしまった。


 相変わらず恥ずかしがり屋さんだなと美少女を見て少年は笑う。


 そんな凄腕魔法士のノエルと精霊魔法士のロザリンヌ。


 2人は正式にお付き合いをしている恋人同士でもある。


 この約1年の魔法の鍛錬の成果は非常に大きく、冒険に向けての準備は万端だ。


 2人で一緒に冒険がしたいからと、つらい鍛錬にも必死についてきたロザリンヌ。


 2人で行くならロザリンヌを守れるようにもっと強くなると、さらに鬼のように鍛錬を積んだノエル。


 2人だけの1年間限定の冒険がこれから始まる――。


<次回予告>


7歳の誕生日


拒否


神礼の儀


走る閃光


ちょっと拗ねてる


約1年の鍛錬を終えた男は、どこへ向かうのか。


次回


回復魔法を極めて始める異世界冒険譚


第2章 激闘の王都と新たな旅立ち


第2話


ノエルと陛下と神礼の儀

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