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存在するはずのない機械装置

お楽しみ頂けると幸いです。

「名前無いのにさっきの言いぐさはひどくないか?」


≪いや、悪かったよ。あまりにも僕とちゃんと話してくれるからさ。楽しかったんだよ≫


確かに楽しそうではあるけど。声だけでも伝わってくるくらいだし。


「ぼくが決めてあげようか?」


≪え?≫


大精霊を戸惑わせるとは。相変わらずリセルはすごいことするな。そういえば俺もあんまり敬意を払った話し方はしてなかったな。何も言ってこないし、今更だから気にしないようにしよう。


≪嬉しいけど、それは朱雀を何とかしてからね。今は僕が代わりに何とかしないといけないからさ≫


「何とかってのはどんなことなの?」


精霊のことだからかグイグイ踏み込んでいくなぁ。俺が聞く必要ないからいいけど。むしろもっとやれ。


≪えっと、説明して良かったんだったかな。神獣と大精霊は属性さえあえば割と協力関係、単純に言えば仲が良かったりするんだ。朱雀と僕みたいに。もちろん神獣の方が格は上だけどね。朱雀は神獣でも優しいから色々と僕に教えてくれるんだ≫


「じゃあ、青龍と水の大精霊、白虎と風の大精霊、玄武と土の大精霊も同じか?」


≪基本的にはね。でも風のところは二人とも気まぐれだからすごく仲が良かったり、反対にケンカ中だったりするよ。土のところは一緒になってじっとしていることが多くて怖いかな≫


「青龍と水の大精霊はどんな感じなの?」


≪分からない。僕にはとても冷たくって、あんまり好かれていないみたいなんだ。特に青龍様の方にね。神獣に認めてもらえないと交流なんてなかなか出来ないんだ…≫


「そうなんだ。でもぼくが一緒に付いて行ってあげるからね!」


その力押しの慰めが効果が見込めるかは分からないけれど、火の大精霊から言葉が引き出せているので成功なのかな。話しているのだから良いか。


神獣と大精霊にも明確な力関係はあるんだな。存在の在り方にもよるけど神の名を冠するとなるとやはり凄まじいみたいだな。


「それで、朱雀は今は何をしているんだ?」


火の大精霊の『なんとかして』という内容については、その朱雀が関係しているのではないかと推測している。戦う必要は無いってことだから、寝てるから起こしてとかだろうか。

話すと言っていたから寝てるということはないか。事情は聞けば分かる。


≪最近姿を見せてくれないんだ。話が出来るからいなくなったわけでは無いと思うんだけど≫


「え?し、神獣なのにいなくなったの!?」


≪いなくなったわけじゃないよ!姿が見えなくなったんだ!≫


「分かった分かった。落ち着いてくれ。情報の小出しでは分からない。もう全部説明してくれ」


≪うん。朱雀の姿が見えなくなったのはつい最近のことなんだ≫


最近、最近か~。何日か前かな?それでも分かるならどれくらい前か確認するのが捜査の第一歩かな。


「いつごろか具体的な数字で言ってくれるか?何日前、とかさ」


≪えっとね。う~ん…、確か20年位前かな≫


は?


「それはこっちの感覚では最近とは言わないよ~」

「さすがは大精霊、ものごとのスペックが俺らと次元がちがうな」


でも20年前から何かあったのだとすると、この辺りの環境がすっかり変わってしまうのも納得だ。火の大精霊では朱雀ほどうまく代わりができなかったんだろう。

これから神獣や大精霊と話すことがあれば疑問に思ったことや、具体的な数字が出て来ない時はしっかりと聞き直す方が良い、と認識しよう。


「朱雀が消えてしまった心当たりはあるのか?まだ話は出来るんじゃなかったのか?」


≪心当たりとかはないよ。姿は見えなくなったけど、話は出来るけど最近はあっちに行かないと声が聞こえないことが多いんだ。朱雀の代わりに何とかしようと色々なところに行ってるからいっつも朱雀と話せているわけじゃないんだ。僕は大精霊っていってもまだ若いから朱雀の代わり全部は出来ないんだ。がんばりはしたんだけどね≫


何歳くらいか聞いてみたいけどそれは今回の主旨からはずれる。自重しよう。


「がんばってたんだからいいじゃない?ダメなの?」

「一定は成果を出さないといけないかな。がんばっていたから許されるのはそれこそ子どもの手伝いくらいだ。村のことでも食料が取れなかったらそれこそ困るだろう?」

「それもそうか。でも子どもだったら許すんだよね?ねえ、何歳なの?」


リセル~。なぜ蒸し返すんだよ…!


≪数えてないけど、前に朱雀が5000歳の節目ですねって言ってくれたことがあるよ≫


マジで3桁くらい感覚が違うな。リセルもあまりの予想以上の数字に固まってしまってフォローの言葉が出せてない。だから俺も聞かなかったのに。

いやいや。こんなところで止まっている場合ではない。話を先に進めよう。


「すまないが、心当たりについて教えてくれ」


≪うん。朱雀がいなくなってから何か置いてあるものがあるんだ。朱雀と話せるところなんだけど、毎回絶対に触ってはいけないって言ってたから触ってないものなんだ。あんまり良い物じゃなさそうってことは僕でも分かるよ≫


「じゃあまずはそれを見てみよう。どこに行けば良い?」


≪わかったよ。ついて来て≫


「あと1つ聞いておきたいんだが。それはどんな”もの”なんだ?」


≪少なくても生き物では無いよ。全く動かないし、僕も生物かどうかくらいは分かるし。何か夜空に見える星みたいに小さく何個もずっとチカチカと光ってる≫


言葉だけではやっぱり分からないな。ホシモノの世界だと考えると少し引っかかるものはあったが、あり得ないと切り捨てる。


「手がかりが無いことには分からないし、朱雀と話が出来るようにならないと方法がさっぱり分からない。とにかく行ってみよう」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


そして、先程切り捨てたはずの可能性がそこにはあった。


「イヤイヤイヤ、あり得ない。なんでこんなものがここにあるんだ?これって」


自分がこの世界に来たことよりも意味が分からない。とんでもないものが置いてある。


「知っているもの?」

「ああ」


ゲームの中で帝国が使っていたエネルギー供給装置だ。言ってしまうとデテゴに余計な心配をかけてしまいそうで咄嗟に知っていることだけを伝えた。

あいつはもう帝国に戻って王になることは無い、…と思う。ならば未来の帝国がやらかしてしまうことについて教えるのは余計な混乱を招くだけだ。


ちなみに出現する魔物の種類は大きく国によって異なっている。その大きな区切りは王国、魔国、帝国の3つに分けられる。帝国だけは現在小国のようだ。本編が開始する15年くらい前から急速に力を付けて行くことになる。今からだと84年後の話だ。


魔物の話に戻すが、王国は主に動物型、魔国は魔法生物が中心だが種類は様々だ。一番多くの種類が出現する。さすがである。そして帝国では機械が多い。魔物と言って良いか分からないけれど。魔物に機械を埋め込んでいるものもいる。

その機械型のエネルギーを注入するのに使用されていた装置が目の前にある。エネルギー源が何かなんてことは考えたこともなかったが、朱雀そのものか、エネルギーだけを吸収しているのではないだろうか。

ここにあるってことはそういうことなのか。神獣がエネルギー源として吸収されていたということか?


なぜだ?帝国の帝王となるラスボスの正体は過去文明の生き残りだ。まだ今の時点では封印されたところから発掘もされていないし、陰謀のための下準備など始められるわけが無い。

ということは、これは別人の仕掛けた行為ということになる。きちんと使えているということは仕組みや何に使う物かを理解しているということだろう。


どんな奴かは知らないけど…、ぶっ潰すしかないな。

俺の中で全力で潰す相手に決めた。


「イレブン?ちょっと圧が強いかな…」

「悪い!少し乱れた」


今から後のことを考えるのはやめておこう。一応、この装置を解体するってイベントもあった。エネルギーを補給しすぎて暴走したのを止めるというものだ。

あのときは安置されている建物にいた機械たちが妨害してくるのを仲間たちが時間稼ぎしてくれるんだよな。珍しく他キャラを操作することになる。ちょっと面倒なイベントだった。

とはいえ、合計10回も行っているんだ。手順など間違えるはずがない。


戦闘出来ないNPCの指示に従って言われた通りに操作して止めていくだけだったな。。

スキルがあれば少し補正がかかるし、あった方がこのイベントに限らず色々と便利なのでゲーム内では余裕があるときに取得しておくものだ。だが、そんなことになると思っていなかったので今は取得していない。


「でも、やることは決まってる。とりあえずこれを止めよう。リセルはスキルポイントが欲しいから少し広げるので手伝ってくれ」

「わかった。机を置くスペースから作るね。…土精霊お願い」


リセルが準備してくれているのを見て、アイテムボックスから再度SP系グッズを出していく。

ただ、浮いているだけの火の大精霊から視線を感じる気がする。こき使ってやるか。


「火の大精霊は近づかないで済むなら離れていてくれ。言っていたようにあまり良い物じゃないから。可能なら周囲に敵対するようなやつがいないかを見てほしい。頼めるか?」


≪いいよ!……周りには誰もいないよ。ここで人間なんてほとんど見ないし≫


「わかった。周囲を見張ってくれるだけですごく助かるよ」


「とりあえずは機械全般について理解を深めるところからだな。あとは操作が出来るようにしないと話にならないな」


さっきはゆっくり飛んだとはいっても、アイテムボックスに入れていた全てを消費するほどの時間は無かった。

今こそスキルポイントが必要だ。いくら味変がされていたとしても、飲み物とゼリーだ。さすがに食べすぎると飽きる。なんとか気合でもう一度口に入れていく。これが終わったらさすがの俺もしばらく食べたくないかもしれない。

ゼリーを口一杯に放り込み、SPポーションをぐいっと飲み干すことで落とし込んでいく。辛い。

焦ったところで朱雀は既に20年はこのせいで何らかの悪影響を受けている。申し訳ないが少しだけ待ってもらいたい。


なんとかがんばって、なんとか必要なスキルポイントを貯めた。吐いちゃダメだ。ガマンしろ、俺。


さて、ここからが本番だ。見守っている2人(?)には黙っていて悪いが、この装置は失敗したら爆発する。

ゲームではダメージを受けるだけだった。今は結界があるからマシだろうが、自ら受けたいとも思わないし試す気も無い。

急げば5分くらいで終わるかな。


まずは、最初にメインのスイッチを切る。


切った瞬間に火の大精霊から警告が飛んでくる。


≪何かがたくさん近づいて来てるよ!≫


「なんだと!?俺がしばらく動けないっていうのに!?」

「ぼくが守る!イレブンはそのままその訳の分からないものを何とかして!」

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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