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赤い玉は何者か、交渉とお願い

お楽しみ頂けると幸いです。

≪ふう、ゆっくり飛ぶのに疲れちゃったよ≫


「ありがとうございます。お手数おかけしました」


≪別に構わないよ。敵対しないように言われてたし。少しでも納得してついて来てもらうためなら何てことも無いさ≫


「それでも、ありがとうだよ!」


リセルが元気に話しかけていたので少しは仲良くなったようだ。俺よりは気安い言葉遣いで話している。


しかしさっきの赤い玉の発言から考えると、俺が納得するための準備時間を作るためにゆっくり移動してくれたのか。これはもう少し信用しても良さそうかな。何も無いのが一番とも言うし。

メチャクチャ戦闘用にスキル取得したけど、納得には全く手が届かないな。困ったもんだ。


≪では、久々の地面は堪能したか。朱雀のところに行くには少し移動するよ≫


「は~い。待ってよ~」


それは少し仲良くなり過ぎでは無いですかね。


≪待つからはやくおいでって~≫


満更でもないんだ。いきなり仲良くなるって何があったんだ?飛んでる間にしたことは、スキルと習得したくらいだろ?リセルの取得したスキル、…なるほど、あの赤い玉はそういうことか。

それなら本当に朱雀は話をしたいだけなんだな。めちゃくちゃ警戒したのがバカみたいじゃないか。あ~、驚いた。


「イレブン、はやくおいでよ~」

「はいはい、今行くよっと」

「おおっ。そんなに急がないでもいいと思うけどね」


≪すごい速いね≫


「まあね。あなたにそう評価してもらえるなら自信になりそうだ。良かったら少し相手してもらいたいくらいだよ」


≪僕と戦うならそれなりの準備が必要だよ≫


「だろうね。でも、あなたたちが信用できそうだってことが分かって良かったよ」


≪で、悪いんだけど。朱雀に会いに行く前に掃除をお願いしたいんだ≫


「掃除?」


≪そう。つい最近なんだけど、少し厄介なことに困っていてね。たぶん人間の仕業だと思うんだけどさ。僕たちにとって良くないものがうろつくようになっていてね≫


この赤い玉と朱雀がいて厄介ってどんなだよ。下手すればユーフラシアだってそれぞれ一撃ずつで焦土に変えられるだろうに。そんなことあるのか?


≪信じてないみたいだね。まあ無理も無いけど。まず相性が悪いんだ。致命的にね。だから僕と朱雀の力のほとんどを使って封印しているだけど、それが壊されようとしているんだ≫


考えていることが表情に出ていたようだ。先導しているくせにやっぱり後ろの俺まで見えているのか。まあそれはいいや。

『索敵』を使っても反応が無いってことは少なくても、敵意や害意は無いってことだし。悪いことしないってのは信用できる。


「協力はしよう。でも俺たちが役に立つとは限らないのでは?」


≪いや、変人の君は必ず協力してくれるさ。それはこのホシモノの世界をトコトンまで知っている人間に与えられる称号なんだろう?『ある星の物語』の話を知っているキミなら≫


「え……、な、んで…」」


頭をぶん殴られる衝撃ってのはこういうことを言うのだろう。ここで出てくるはずの無い単語を出されることで驚いて言葉が出せない。口がまともに動かない。

俺の様子を心配してリセルが赤い玉との間に割って入ってくる。距離は十分離れているし、攻撃してくるようなそぶりも無いから盾を構えなくても大丈夫だ。そう思っても衝撃が抜けない。

立ち止まってしまったが、周囲も同じように待ってくれていた。しっかりと呼吸を整えてそしてもう一度赤い玉を視界に入れる。


「ど、どうかしたか?『あるほしのものがたり』ってそこまで驚く言葉なのか?」


落ちつくまで待ってくれていたリセルが様子を伺いながら声をかけてくれた。頭をポンと撫でながら笑っておく。悪いけど先に問いただしておきたい。


「……説明はしてくれるのか?」


≪もちろんさ。朱雀を助けてくれたらの話にはなるけどね≫


「わかった」


じゃあ相棒に安心してもらおう。話しているうちに俺も落ち着くだろうし。


「リセル、俺も完全に落ち着いたわけじゃないから、話しながら整理させてくれ」

「それで、構わないよ。ゆっくり行っても構わないんだよね?」


≪ああ、案内する場所に着くまでは何か起こることも無いだろうからね≫


「だってさ。さっきと同じでゆっくり行こうよ。SPポーションもあるなら飲みながら行こうよ」


そこまでいくと逆に図太いよな。


「ははっ」

「なんだよ~」

「いや、相棒が思ったよりも図太くて面白かったってだけだよ」


だが、あまり笑うと逆に話を聞いてくれなさそうだったので、笑いを抑え込む。俺の表情にリセルも合わせてくれた。


「俺には前世の記憶があって、この世界のことを知っているということは話したな」

「それは聞いてるよ。驚く話だからね。まあ結構違っているみたいだし、イレブンはひたすら戦闘のことだけであまり生産はしてなかったんでしょ?メディさんが雑な作業で品質の良いものを作るから納得できないって言ってたよ」


そんなこと言われてたのか。それは申し訳なかったな。


「そういう話はまた今度にしてくれ」

「わかった。落ち着いて話してくれたら良いよ」


眉間に皺が寄り過ぎていることを仕草で教えてくれている。動揺しすぎたかな。いや、誰でも動揺する。赤い玉がホシモノって単語を知っている理由が何なのかは知らないけれど、知っているはず無いんだから。

ただ、動揺する話だからこそ冷静になるように努めるべきなのは確かだ。感情に流されるまま行動してはいけないと学んだばかりじゃないか。


「ホシモノっていうのはこの世界に付けられた題名の略称だ。俺も過去について信用できる人に話したけど、誰にもホシモノって言葉は使って説明はしなかった。もちろん略称だけではなくて正式名称の方もだ」


世界がゲームでしたなんて言われたって理解できないだろうから、物語の役者のように振舞うことが出来る遊びだと説明した。

機械のことは機械を知る人間同士でないと説明は通じないんだ。魔法で代用できるところが多かったけれど。

だけど、題名なんて告げたところで意味が無いから説明からは省いた。地球、みたいなはっきりとした固有名詞であれば聞いていたかもしれないが、『ある星の物語』だからな。本当に物語だと言ってしまった方が説明しやすかった。


「つまり今こいつは、この世界の誰も知っているはずがない単語を知っていた。前の『俺』の世界の言葉を使ったんだ」

「それって、この子は前のイレブンのことを知っているってこと?」


リセルも初めて少しずつ俺が動揺した理由を分かってくれたようだ。整理できていないのか分かる範囲での疑問を口にする。


≪丸ごと全部は知らないよ。でも、少しくらいは知っていると言ってもいいかな≫


なんだ?朱雀とかこの赤い玉レベルになると異世界のことでも御存知ってことなのか?それなら聞きたいことがある。でもあとで聞けるならそのときでいいか。


「俺は何かの目的に沿ってこの世界に来ることになったのか?それともただの偶然なのか?」


勝手に口が動いてしまった。聞きたいような聞きたくないような質問だ。使命なんていらないし、むしろ俺の平穏な生活、とは程遠かったかもしれなかったけど、勝手に取り上げたことに関しては文句を言いたい。

あとで説明してくれるとは言っていたからあとで聞くつもりだったが、口が滑ってしまったからには仕方がない。やっぱり動揺がおさまってないんだな。


≪それは偶然だって聞いてるよ。でもやってほしいことはある。そのためにもまずは朱雀を助けてほしい≫


「何を置いてもまずは助けてからってことを言いたいんだな」


≪そういうことだよ。助けてくれたら全面的に協力してあげるからさ≫


「なら、がんばろうよ!」


言うと思ったよ。まあでも俺も同意見だけど。協力をする代わりに俺たちにも協力してくれると、何してもらおうかね。


「覚悟しとけよ。火の大精霊、絶対に協力させるからな」


≪楽しみにしてるよ≫


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


話がまとまった後に連れて来られたのは、一見しただけでは特に何の変哲もないところだ。活火山なのか休火山なのかは知らないが、立派な火山の火口付近だ。何かあったら危険ではあるだろうけど、火に関係する大精霊が近くにいるんだ。何かあれば教えてくれるだろう。


「で、ここが何だって?」


≪ここはね。昔は火口だったところだよ。でもずっと噴火しなくても良くなってから朱雀が少し手を加えて緑に覆われるようになったんだ≫


火口の中でも生活が出来るってのは聞いた事がある。行ったことは無いけど、そこが地元だって人にも話を聞いた事がある。

自然に任せていた世界でもそんな環境が整うのだから神獣が手を出すのだからより早く穏やかに環境は整うだろう。


「なるほど」

「でもこれって」

「そうだな。荒れた山肌にしか見えないな。これを何とかするのか?」


一定の高度になると植物は生えなくなるとは何かで聞いた事がある。学者の名前が付いていたと思うけれどそこまでは覚えてない。

でもさっきの話が本当ならかつては緑に溢れていたけど、今は荒れ果ててしまったということなんだろう。


≪ちがうよ。こうなった原因を何とかしてもらいたいんだ。緑に溢れるのはまた時間をかけて行うからさ≫


火の大精霊は寂しそうな声で俺の質問を否定した。まずは現状把握をしてもらいたかったらしい。

原因を取り除くと言われても何をするのか。段々と規模が大きくなってきていることに少し怖くなってきたんだけどな。


≪原因はここから少し離れたところにあるんだ。ぼくも話に聞いたことがあるだけでどうにもできなかったんだ。変人のキミなら出来ると思う≫


指など無いから向かう方向へと音もなく移動していく。しかし、1つだけ言わせてほしい。


「俺の名前イレブンなんで、そう呼んでもらっても良い?確かに今の種族は変人だけど」

「ぶふっ!」


変人ではあるとは思うけれど、何度も言われると少し傷つくというか。ちょっと表現を変えるだけでも良いから。

笑ったらリセルには後でなにか嫌がらせをすることを決めた。


≪キミだって僕を種族で呼んでるじゃないか≫


「え?あ~そうか。えっと、ごめん、気が回っていなかった。俺の名前はイレブンという。よろしく頼む」

「ぼくの名前はリセルだよ。もっとお話ししたいな。」

「まあ後でな。それで、火の大精霊には個別の名前はあるのか?」


確かにずっと赤い玉とか、火の大精霊とかの特徴で呼んでいた。自己紹介すらしてなかったもんな。失礼だったと思う。


≪無いけど≫


「無いのかよ!」


何これ、わざとなのか?

お読みいただきありがとうございました。

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