表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回復魔法を極めて始める異世界冒険譚~神々に祝福されし代行者の旅路~  作者: かぷちーの
第1章 運命の出会いと回復魔法
10/88

第5話 漆黒の陸竜

 ノエルは魔法の鍛錬のためロベールと一緒に邸宅から少し離れた場所にある森の中に来ていた。


「ロベールさん。魔法の鍛錬に付き合ってくれて助かるよ!」


「いえいえ、ノエル坊ちゃまの魔法の鍛錬にこうしてお付き添いすることもまた、執事明利につきるのです。」


 初めて魔力の循環コントロールに挑戦してから1か月、今日までのたゆまぬ鍛錬で完全に魔力の循環コントロールができるようになったノエル。


 今日からは第2段階に入る。


 循環コントロールした魔力を自らの身体の任意の場所に放出し練り上げ、その魔力を消費して魔法を使う。


 今日は入門編の鍛錬として最も基礎的な魔法を使ってみる。――無属性魔法マジックバレットだ。


 魔力を消費して魔法の玉を作り任意の場所めがけて射出する。魔力を小さく固めてぶつけるようなイメージでやると良いとのこと。


 魔法も扱いが上手くなれば、同じ魔法であれば連射ができるようになるらしい。


 話を聞く限りでは、さながらマシンガンのようなイメージであるが、すぐに魔力が枯渇してしまうのでドラゴンなど相手に一斉攻撃を仕掛けるときにしかやらないらしいが。


 応用編の話はワクワクするけれど、まずは基礎のマジックバレットをマスターしなくては。


(よし、やってみるか!)


「玉の形、玉の形っと…おおー!玉ができたー!」


 ノエルの指先から放出した白い魔力がキレイな魔法の玉になった。


 なんかこういう例えをすると(おもむき)も何もないが水銀でできたパチンコ玉みたいだ。


「ノエル坊ちゃま!流石でございます。またもや一発で成功とは…!次はその玉を目の前の木に向けて撃ってみてくださいませ。」


「うん、やってみるよ!よっと!」


 ピュン――ズドン!!!!


 ノエルのマジックバレットは、銃弾のごときスピードで撃ち出され、狙った木に大きな穴を穿ち、その後ろの大地を抉った。


「これはこれは…見事にマジックバレット習得ですな。それにしても驚異的な威力。御見それいたしました。」


「よーし!今日は残り時間でマジックバレットを磨き上げるぞー!!!!」


(魔法めっちゃ楽しい!!!!!転生して良かったー!!)


 その後、日が暮れるまでノエルは一日中ずっとマジックバレットを撃ち続けていた。


 そろそろ帰路に就こうと帰り支度をした時、全身に悪寒が走り、直後に耳をつんざくような咆哮が辺りに響いた。


 グォオオオオオオオオオオオオオオオオ…!!!!!


「うわっ!え!なに!?」


「ノエル坊ちゃま!私の後ろへお下がりください!これはジンという魔物の声…来ます。」


(ジン…今日の鍛錬前にロベールさんが言ってた気がする。ここの森よりも、もっと北に行った場所に生息するジンっていう狂暴で強力な全身が漆黒の鱗と体毛に覆われた陸竜…!腕の立つ冒険者が複数人でやっと倒せるって言ってたあの…!)


 ノエルは震えていた。恐怖ではなく、武者震いというやつだ。


(こんな機会、滅多にない!自分の力を試してみたい...!)


「ロベールさん、僕も戦います。」


「ノエル坊ちゃま。なりませぬ。やつの一撃は大人の戦士でも耐えられるかどうか、一撃でも当たれば死んでしまいます。」


 その時、森の奥から女の子の悲鳴が聞こえた。


「きゃーーーー!!!!!」


(誰かが襲われている。力試しより救助が最優先だ!)


「ロベール!!!僕もやるよ!」


「ノエル坊ちゃま…かしこまりました。必ずや私がお守り致しましょう。」


 ロベールと共に覚悟を決めた直後、森の奥から女の子が飛び出してきた。


 長い白銀の髪、透き通るような白い肌。何にも形容しがたい美しさに一瞬意識を持っていかれた。


 女の子が飛び出してきた直後、ジンが森の奥から姿を現した。どうやら先ほどの女の子を追いかけてきたようだ。


 4本脚で体を支え、黄色く鋭く光る眼。夕日に照らされたその躯体には夥しい量の血。


 そしてその凶悪な口元にも血がべっとりと付着している。血走った眼で先ほどの女の子を追っている。


 真っ白い女の子は、もうあと数歩というところまで追いつめられている。


「ひいっ…」


 女の子はもうかなり長い時間逃げ回っていたのが、足がガクついて動かないような状態になってしまっている。


 僕の横に立っているロベールがつぶやく。


「これは…このジンは、かなり大物です。それに先ほどまで、人間の村かどこかを襲って捕食していた可能性があります。対人戦闘慣れしている可能性もあり、非常に危険ですぞ。」


「関係ない、まずはあの子を助ける事が最優先だ。」


 僕の言葉を聞いてハッとしたロベールが僕を見る。


「かしこまりました。では、私が気を引きますので、ノエル坊ちゃまはあの少女の保護に回ってくださいませ。」


「わかった!行こう!」


 さっきまで横にいたはずのロベールが一瞬でジンに肉薄し、研ぎ澄ました魔力シールドを纏わせた右腕をジンの左前脚に向けて振るう。


 その瞬間、ジンの左前脚が切断され、切られた脚が宙を舞う。


 ロベールが叫ぶ。


「ノエル坊ちゃま、今です!!!!」


「任せて!!!!」


 左前脚を失った怒りで、標的をロベールに変え凶悪な連続攻撃で猛襲するジン。ロベールは全て受け流している。


 その隙に僕はLv1とは思えない持ち前のステータスの高さを活かして全力で走る。数秒で女の子の下に無事辿り着いた僕は、女の子を抱き起してお姫様抱っこする。


 抱っこした女の子が僕を見つめているのを感じた。だが女の子に視線を移す余裕は今は無い。


「怖かったね。僕が絶対に助けるから。」


 一言だけいうと、落としてしまわないようにさらに女の子をギュッと強く抱く。


「ふぇっ」


 強く抱き過ぎたのか女の子から声が漏れる。


 ジンが現れた森の反対方向、僕らが森に入ってきた方向に向かって女の子を抱えてひた走る。


(ロベールから聞いた話だと、ジンはテリトリーである森からは出ないらしい。森を抜けたら僕らの勝ちだ...!)


 全速力で走ること5分ほど、クレルドリュンヌの邸宅方面に繋がる森の出口が見えた。あと少しで森を抜ける。


(よし、もう少しだ...!)


 女の子はぐったりしていて呼吸は荒く、意識があるのかどうかも定かではない。


 1秒でも早く連れて帰って医者に見せなければ命に関わるかもしれない。一刻を争う状況だ。


(もう森を抜ける、死ぬな!がんばれ!がんばれ…!)


「絶対に守ってやる。死ぬな。がんばれ。」


 走りながら、どんどん容体が悪くなっていく腕の中の女の子を励まし続ける。


 あと1分ほどで森を抜けれそうだ。


「ノエル坊ちゃま!!!」


 ロベールの声が聞こえたその瞬間、ものすごい速さで目の前に黒い巨大な影が現れた。


<次回予告>


急襲


悲痛な叫び


激突


白銀の魔力


激昂


覚悟を決めた男は、命を守り切ることができるのか。


次回


回復魔法を極めて始める異世界冒険譚


第1章 運命の出会いと回復魔法


第6話


死闘

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ