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回復魔法を極めて始める異世界冒険譚~神々に祝福されし代行者の旅路~  作者: かぷちーの
第1章 運命の出会いと回復魔法
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第6話 死闘

「くっそ...!」


(まずい、今のこの状態じゃ…!)


 急襲。


 目の前に現れた漆黒の陸竜ジンが大きく右前脚を振りかぶる。


 さっきまでジンがいた場所にはロベールと切断されたジンの巨大な尻尾が転がっている。


(この女の子を追うために、自らの尻尾を犠牲にしてロベールを捲いたっていうのか...!?)


「ノエル坊ちゃま、今すぐ参ります!!!」


 ロベールが全速力でノエルのもとに駆け付けようとする。


 だが距離がありすぎるのと、若干左足を負傷していて速度が思うようにだせず、間に合わない。


 それよりも速く、凶悪かつ強靭なジンの右前脚の一撃がノエルとノエルの抱えている少女に向けて叩き込まれる。


「ノエル坊ちゃまっ!!!!」


 もはや直撃は免れ得ない。ロベールの悲痛な叫びが聞こえる。


(僕にいまできること…何ができる!?何ができるんだ…そうか!あれを…!ロベールに教えてもらったじゃないか…!)


 ノエルの身体から白く輝く魔力が溢れる。瞳が白銀に輝く。


 片膝を立てて座る。女の子を左手と片膝で支えながら、素早く前方に右腕を突き出す。


「魔力…シールド、全開!!!!!!うおおおおおおおおおお!!!!!!」


 右の手のひらを中心に白銀の盾にも大きな花の様にも見える巨大で分厚い魔力シールドを形成し展開する。


ガギィイイイイイイイイイイン!!!!!


 ジンの右前脚の一撃がノエルの魔力シールドに激突。激しい衝撃の後、いくつもの破片が宙を舞う。


 その破片は、――鋭利で巨大なジンの爪だった。


 攻撃を止められたジンが反射的に前足を一度引く。


 その隙を見逃さず、魔力シールドを消し攻撃姿勢に移るノエル。


(漆黒の硬い鱗に獣毛。僕の今の魔法が通用せず、万が一にも攻撃が無力化されたらアウトだ。なら狙うのは…)


「今だっ!マジックバレット!!!!」


 ノエルの放ったマジックバレットがジンの左目に直撃し、血しぶきが上がる。


 ジンは左目の視力を失い激昂する。


グァアアアアアアアアアアアア!!!!!!


 女の子はほんのわずかな瞬間だけ意識を取り戻し、自分のことを強く抱いて守りながら勇猛果敢にあの凶悪なジンに一撃を入れているノエルの姿を薄っすらと見ていた。


(かっこいい…絵本で読んだ物語の王子様みたい。)


 そして安堵からかまたすぐ意識を失ってしまった。


 ジンが怯んで激昂した隙を見て、後方を確認する。


 ロベールがかなりの魔力量を込めた右手を手刀の姿勢にしながらすぐそこまで来ていることを確認した。


 直後、ジンの右腕が赤黒く変色し鱗が逆立つ。無数に逆立った鱗が漆黒の棘となり破壊力を増大させる。


 さっきよりも格段に破壊力の上がった右腕の一撃がノエルに襲来する。


(さっきのシールドで魔力を使いすぎた...!でも諦めない。この子は絶対に助けるんだ!!!!)


 襲い来る凶悪な一撃に向かって右腕を突き出し、魔力シールドを展開する。


「うおおおおおおおお!!!!!!魔力シールド、展開!!」


(これを耐えればロベールがトドメを差すはず。惜しまずに魔力を使い切るっ...!)


 さっきと比べてかなり小さな魔力シールドを展開するノエル。


 脆弱に見えるシールドだが、直撃コースにピンポイントに出した小さく真っ白い魔力シールドは10枚重ねで展開されていた。


ガギィイイイイイイイイイイン!!!!!


ビキキッ…攻撃を受け止めたが10枚重ねのシールドに徐々にヒビが入る。


 その瞬間、ロベールがジンに肉薄する。


「シッ!!!!!」


 ロベールが渾身の魔力を纏った高速の手刀をジンの首に一撃。首を切り落とす。


 ジンが攻撃を止められた際に見せた僅かなスキを見逃さない。さすがロベールだ。


 首を失ったジンの躯体は力なく地面に倒れ、ピクリとも動かなくなった。


 ついに倒したのだ、ジンを。ロベールと一緒に2人で。


「ノエル坊ちゃま!お怪我は!?」


 慌ててロベールが駆け寄ってくる。


「ありがとう。ロベールさん。なんとか助かりました…ぐっ…はぁはぁはぁ…」


 意識が朦朧とする。一気に魔力を放出したせいか。


「それにしてもあの強力無比な魔力シールドは一体…攻撃を受け流すでも受け止めるでもなく、逆に攻撃している側のジンの爪が砕け散るとは。私の魔力シールドでもそのような芸当ができるかどうか…流石はノエル坊ちゃまですな。」


 ロベールがすごいものを見たと、感嘆している。


「ロベールさん。ごめん。僕もう…意識が。」


 ノエルは魔力を一気に解放して消費した反動と女の子を抱えて走り回っていた疲労もあってか意識を失ってしまった。


「おっと…ノエル坊ちゃま。ご安心を。私が邸宅まですぐにお連れ致します」


 その後、ロベールが僕と女の子を抱えて邸宅まで連れて帰ってくれた。


 そこから僕が目覚めたのは、2日後のことだった。


<次回予告>


目覚め


助からない


数ヶ月


愛に生きる男


お風呂


熾烈な戦いを制した男は、いつ目覚めるのか。


次回


回復魔法を極めて始める異世界冒険譚


第1章 運命の出会いと回復魔法


第7話


生還

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